混沌
世界中で異変がある中、平和だった僕の街にも変化が見られた。変異した動物たちも街を徘徊するようになり治安維持のため警察が街を巡回しているのだが大半が塔や遺跡調査に派遣されているためそれに乗じてコンビニやスーパー、デパートなどで盗みを働く者が現れたのだ。通報するが人員が足りていないのか連絡をしてから1時間が経過しても駆けつけて来ない状況であった。心配になったのでいのりに電話をした。
「いのり、外は危険だから今日は会社を休んで家から1歩も出るな!今からそっち行くから戸締まりをして待ってろ。」
「うん、わかった。なるべく早く来てね・・・」
電話口だが不安で声が震えているのが分かった。バットを片手にいのりの家へと向かった。
「キェェェ」
塀の上に一匹の猫が現れた。だが猫だった面影はほとんどなくどちらかと言うと小柄なサーベルタイガーのような様相でこちらを威嚇しているようだった。バットを構え牽制するが飢えた野獣のような声をあげ襲ってきた。バットを大きく振り抜いたが猫は空中で翻りそれを躱す。5秒程度の睨み合いが続き双方相手の様子を伺っていたが猫がその沈黙を破った。僕に向かって飛びかかり右手を噛まれそうになったところを後ろに引いてそのまま回転しながら左膝を猫の胴に当てる。猫はよろめきながらこちらを睨んでいるが襲ってくる様子はなくただの威嚇のようだったので目線はそのままにゆっくりと移動し先へと向かった。
「ピンポーン」
「天斗お待たせ、入って!」
いのりは私服に着替え天斗が来るのを待っていた。やや胸がはだけているため目のやり場に少しだけ困ってしまった。
「いのりの部屋久しぶりに入ったなー。あーこれ懐かしいな。まだ持ってたのか!」
幼い頃にあげた手作りのお菓子の家で手先が器用だった僕はいのりが言う通りの理想の家を作った。あれから随分と経つけど大人になったいのりがまだ持っていたなんて少し意外だった。
「それは天斗との思い出だし捨てられなくて仕方なくよ!ホ、ホントよ!」
照れているのか、いのりは少し頬を赤く染めていた。
「そ、それよりこれからどうするの!」
「まずは、出社するのはしばらく控えようと思う。やりかけている仕事についてはこの中にデータがあるから今日からここでその続きをしようと思う。」
そう言っていのりにUSBメモリーカードを見せる。
「ちょ、ちょっとそれだとあんたは毎日この部屋に出社するってこと?」
「その方がいのりも安心だろ?」
「それはそうだけど・・・会社に行くよりは私の家の方が近いから危険も少ないだろうけど外は危険だよ?仕事を中断することは出来ないの?」
「僕は非戦闘スキル持ちだし、こんなことしか世の中の為に貢献できないからな・・・それにスキルを習得してからタイピングと演算処理が格段に向上した気がするんだ。このプロジェクトは今後必要になるだろうことも、いのりなら分かるだろ?」
「だったら、完成するまでこの家にいればいいじゃん。その方が外に出なくて済むし安全だよ。」
僕達は今、政府の依頼で第8世代と呼ばれる人工知能をプログラミングしている。進捗状況は8割ってところか?
「それなら遠慮なくそうさせてもらうけどいいのか?その・・・両親にはなんて説明するんだ?」
「今は会社が忙しくて両親は当分帰って来ないし説明は不要だから安心して!」
「・・・」
外も危険だけど、いのりの家に連泊することで父親に怒られないか少し不安になった。