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50 目は口ほどに『物を言う』

第48話で出たルブルムのお土産が、ベルリネッタにバレてしまいます。

確かに『学校が終わったらベルリネッタさんに甘えたい』とは思ってたよ?

でも、まさかそんな。

匂いを嗅がれるなんて思ってなかった。


「さて、どうしたものか……」


あまり誰か一人だけに偏るのも、魔王としてはダメなのかも。

とりあえずベルリネッタさんに夕食や風呂、寝間着やベッドの用意を頼んでおいて、考え事。

愛魚ちゃんとは学校生活で一緒に過ごす時間が長いからいいとしても、こっちに来ちゃったから電波が届かなくて、ファイダイにログインどころかルブルムが持ってるりっきーさんのアカウントとの通信もできない。

でもルブルムはエッチな薄い本のコスプレでエッチしたばかりで、カエルレウムもプールで遊んだ直後にエッチしたばかりだから……ん!?

ちょっと待とう。

今、ものすごく『とっかえひっかえ』な思考になってた。

皆は『モノ』じゃない。

そこを忘れたらおしまいだ……一気に堕落する。

気をつけよう。




風呂と夕食を済ませたけど、ベルリネッタさんの姿が見えない。

黎さんに聞いたら『ベッドメイク中のはずですが』と。

そんなに時間がかかるものなのかな。

そろそろ寝たいから、寝室に行くついでに様子を見よう……と思ったら、向こうから来た。

でも何だか様子が変かも。

靴音がいつもより大きいような、早足なような?


「りょうた様、大切なお話がございます」


というか、怒ってる!

まず目つきからして、すごい気迫をひしひしと感じる。

《目は口ほどに物を言う》とは、このことか……

いや……むしろ、黒い魔力が漏れてるぞ!


「……寝室へ」


これはとても、日頃の『エッチしましょう♪』って雰囲気じゃないな。

なんで怒ってるのかわからないけど、言われた通りに寝室に行こう。

もう寝たいと思ってたし……怖いし。

そして寝室に来てみると、そこには。


「あ……しまった」


ルブルムからもらったお土産、エッチな薄い本。

愛魚ちゃんの手前、持って帰れなくてこっそりしまっておいた本が五冊とも全部きちんと揃えられて、ベッドの横のナイトテーブルに重ねて置かれていた。

一番上になっているのは……


「この『あまあまメイドのソフィアさん』というのは……何ですか?」


……よりによってメイドのソフィアさんの本。

そりゃベルリネッタさんもブチギレですよ。


「メイドならばまずわたくしがおりますし、黎さんや幻望さん、候狼さんに猟狐さん、他にも多数おりますし……それこそ、いくらでも『お召し上がり』いただけます。それなのにわざわざ絵の中のメイドとは、どういうお考えでしょう?」


とはいえ、勝手に捨てたり破られたりされてなくて安心した。

自分が買った本ならともかく、ルブルムが買ってくれた本だからね。

もしそんなことになってて、さらにそれをルブルムが見たとしたら、大変だった……


「りょうた様? 何故、何もおっしゃらないのです? わたくしとは話をしたくないとでも?」


……なんて、言い訳がましくてうまく言えない。

怒らせたくないから迂闊なことは言いたくないのに、何も言えないことが、もっと相手を怒らせる。

ぼっちの時から何度も味わった悪循環だ。

困った。


「待って!」


そこに救いの声。

ドアを勢いよく開けて、ルブルムが寝室に入ってきた。

いいところに来てくれた!


「ベルさん、りょーくんは悪くないの! そこの本はワタシがりょーくんにあげたやつでね?」

「まあ、ルブルム様が?」


ルブルムから事情が説明される。

助かった。

本人がいないところでルブルムの名前を出しても、他人のせいにしてるみたいでみっともなかったから、言えなかったよ。


「特にその、ソフィアさんのやつは……なんだかベルさんに似てるかもと思って、中身もりょーくんとベルさんの関係に似てる気がして、それを見たら、二人して燃え上がりそうかなって……」

「まあ♪ まあまあ、まあっ♪」


ルブルムが内容をかいつまんで説明しつつ全部白状してくれたおかげで、ベルリネッタさんの機嫌が直ってきたみたい。

気がついたら怖い魔力が収まっていた。

というより……


「特に、二冊めのこの辺……そう、ここの……ソフィアさんの方からご主人様を責めて、どこが敏感か探しちゃうとこ……ね、どう?」

「つまり、わたくしがりょうた様を責める……いい! いいですね!」


……思いっ切り読んで、エッチな話をしてる!

いや、よくはないだろ!?

というかそれ、男性向けのエッチな本だよね!?

女性が堂々と回し読みするもの!?

頭の中で『!?』マークが飛び交う。


「……もう、寝てもいいです?」


疲労感が一気にやって来てしまった。

本当、今日はもう寝たい。


「まあ。せっかく今夜は、いい『参考書』があるというのに、ですか?」


おい……『参考書』って。

ベルリネッタさん、まさか。


「りょうた様はそのまま、楽にしてくださって結構ですよ。この『あまあまメイドのベルリネッタさん』が、たっぷりと『ご奉仕』いたしますから♪」

「そういうことなら、ワタシはこれで……ごゆっくり♪」


* ベルリネッタがレベルアップしました *


そのまさかだった。

ルブルムもルブルムで止める気なんかなかったから、本の中のソフィアさんの『ご奉仕』をベルリネッタさんにほぼ再現されて、大変なことになった。

結局、怒られることはなかったけど、怒られるのとは別の意味で『こってりと搾られた』夜だった……




翌日。

朝食の後、トニトルスさんの部屋を尋ねて、相談。

こないだ覚えた《威迫の凝視》の性質や強さを見てほしいと言ったら、なんと自分にやってみろと言われた。

トニトルスさんを脅す理由なんかないんだけど……

えいっ!


「ふむ、まだ弱いですな。魔力の当て方、意志の込め方、そして意志そのもの、どれもまだまだ未熟」


やっぱりそうか。

知恵者のトニトルスさんなら、もっと強い……『上位互換』な能力も知っているんだろう。

思い当たるものを聞いてみよう。


「何代前でしたかな……随分昔に《一千の眼(サウザンドアイズ)/Thousand Eyes》という名の魔王がおられましてな。実際に千個も目玉があったわけではありませぬが、視線に様々な能力を付けて飛ばしておりました。それこそ攻撃でも威圧でも、魅了でも何でも」


サウザンドアイズ。

そんなすごい魔王がいたのか。

やっぱり僕なんてまだまだだ。


「その《一千の眼》殿の威圧は最早、威迫程度では済まず……服従させて当然の《服従の凝視(オーバーオウゲイズ)/Overawe Gaze》というしろものでしたぞ」


オーバーオウゲイズ。

視線だけで服従させられるというなら、僕の威迫程度じゃまだまだヌルいというのも当然のことだ。

魔王としては当分、魔王輪の真価をきちんと発揮できるように精進するしかない。

結局、一番よく魔力を使ってるのが『他の人に与える時』……つまり、エッチの時というのが、なんとも複雑。

役得のような、情けないような。


「ちなみに、初歩的な《凝視(ゲイズ)》ならば……我もできますぞ」


僕を見据えるトニトルスさんの瞳に、魔力が集まって、光って……

これは……!?


「!?」


頭がぼんやりして、男子のアレばかりが元気になって、まるでクゥンタッチさんに血を吸われた時のような変な感じに……

しかも、それだけじゃ、ない……


「おやおや、リョウタ殿。この程度の《凝視》で、まんまと術中にはまってしまいましたかな?」


……したい。

頭の中がその欲望でいっぱいになって、とにかく誰かを……犯したい。

女の裸体を貪って、自分のアレを突き入れて、一番奥に注ぎたい。

でも、これが《凝視》による影響のせいだとしたら、僕は、そんな……!


「そうなってしまっては仕方ありませんな。リョウタ殿はもう、目の前の女を(・・・・・・)気が済むまで犯し尽くして全て放たねば、気が狂ってしまうやもしれませんな?」


ここはトニトルスさんの部屋なんだから、僕とトニトルスさんしかいない。

今、ここで『目の前の女』って言ったら。


「気に病む必要などありませぬ……我の《凝視》のせいだと、そんなものを仕掛けた我が悪いと、そう思ってくだされ」


もう頭がどうかしそうで、ろくに動けない。

扉に鍵をかけたトニトルスさんが、そんな僕をベッドに寝かせて、服を脱がせる。

体は横にしても、アレの方は少しも治まらない。


「お許しくだされ、リョウタ殿。我とて『女』ですからな……時折無性に、リョウタ殿の『男』が欲しくて、はぁ……たまらんのです……♪」


そんな僕のアレを全部、トニトルスさんに飲み込まれて……

もう僕はそこから《凝視》の効果に抵抗できなくなって、あとはトニトルスさんを……


* トニトルスがレベルアップしました *


……昼食も忘れて、ひたすら犯した。

『エッチ』なんて穏便なものじゃなくて、いろんな欲望を全部ぶつけて、めちゃくちゃに。


「はぁ、あっ……りょ、リョウタ、殿……すご、いっ……♪」


やっと治まったと思ったら、窓の外が暗い。

結局、用意してもらっていたのに食べそびれた昼食を手直ししたり温め直したりしてもらって夕食にして、眠った。




なんだか、こっちに来ると結局エッチばっかりしてるような気がする……

また翌日。

ベルリネッタさんやトニトルスさんをそれとなく避けて……猟狐(りょうこ)さんに頼んでティータイム。

意外と紅茶ではなくて、緑茶と和菓子が出てきた。

美味しい。


「美味しいよ。ありがとう」


素直にお礼を言ってはみたけど、猟狐さんの浅黒い肌色でもよくわかるくらいに頬が赤い。

そんなに恥ずかしくなるようなことを言ったわけではないけど……?


「もしかして猟狐さん、どこか具合が悪いの?」


だとしたら大変だ。

仕事なんかさせないで、休ませないといけない。

それも魔王としての僕の責務だろう。

でも猟狐さんは、勢いよく首を横に振った。

体調が悪いわけではないらしい。


「うまく、言えない……リョウタさま……《凝視》で、感じて……」


《凝視》にはそういう使い方もあるのか。

思えば猟狐さんはどこか口下手というか、なんだか口数が少ない感じかもしれないもんな。

いいよと答えて、猟狐さんの視線を受け止める。


『茶も羊羮も、美味しいって言ってもらえた。うれしい。すき。リョウタさま、すき。食べてるところ、可愛かった。すき。(わて)も美味しく食べてほしい。すき。だいすき』


何だって!?

すごく、熱烈な……なんというか、こ、告白というか……告白そのものだな……

強い想いがひしひしと伝わってきて、こっちが恥ずかしくなった。

そして猟狐さんの瞳はずっと、まっすぐ僕を見つめ続けていて。

魔力がこもっているかどうかはさておきとしても、想いは間違いなくたくさんこもってる。

《目は口ほどに物を言う》か……

でも。


「まだ、時間が欲しい。それだけ想ってくれる人に『遊び』で手は出せないから」


強く想ってくれるからこそ、安易に手を出しちゃダメだ。

一度『遊んで』そのままポイなんて、それこそ典型的な『とっかえひっかえ』だろう。

僕はそんな風にはなりたくない。

残念そうな表情の猟狐さんに向けて、僕からも少しだけ《凝視》で伝える。


『猟狐さんの気持ちはしっかり伝わったよ。ありがとう』


緑茶と和菓子を持ってきた時の、四角い木製のトレーを抱きしめてはにかむ猟狐さん。

すごくかわいい。

この人を弄んで泣かせるのは嫌だな、と思える魅力を感じた。


「……ぬ? 猟狐はそこにおったか」


あ、候狼(さぶろう)さんが来た。

お茶を頼んだのは僕の用事とはいえ、猟狐さんにも他の仕事が残っているだろうから……ちょっと引き止めすぎたかな?


「猟狐ばかりずるいのでは! 御屋形様(おやかたさま)! 拙者も御屋形様と睦み合いとうござりまする!」


ござりまする!?

おやかたさま!?

ずいぶん古風な口調だな。

そうか……候狼さんの『さぶ』は、さぶらう……『侍』の語源か。

独特な口調と相まって覚えやすそうだ。


「ずるく、ない……リョウタさまのご命令をきくのは、メイドのつとめ……だから、お仕事」


まあねえ。

猟狐さんにお茶汲みをさせたのは僕だから、不満があるなら僕に言ってもらわないと。

僕からも擁護しておこう。


「というかね、どうして皆、僕と……その、アレだ、えー……」


擁護ついでに聞いたり釘を刺したりしておこう……とは思ったけど、やっぱり言い出せない。

『どうして皆、僕とエッチしたいの?』なんて、セクハラみたいというかセクハラ。

猟狐さんと、たぶん候狼さんは『その気がある』みたいだからいいんだろうけど、それにしても……


「御屋形様は奥ゆかしいのやら鈍いのやら……門番からメイドまで皆、この真魔王城に詰める者は御屋形様の『お手つき』になりたい者ばかりにござりますれば」


……いや、今更か。

思えば最初から、歴代制服復刻イベントを口実に皆してここぞとばかりに露出度を上げて、僕を悩殺しようとしてたもんな。

はっきり言えずに悩む方がバカみたいなのかも?


「しかし、そんな御屋形様が可愛いからにござりまするよ♪」

「ん……リョウタさま、可愛い……ドキドキする♪」


可愛いって言うのやめてよ!

僕はどうせならカッコよくなりたい!

本当、なんとかならないかな……




◎目は口ほどに物を言う

情のこもった目つきで、言葉にしなくてもそれと同等かそれ以上に相手に気持ちが伝わること。

言いたくても口で言えなかったり、言いたくないことを口先でごまかしたりしても、目には本心が表れるものということ。


メイドさん同人誌は「紳士付きメイドのソフィーさん」という良い本がありますので、そちらを参考にさせていただきました。

候狼も猟狐もその気があるということで、いつかアレなシーンを入れてもいいかもとは思います。

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