頭領の過去
野党の一族に生まれた頭領は、子どもの頃日々略奪と人の血に手を染めて生きる仲間に、疑問をもっていた。
「どうして何もしてない人を殺さなくちゃいけないの?」
「それはね、そうしないと私たちは生きていけないからだよ。」
そう母は言った。
そんなとき、頭領(子ども)は別の野党一族の巣窟に迷い込んでしまい、つかまってしまう。そうして、拷問を受けて初めて、
「こんなに痛かったんだ。こんなに苦しかったんだ。」
と、今まで奪ってきた人々の苦しみを知り、涙を流して、悔いる。死ぬほどの体の傷よりも、心の方がずっと痛かった。
「ごめんね。」
と最後にポツリとこぼし、その命は失われようとしていた。
その時、洞窟の奥から黒い霧のようなものがゆっくりと流れ出る。その霧は子どもに苦痛を与えていたものたちを飲み込み、それに慄いた周囲のものたちは一目散に逃げ出した。
子どもはそれを見て、体を震えさせながらも体がもう冷たくて、動くことはできず静かに涙を流しながら息絶えようとしていた。
その霧は子どもを周囲から包み込んで、次第にそれは優しい光へと変わっていった。
子どもは初めて感じる、不思議なぬくもりに包まれてゆっくりと安らかに目を閉じた。
頭領はあのぬくもりにもう一度包まれたかっただけなのかもしれない。それが、段々と辛い経験から思考が歪み、諦観を覚えて、少し道を違えてしまったのだと思う。
『重なる挫折とアイデンの研究』
どれだけ力を示そうとも、どれだけ統治を重ねようとも争いは無くならない。そう悟った頭領は、未知の遺跡に眠っていた文献を掘り起こし、本当の平和を目指して、日々研究を重ねていた。