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THE BLACK KNIGHT  作者: じゃみるぽん
五章・嵐、見ゆ
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【5章・狂剣乱舞】

誤字脱字報告等あれば!

〜王城、玉座の間〜



いつもより倍程の近衛騎士が控えるその巨大な扉は何時見ても人間には大き過ぎると思うもの


癖なのか、自然と『空間知覚』で玉座の間を覗いて中に居るであろう人物を全て把握する


アトランティス国王に近衛騎士団長、十人の近衛騎士と二ーヴル王太子とミネルヴァ第一王女



(へぇー……)



巨大な扉がゆっくりと開かれ、中に居る人物達の視線が三人に注がれる



「待っていたぞ、お前達。今日は大切な軍議がある………近くに寄れ、早く済ませたい」



ミネルヴァから呼ばれた筈では? と疑問に思う三人。いつもよりフランクな口調の国王は戦争が迫っているというのに機嫌が良さそうだ。これにはガーネットもカルセインも困惑している様でやたらと瞬きが増えている


三人が膝を突こうとするも国王の手振りで遮られた


(何だ何だ……?)



「今日確認したいのは勿論ガーネット、お前が精霊魔法士として戦に出るか王族として城に篭るか……これだけだ」



やっぱり、と心の中で呟く。ミネルヴァが呼んだというのも執拗な警戒を防ぐ為だったのだろう



「私は……」



「悩ましい問題だろう…無理に世間体を気にする必要は無いからな。必要ならば我の命令……という事にも出来るぞ?」



どうやらガーネットの声は届かなかった様で僅かに出た声も国王の言葉で掻き消される



「私は! ------戦います、その為の精霊魔法です。その為にこれまで鍛えてきました、今更身分を盾に戦争から目を背けるなんて事…出来ません」



王太子やミネルヴァ第一王女を始め、この場に居る近衛騎士は唖然とし、ガーネットを見つめていた。何故か一人ニヤけている近衛騎士団長からは若干の恐怖さえ覚えてしまう


闘志のこもったガーネットのオレンジ色の瞳と真意を見抜こうとする冷徹で鋭いオレンジ色の瞳の対峙



(この目だ、度々見るこの冷徹な目)



まるで自陣の駒を見る様な、王太子という保険を出しておきながら国の利益の為に自分の息子娘を争わせる少し狂気じみた人間の目



「------分かった。認めよう……これもまた国の為に心を燃やす少女の決断……カルセイン、お前は残るのだ」



「はっ」



承諾以外認めない、とその目はカルセインを射止めていた。第二王子ガリウスがこの国を去った今、王位継承権二位はカルセインなのだ。最近は勢力も増し、それに二ーヴルもカルセインも婚約者が居らず独り身、先の見えないこの世界では何方にも優劣はつけ難く、無難といった判断だ



「アルス=シス=エルロランテ、我が言いたい事は分かるな?」



「はっ。全力で御護りします」



敢えて語気は強めず、通る声でハキハキと告げるアルス。口ではいくらでも言えるこの言葉に反応を見せたのはアルスが二番に警戒していた人間、ミネルヴァ第一王女だった


視界の端で此方を見つめてくるミネルヴァが見え、”何もしてくれるな”という思念を全力で送るも勿論叶わない



「私は貴方の実力を知らないのですが? 貴方のミスで一度窮地に立たされた妹を想うと……いつか失ってしまうのではないかと、私は貴方のそのありきたりな言葉を疑い続けて夜も眠れませんわ」



この言葉の羅列の怖い所は”返すべき答えが決まっている事”だろうか


実力を知らないという点もアルスはミネルヴァの前で一度も剣を抜いた事が無く、例え噂で実力が知れ渡っていたとしても知らぬ存ぜぬの一点張りでどうにでもなってしまう


そして”自分はこう思っている”という意見の主張はアルスが何を言っても覆す事が出来ないもので相手は王女、もし反論して”心が傷ついた”とまで言われればもう、鉄格子に囚われるのが確定するだろう


不本意だが無理に抗う必要も無いだろう、と判断したアルスはミネルヴァの方へ身体を向けて膝を突いて尋ねた



「殿下が私の実力を御疑いなられているのならば、その実力...証明してみせましょう」



待ってました、と言わんばかりに口角を上げたミネルヴァの微笑と面白そうに小さく頷く国王



「証明するって言っても何をしてくれるのかしら? 決闘は駄目よ? 八百長出来るからね」



「ミネルヴァお姉様! アルスはそんな事……!!」



一番楽な選択肢を消されたものの、納得の出来る理由にアルスはガーネットの肩に手を乗せてその提言を止めた


小声で二人に大丈夫と告げてアルスは再び膝を突く



「確かに決闘はいくらでも偽造出来ます。それ以外をご所望であるならば……一つ、案がございます」



「----言ってみて頂戴」



「今回の戦争、より確実な勝利を掴む為に戦力の増強を図ろうかと」



アルスの言葉にこの場に居た全員が首を傾げた。当然、戦力の増強は嬉しい事で方法がどうであれ人望や策略が秀でている事の証明、正に実力があると言える様になるのだ


しかし疑問が残る。一介の貴族、最近陞爵した侯爵家の青年如きに何が出来るというのだろうか


例え出来たとしても、それはアルス自身の力なのだろうか? 当主であるウルグの力を自分の力と言い張る可能性を捨てきれないミネルヴァ



「皆さんの抱く疑問は”それは本当に君の力なのか、父上の力なのではないか、でしょうか? 分かります、当然の疑問でしょう。ですがこれは私を監視する人間を付けるだけで解決するではありませんか? それに父上は現在将軍として生活の半分を王城で兵の育成に費やしている筈、公然の事実ではありますが国を出る事すら叶わない」



一体何人がアルスの最後の言葉に反応して、復唱しただろう。まるでアルスが国を出ると言っている様ではないか



「何人監視を付けていても、貴方を”常に”見張る事は出来ないわ。それに貴方の台詞……護衛なのに国を出るというの?」



「明朝から日付が変わるその一日だけあれば十分です。その間はミネルヴァ殿下が”実力を疑わない人間”を付けておいては如何でしょう?」



しっかりと最後には皮肉を込めた一言を添える



「貴方……それは……」



「ミネルヴァ、お前の負けだ。元々お前が蒔いた種、自分の発言には責任を持つ事だな」



言い返そうとするミネルヴァに国王が釘を刺して黙らせる。唇を小さく噛み、笑顔ではあるがアルスを見つめるその目は怒りに満ちていた



「アルスよ、我は正直決闘などというお前の勝利が分かりきっているものは”面白くない”と思っていた-----聞かせてくれ、何をしようとしている?」



「貸し借り作らず長い平和をこの国にもたらしましょう……帝国の最終兵器、剣聖フォトゥンヘルムを”私の”配下へと加えます」


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