ディマー
霧が晴れ辺りを見渡すと、これまでに見たことのない緑の大地が広がっていて大きい一枚岩があった。こんなきれいな空気を今まで吸ったことがない。周りは静寂で時が止まっていて初めての場所なのに懐かしくも感じた。
「ここはどこなんだ?」
『ここは汝がいた世界とは別の世界。汝にとってみれば異世界ということになる。』
大きな岩から直接頭に声が送られてきた。
「お前は誰だ?」
『私はディマー。永く封印されていたため魔力がもうない。このまま朽ちるかと思っていた。そんなときかつて私の体の一部だったものを汝がもっていた。そこで汝と接触した。』
「ディマー?オレは・・元の世界に戻れるのか?」
『私の力が戻ればいつでも元の世界に返すことはできる。』
「そんな理不尽な!今すぐ戻してくれよ!明日だってバイトが入ってるんだ。お客さんに迷惑がかかる。」
『今の私にその力はない今回、汝がこの世界に来たのも来るべくして来たというところだ。帰りたくば、私に協力をしろ。私をこの地に蘇らせるのだ。』
「・・・お前は何者だ?なんでそんなことができるんだ?」
『私は1000年前、神との戦いで封印された。・・・負けたわけではない。負けたというよりは私は神に致命傷を与えた。神は仲間だった人間が封印をした。しかし、あろうことか仲間だったはずの人間が私も封印した。その人間は死んだがその効力は消えず、ずっと封印されている。』
「神を殺すなんて・・・お前は悪いやつなのか?もしそうなら別の方法で元の世界に帰る方法を探す。お前には頼らない。」
『いや、待て。私は神の息子だ。神は、人間を生み人間の様子を見て来た。しかし人間の争いを生み私利私欲のために生きる姿を見て憤怒し、その隙を突かれてエラトマにより悪魔へと変化させられた。今考えると、私を封印した者もエラトマにより意識を操作されていたようだったがな・・・』
「俺はただのバイトリーダーだ。お前の封印を解くことなんか出来ない。それにそんな話信じられるか。これはどうせ夢なんだろ?」
武史は大きな岩を背にして歩き出した。
『汝よ待たれり。』
「えっ?」