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77 一年の計は『元旦』にあり

年末年始イベントが継続中。

特定の宗教に寄せるのは本意ではありませんが、そこから独立したキャラクターとして少し、サンタクロース的な何かを。

忘年会旅行を終えて、旅行が無事に終わった件をお土産付きで家族に報告して、真魔王城でのんびり冬休み。

ラウンジでくつろぎながら雑談。

クリスマスイベントとか、お年玉イベントとかは……?


「初詣くらいは、行ってもいいような……」

「あら、りょうた様。魔王ともあろうお方が、神頼みですか?」


ベルリネッタさんに痛いところを突かれた。

そう言えばそうか。

魔王が余所の宗教に頼ってどうする。

クリスマスプレゼントも然別(しかり)


「了大くんは何を買ってほしかったの? 合体ロボット? ヒーローベルト?」

「違うよ!?」


愛魚ちゃん……その子供扱いっぷりは何。

小学校低学年の男子扱いか!

まあ、物は考えようで。

城の常駐要員の皆にあれこれとプレゼントを用意するのは大変な上に、僕だけもらったり特定の誰かにだけあげたりするのは『ずるい』と言われるだろうから、それを思えばいっそプレゼントイベント自体やらない方が『ずるくない』よね。

それならそれで、よしとしておこう……と思ったら。


「なるほど、子供達の英雄《三択老師(さんたくろうし)》だな。善良な子供に、一年間の褒美と祝賀として玩具を三個提示して、欲しい一つを選ばせるという」


意外な人にサンタクロースが変な形で伝わってるぞ。

トニトルスさんは誰からそんなのを聞いたんだろう。

自分でしっかり調べたのか?


「以前、酒の席でカエルレウムから聞きましてな。確か……『ろーるぷれいんぐ』に『しゅーてぃんぐ』……それと『あくしょん』から選ぶのに迷ったという話ですぞ」

「いや、三択老師って……」

「サンタ……?」


愛魚ちゃんと顔を見合わせる。

ロールプレイング、シューティング、アクション……

ゲームソフトのジャンルか。

カエルレウムは僕が生まれ育った次元のことも知っているから、クリスマスのセールでゲームが安かった時にでもサンタクロースを知ったのかな?

そういうことなら、クリスマスやサンタクロースをカエルレウムが知っていても不思議じゃない。

ない、けど……三択老師って。

面白がって嘘を教えてるだろ……

後でバレて、叱られても知らないからな。


「あとは年末年始と言うと、挨拶回りか……あっ……」


挨拶回りを思いついて、最近会ってない人が頭に浮かんだ。

向こうの都合が悪くなければ、会いに行ってみたい。


「ちょっと、クゥンタッチさんの様子を見に行きたいと思います。行けますか」


クゥンタッチさん。

夏にプールで遊んでから、文化祭では女装の件で会って話したけど、その後はハロウィンも対《撚翅》戦も不参加だったからここ最近は意外と会ってない。


「移動自体は常時可能ですが、あちらの都合が悪い場合もあります。まずはわたくしが出向いて、様子を見てまいりましょう」

「お願いします」


確かに、いきなり来られても向こうも困るだろう。

ここは不死の相棒同士であるベルリネッタさんに、様子見をお任せした。


「あ、りょーたがいる! 遊ぼう!」


そうしていると、カエルレウムその人が登場。

開口一番『遊ぼう』とは……

もしかしたら『お子様』を通り越した『アホの子』じゃないかと……何と言うか、精神年齢が少し心配になるかも?


「カエルレウム、今年は三択老師は来んのか」

「どうだろうなー? 毎年必ず来るとは限らないらしいぞ。でも、今年はりょーたと仲良くしたり、りょーたの敵をやっつけたりして、いい子にしてたからな! だからきっと来る!」


ずいぶん強気だけど、さすがに風呂敷を広げすぎじゃないか?

そうやって嘘が大きくなるほど、バレた時が大変なのに。

少し注意しておこう。


「カエルレウム、三択老師なんていないんじゃないの?」


僕はサンタクロースを本気で信じてるほどお子様でも、本気で信じられるほど素直でもないから、ついそんなことを言ってしまった。

でも。


「三択老師はいるぞ! 前は確かにアクションゲームをもらったんだ!」


有名アニメ映画の中の幼児みたいな、意固地な返事。

この子は……本気で信じてる!

しまった。


「まあまあ。了大くんは老師様に会ったことがないから仕方がないの。老師様が実際に来たら、会ってもらえばいいじゃない?」

「そ、そうか……そうだな?」


愛魚ちゃんがなだめてくれたから助かった。

でも失敗だったな。

この後は僕も『三択老師はいる』(てい)で話を進めよう。


「僕はいい子じゃないから何かもらえるとは思ってないけど、会えたら会ってみたいかな」


うん……今の僕はすっかり悪い子だ。

ここ最近だけでも、扶桑さんに幻望さんに候狼さんと、どんどん関係を増やしてるからね。

もしもその老師に会えても、何かをくれることはないだろう。

あ。

挨拶回りは扶桑さんの所にも行こう。

農村がどんな風にできてるかも見たい。

そういう話をトニトルスさんにしておく。


「うむ、妙案ですな。我も付き合いますぞ」


扶桑さん以下《虫たち》の都合は……どうしよう。

また誰か様子見に行ってもらうか。


「あちらはいきなりでよかろうかと。あのフソウが《魅了》を効かせておるなら、急とは言っても会いに行くくらいは波風も立ちますまい」


それならいいかな。

扶桑さん自身が僕に愛想を尽かしてなければだけど。

なんてことを考えていると、ドアが開いて誰か入ってきた。

ベルリネッタさんが帰って来たかな?


「ホッホゥ!」


……誰、このジジイ?

とてつもなく怪しい老人が入ってきた。

この真魔王城のどこから侵入してきた?

あ、もしかしたら!

このジジイも、あのアイアンドレッドと同じヴァンダイミアムの住人で、ジジイの姿は僕を油断させるための機械の体か!

その手には乗らないぞ……


「あ! 三択老師!」


……なんて?

カエルレウムがジジイをそう呼んだということは、このジジイが三択老師?


「さよう。わしが三択老師じゃ。カエルレウムや、いい子にしておったかね」

「うん! りょーたとも仲良しだ! いい子だぞ!」


なんて純粋(ピュア)な対応。

お子様にも程があるだろ!

とはいえ、ジジイ……老師も特に敵対的なわけでもなく、よくあるサンタクロース的なキャラの言動だ。

サンタクロースの服の赤い部分が白くて、白い部分がモコモコではなくて赤い、という違いはあるけど。


「では今年も三択じゃ。前回選ばなかったロールプレイングとシューティング、まだ持っておらんのじゃろ?」

「うん!」

「そこに、このパズルゲームを足しての三択じゃ!」

「おお! それも欲しいやつだ! うわぁー! 迷うー!」


老師とカエルレウムの会話が、イベントとしてしっかり成立している。

こういう出し物なら、ただ単に物をもらうだけより嬉しいだろうな。


「三択老師の三択に欲張りはなし……一本だけじゃよ」

「うー……うむむ……迷う、けど……決めてたから、シューティング!」

「ホッホゥ、よろしい! では、これを」

「ありがとう! 老師!」


シューティングゲームをもらったカエルレウムの満面の笑み。

嬉しそうにするカエルレウムを見て、老師もニコニコだ。


「う、うおお……ちょ、ちょっとすまん!」


カエルレウムがそわそわしながら出て行った。

もらったゲームを早速やりたいんだな。

微笑ましいお子様め。


「さて、トニトルス・ベックスよ」

「む? 我か?」


老師がトニトルスさんに話しかけた。

三択老師は子供限定じゃないのか?


「そこの真殿了大くんをよく助けたご褒美に、この……ウイスキーとブランデーとテキーラからの三択じゃ!」

「ぬうッ!?」


高そうなお酒が三本出てきた!

これは、飲んべえのトニトルスさんには難しい三択では!?


「三択老師の三択に欲張りはなし……一本だけじゃよ」

「む、むうう……いや、カエルレウムもそこは聞き分けていたか……」


選べるのは一本だけ。

悩みに悩むトニトルスさん。

トニトルスさんがこんなに悩んだり迷ったりするのは、すごく珍しいんじゃないのかな?


「う……ウイスキーをもらおう!」

「ホッホゥ、よろしい! では、これを」


悩み抜いた末にウイスキーを選んだトニトルスさんに、老師から進呈。

これは……まともに買うとすごく高いやつだ。


「ふ、ふふふ、では早速……あ、いやいや……これは大事に飲もう……ちと失礼して……」


子供か。

トニトルスさんも何かそわそわして出て行った。

誰とも分けずにちびちび飲みたいんだな。

察したので止めない。


「老師様、私には何かございましょうか」


そう言い出したのは愛魚ちゃんだ。

なるほど、愛魚ちゃんは優等生だし、何かにつけて僕を助けてくれるし、間違いなくいい子の範疇だろう。

と、思ったけれど。


「ホッホゥ、すまんのう。深海(ふかみ)のお嬢ちゃんがいい子にしておるのはもちろん知っておるのじゃが、そこの真殿了大くんを好きすぎるために『択』が成立せんのじゃ。お嬢ちゃんは『三択』より『了大くん一択』じゃろ?」

「ですね!」


気恥ずかしい答えが飛び出した!

なんともはや……むず痒い……!


「おや……ふふ、三択老師様ですね。お話は承っております」

「ホッホゥ! うむ、うむ」


ベルリネッタさんが帰ってきた。

老師が来るのは事前に知っていたらしい。

なるほど、それで警備の対象外だったんだな。


「では、真殿了大くん。君にも三択じゃ」


僕には何かあるのか。

思えばここまで、カエルレウムにはゲームソフト、トニトルスさんにはお酒、愛魚ちゃんにはあえて無し、と各人の好みをよく把握して老師は動いていた。

その老師が僕に仕掛ける三択。

一体、どういう品だろう……!?


「この『同じクラスの美少女とイチャイチャラブラブのエッチ本』と『あまあまメイドのソフィアさんのエッチ本・第三弾(パートスリー)』と『ネットで知り合った美少女を調教して言いなりに堕とすエッチ本』の三択じゃ!」

「おい、コラァ!」


エロ同人誌の三択かよ!

しかもそのチョイス!


「ちなみに、わしのオススメは『ネットで知り合った美少女とオフパコ本』じゃよ」


オフパコて!

もういいから!

もう正体はわかったから!


「了大くん! これはもう『同じクラスの美少女の本』にしようよ! ね?」

「いえいえ、ここは断然『あまあまメイド』にするべきですよ、りょうた様」


愛魚ちゃんとベルリネッタさんが、それぞれ同じクラスの美少女とあまあまメイドを……自分自身にほぼほぼ近いキャラの本を勧めてくる。

そして、老師のオススメはネットで知り合った美少女の本。

つまりこれを勧めてくる老師の……ここまで各人の事情を把握できる老師の正体は!


「どういうコントだよ、ルブルム!」

「バーレーたーかー!」


ルブルム!

老師の姿が溶けて、変身が解けて……現れたのはルブルムだった。

そんなドタバタしたコントみたいなイベント。

そして。


* ルブルムがレベルアップしました *


「りょーくん……ワタシ、もう、りょーくんじゃなきゃダメ……」


* ベルリネッタがレベルアップしました *


「りょうた様ったら、今宵は特に大胆……はぁん♪」


* 愛魚がレベルアップしました *


「んもう、了大くんってば、本当おっぱい好きすぎ♪」


結局、三択老師は正体がバレたので三択にならず。

三日に分けつつ、三冊と三人を全部選んで、年末が過ぎていった……




真魔王城にいるとわかりづらいけど、こっちの次元の暦でも年明けらしい。

そんな話をベルリネッタさんから聞いた。


「つまり、こっちでの元旦か……よし」


《一年の計は元旦にあり》と言うからね。

今日から気を引き締めて行こう。

今年は魔王として、もっと強くなるぞ!

そして、できればいつまでも『カワイイ』呼ばわりのままじゃなく『カッコいい』になるんだ!

あ、あそこにいるのは鳳椿さんだ。


「今年もよろしくであります。ところで、了大殿……」


年始の挨拶は略式で済ませた鳳椿さん。

ところでって、何だろう?


「ここ数日、内歩進(ナイファンチ)がおろそかでありますな?」

「あ!?」


しまった。

冬休みで浮かれてて、ついついナイファンチを忘れてた……!


「内歩進は基礎として、毎日欠かさぬこと、毎日の習慣として定着させることが肝要であります。『毎日欠かさずやっているんだ』という自信が、とっさの時に体を反応させるのでありますよ?」

「うっ……留意します……」


こういう油断があるうちは、魔王としてまだまだ未熟と言わざるを得ない。

新しい年になったから、決意を新たにしていくぞ!




◎一年の計は元旦にあり

一年の計画は年の初めである元旦に立てるべきであり、物事を始めるにあたっては、最初にきちんとした計画を立てるのが大切だということ。

『月令広義・春令・授時』に「一日の計は(あした)にあり、一年の計は春にあり」とあるのに基づく。


思ったより手間取ってしまいました。

次回は年始の挨拶回りをさせますが、その後半あたりからシリアスにしたいかな……?

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