ルナ
『汝よなぜ剣で戦わなかった?』
今まで自分が殺されるとか動物を殺すとかそんなことは一度も考えたことがなかった。
「ゴブリンも生き物だから殺すとかそういうのはできない。」
ディマーは呆れるように言った。
『そんな甘いことを言っているといつかやられるぞ。この言葉を忘れるな。』
早く元の世界に戻りたいと武史は思った。
ふと空を見上げると雲行きが怪しくなってきた。
街へ急ごう。
そう考えていると、木の陰から女の子が覗いていた。
「勇者様・・・?」
オレのことを勇者といった女の子は髪が青く、星の形をした髪飾りをつけていて、目が透き通るような水色であった。また、声が細くどこか不安げな様子であった。
「勇者って、オレが!?ただのバイトリーダーだよ??」
「えっ?バイトリーダー?」
(こっちの世界にはバイトなんて言葉なかったか・・・)
「あっ!ごめんごめん」
少女にこれまでの経緯を説明した。
「勇者様!この話は誰にも言ってはいけません。勇者様の命に関わります。」
ポツポツと雨が降って来た。理由を聞こうにも濡れてしまうため雨宿りできる場所を先に探さなくては・・・そう考えていると
「とりあえずこっちに来てください。」
その少女は武史の手をひっぱり、走り出した。
ついていくと少女が住んでいるらしき小屋についた。
「私はここの生まれではありません。私も勇者様と同じ転移者です。」
「えっ!?」
「話を聞いたときはびっくりしました。バイトリーダーって。プフッ」
少女は笑い始めた。
「私の運命はバイトリーダーにかかっているのかぁ」
「まず、バイトリーダーを馬鹿にするな!あと運命ってどういうこと?」
「今から5年前かな、変なおじいさんが倒れていて水をあげたらこの星の髪飾りをもらったの。いらないっていってたんだけど、私に渡してもうダッシュあのおじいさんは逃げたわ。この髪飾りを見たらいきなり光って、気付いたらこの世界にいたの。元の世界に帰るための方法を考えていたら手に持っていた髪飾りがこの岩の封印を解くものを待て。その者が元の世界に返してくれるととだけいってもうずっと何も教えてくれないの。だから私は5年間もあなたを待ったの。そういえば名前を言ってなかったね。私の名前はルナよ。よろしくね。
勇者様の名前は?」