嫁さん一人三百万円
今から二十年ほど前のお話です。
近所のオバちゃん連中が、噂してたんですよ。「○○さんちの息子の嫁、中国人なんやで。業者に三百万払ったらしいで。そやけどその嫁はん、中国に旦那と子供いて、その家族に送金するために○○さんの息子からお金むしり取ってるんやって」というような内容でした。
その頃の田舎というのは、息子が結婚できないのを心配するおばあさんが、外国人の嫁を仲介業者に頼んで連れてくる、っていう話があちこちであったんですよ。特に農家。何で農家なのかというと、大抵嫁いじめが酷かったから、なりてがいなかったのです。いじめというか、めんどくさい風習がきつくて、よく「嫁が出てった」とか聞きましたよ。工場でバイトしてる時にそういう女性いましたね。「山から逃げてきた」っていう。
私の同級生にも、農家に嫁いだ人がいるんですが。舅にいじめられて、ある時など幼い娘に「うるさいから」って、水かけられたとか何とか。昔の朝ドラみたいな話なのですが、こういう事を聞くと嫌になってしまいますよ、農家の「嫁」になるとか。農業を衰退させたのは、政治の問題もあるのかもしれないんですが、農家の嫁問題もあるんだと思うのですよ。今はそういう待遇面、改善されているんですかね。
ところで「嫁一人三百万」っていう相場、当時はあちこちで耳にしたんですが、よく問題にならなかったなあと思うのですよ。だって人身売買じゃないですか。単なる出稼ぎ感覚の人もいたんだろうけど、主に中国から来ている人が多かった時代から、フィリピン、タイと変化するんですが。
ところで冒頭にある「○○さんの嫁」ですが、その後、日本で生まれた子供と共に中国の家族の元へ帰ったそうです。
それにしても、昔の田舎の話を聞くと暗澹たる気持ちになるのです。子供が水くみのために学校に行けなかったとか、貧乏なのにどんどん子供が生まれるとか、嫁いじめとか変な風習とか。
何で結婚報告でご近所さんに饅頭配らなあかんのや。あたしゃそんな事、子供らが結婚してもやらんで! と言ってます。あとは嫁入りトラックとか。家具が入るように、家を建てるとか。もうね、結婚のハードルを上げまくる風習はやめた方がいいのですよ。少子化やら都市部への人口流出やら、田舎の変な風習やめたらちょっとは改善するのと違うかなあ、と思います。もう遅い気もしますが。
今回は、お仕事というよりは「だから田舎は嫌なんだ」話になってしまいました。