何度でも挑めばいい -2-
(何を、ばかな……!?)
確かに致命傷を負わせた相手が、自分を攻撃してきている。
確かな殺意を、その剣に纏わせている。
(回避は、間に合わぬ……!!)
ディアボロは、その剣を脇の下で挟み受けた。衝撃を吸収しきることは出来ず、
刀はあばら骨の隙間を抜いて、ディアボロの胸の側面から出た鮮血が宙を舞った。
少年が渾身の力を込めて、ディアボロの体を縦に引き裂かんとしている。
(嘗めるなよ、小僧……!)
ディアボロは空いた左手で、少年の顔面に向けて拳を放つ。
その拳をもろに受けて、少年の小柄な肉体は真横に吹き飛 んだ。
少年は、バク転で上手く受け身を取ると、ディアボロをじっと睨みつける。ディアボロは少年が残した剣を脇から取り上げると、その剣を遠くへ放った。
「驚かされたな……確かに致命傷を負わせたはずだが……」
ディアボロは少年をじっくりと観察する。先ほど少年の体を貫いた傷口から、多量の出血が見られる。
少年の顔色は青白く、死人の顔つきに良く似ていた。
「まさかとは思うが…… お前は屍人の類か……?」
ディアボロが目を細めて、そう尋ねると、少年は口の中に溜まった血を地面へ吐き捨てた。
「その通りだと言ったら、お前はどうするつもりなんだ?」
「醜悪極まりない。一度は認めた男が、そのような下賤な存在だったとは、と。残念に思うだけだ」
ディアボロが吐き捨てるように少年に言葉を返すと、少年は目の辺りを右手で押さえ、上空を見上げるように高笑いを始めた。
「ハハハ、可笑しなことをいうんだな、”死の騎士 ディアボロ”よ。僕はね、ただ貴方を倒したい一心なんだよ」
少年はその目に狂気を帯びて、ディアボロを指の隙間から覗き見ている。
「―貴方を倒すためなら、何だってやるぞ――覚悟しろ」
ディアボロは少年から並々ならぬ覚悟を感じとった。
(誘いこまれていた、というわけか―)
ディアボロは、どちらかの命が尽きる以外に、この戦いが終わることがないだろうと悟った。
何度でも挑めばいい -2- 終