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このラブコメは嘘か誠か真実か  作者: 堂上みゆき
第9話 夏合宿前の買い物
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第9話 どちらが真実かの誠の選択~夏合宿前の買い物~③

 今度は三人でシンプルが売りの大手の服屋に入る。


「まこ兄は背もそれなりにあるからシンプルなのが似合うんだよねー。けどまこ兄、どうしてその色を合わせるかなーってチョイスをするから困ってるんだ」


「しょうがないだろ。私服なんて普段の買い物に行くときぐらいしか着ないし、誰に会うわけでもないからな。じゃあ、適当に選んでくれ」


 美玖と霜雪がメンズのコーナーを回って一通り品ぞろえをチェックする。どうやらまたそれぞれで選んで俺にどちらがいいか選ばせるらしい。俺も自分で新しく選ぶ権利はないものの、ただ待っているのは暇なので色々と見て回る。


「ん、何笑ってんだ?」


 俺はコラボ商品が並んでいるコーナーで少し笑っているような顔をしていた霜雪に話しかける。


「いえ、笑ってはいないわよ。ただこのTシャツを冬風君に着せたらどうなるだろうって思っていただけ」


 霜雪は可愛らしい動物のキャラクターが書かれたTシャツを取り、俺に合わせてくる。


「誰が着るかよ」


「あら、動物は好きってプールで言ってなかったかしら?」


「動物は好きだけどこれは別だろ。お前だって俺がこのTシャツを着て、今日俺が来てたら絶対からかうだろ」


「さあ、どうかしらね。案外ギャップもあって似合ってると思うわ。試しに試着してみる?」


「ごめんだな」


 俺は美玖も来て本当に試着させられる流れになってはたまらないので、霜雪の所から逃げ出す。


 五分後、霜雪と美玖がそれぞれ服を選んできた。それぞれTシャツとシャツを合わせてセットで持っている。


「さあ、まこ兄、どっちがいい? ちなみに美玖が持ってるからと言っても、それは真実さんが選んだ服かもしれないよー?」


 美玖が挑戦的な目でこちらを見てくる。要するに忖度なしに選べということだ。


「じゃあ、俺はこっちがいいな」


 俺は霜雪が持っていた方を指さす。


「えー、悔しいー。そっちは真実さんが選んだんだよ。うー、意味深なこと言って実はそれぞれが選んだのは自分で持ってましたーってしたかったのに。やっぱり真実さんとまこ兄って息ぴったり。ちょっと嫉妬しちゃうなー」


「これくらいで嫉妬なんかするなよ。なんとなくこっちの方がいいなって思っただけだ。ほら霜雪、会計してくるから渡せ」


 俺は霜雪から服を受け取りレジに向かった。



「すまないな、霜雪。俺の服の買い物にも付き合わせて」


「私のも選んでもらったのだから当然よ。あまり男の人のファッションはよく分からないけど、美玖さんにも大丈夫って言ってもらえたし、冬風君が気に入ってくれてよかったわ」


「霜雪は結局あのワンピースでよかったのか?」


「ええ、もともと私が選んだものだし、冬風君がよく分からない感性で選んでくれたもの」


「おい、その言い方は文脈的におかしくないか?」


「そんなことないわよ。早く家に帰って着てみたいわ。ん? 何か私の顔に付いてるかしら?」


「いや、霜雪も家では一人ファッションショーとかするのかなと思って。うちでは美玖がよくしてるから」


 俺は意外なことを言ったからつい見つめてしまっていた霜雪の顔から目を逸らす。


「私だって高校生の女子よ。新しい服を買ったのなら人並みにウキウキするわよ」


「可愛らしい所もあるんだな」


「私をからかうつもりでそれを言ったのなら覚悟はできてるかしら?」


「もー、またよく分からないことで夫婦漫才してるー。喧嘩するほど仲が良いって本当だね! じゃあ、まだ時間あるし色々見て回ろ!」


 それからはショッピングセンター内を色々見て回った。


 美玖がいるとはいえ、霜雪と一緒に買い物なんてと思っていたが、祭りの時と同じく、過ごしていくうちにそんな気持ちもなくなっていた。霜雪は俺と似ている。最初にそう言ったのは秋城だったか。俺と霜雪は同じなのだ。どちらも嘘を嫌い、他人に媚びることなんてできない。霜雪がなぜ真実に生きる道を選んだのかは知らない。それは苦しい選択だったのかもしれないし、逆に楽な選択だったのかもしれない。


 だがそんなことは関係ない。霜雪真実は霜雪真実なのだ。今この隣にいる彼女こそが彼女であり、俺が見つめるべきはお互い口を開けば何かを言わずにはいられない、はたから見れば口の悪い生徒会の同僚だ。


「ふー、もう大分時間経っちゃったね。あ、そうだ! まこ兄、真実さん、美玖買いたかった物思い出したから、ちょっとベンチに座って待ってて。すぐに戻るから!」


 日はまだまだ高いが、どちらかと言えば夕方になってきた頃に美玖がそう言って、速足でどこかに行った。俺と霜雪は美玖に言われた通りベンチに座って待つことにする。


「なんだかんだで朝からずっと歩き回ってると疲れるな」


「そうね、私もあまり外に出ないから少し足が疲れたわ」


 霜雪がふくらはぎをもみ、マッサージをする。


「生徒会に入ったおかげで、夏休みも大忙しだ。祭りに花火、プールに買い物、極め付きは合宿。ちょっと前の俺ならまさか夏休みに学校の奴と会うなんて想像できなかったし、遊びに行くなんて考えたこともなかった」


「私もよ。けど今まで考えもしなかったことを経験できて嬉しい。体育祭もそうだったけど、祭りも花火もプールも、そして今日も楽しかったわ。ありがとう」


「今日に関しては美玖のおかげだ。それに俺もありがとう。美玖と二人だけの買い物だったらいつもと何も変わらなかった。疲れはしたが色々と今日は楽しかった」


「それも美玖さんのおかげね」


 霜雪と話していると美玖が帰ってきた。そして持っている袋から何やら小さいキーホルダーらしき物を取り出し、俺と霜雪に一つずつ渡す。


「なんだこのいかついペンギンは」


 美玖が渡してきたのはペンギンのキーホルダーだった。ただその愛らしいボディに似合わないサングラスをかけているが。


「えー、まこ兄、グラペン知らないの⁉」


「グラペンってなんだよ」


「サングラスペンギンの略称だよ。今、すっごく大人気なんだよー!」


「へー、これが」


 俺は手に持ったグラペンを正面から見つめるがその表情はサングラスに隠れて見えない。流行というものはよく理解できないものだ。


「で、俺と霜雪にこれをどうしろと?」


「プレゼント! 今日は美玖のわがままで色んな所付いてきてもらったし、それに今日一緒に買い物した記念ってことで!」


「美玖さん、本当にいいの?」


「うん!」


 霜雪はスマホを取り出して、手帳型のカバーにグラペンのキーホルダーを付ける。サイズは小さめなので邪魔にならず、丁度いいようだ。


「ありがとう、大切にさせてもらうわ」


 霜雪は美玖に体育祭で初めて出会った時のように抱きつく。


「えへー、どういたしまして。ほら、まこ兄も付けて」


「付けるったって俺はスマホに付けられないからな。取り敢えず財布にしとくか」


 俺は財布にグラペンを付けた。こちらもなかなかいいサイズ感だ。


「やったー、これで三人お揃いだね! じゃあ、もうそろそろ帰る?」


「そうだな」


 ショッピングセンターを出て駅に向かう。



「じゃあ、また合宿でな」


「ええ。美玖さん、今日はありがとう」


「こちらこそありがとう! またお買い物行こうね!」


 霜雪の路線の電車が先に来たので、ホームで見送る。


「じゃあ、俺らのホームに行くか」


「まこ兄、それダジャレ? だとしたらすごく寒いよ」


「なわけあるか! ほら、帰るぞ」


「はーい」


 数分後に電車が来たので乗り込む。今日は長い一日だった。それに短くもあった。揺られる電車の中でウトウトしだした美玖を席に座らせ、その前に立って外を見る。


 今年の夏はまだ終わらないな。


 共有した思いはいつの日かまたいずる。


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