27 餅は『餅屋』
サキュバスのヴァイスベルクが再登場。
テクニックを伝授してもらって、愛魚やルブルムを攻略です。
なんでよりによって、僕を認めるかどうかの基準がエッチなんだろう。
カエルレウムとルブルムはそもそも僕が来る前にもかなり言い争いをしていたらしく、お互い冷静さを欠いていたところがあったせいかな。
とはいえ、言ったものは言ったと。
《龍の血統の者》に二言はないと宣言して、ルブルムは去って行った。
「あいつもバカだな! りょーたはこんなにしっかりしててかわいくて、魔力も『魔龍』もすごいのにな!」
魔龍って……ドラゴン化で変身した時のことじゃなくて、男子のアレのことを指して言ってるよね……
カエルレウムが言うには、すごいらしいんだけど。
「そうですね。りょうた様の『大魔王』でしたら、ルブルム様もご満足かと」
ベルリネッタさんは『大魔王』って言うけど、同じくアレのことを指してる。
でも、ベルリネッタさんは僕に甘いところがあるから、真に受けると危険かもしれない。
「……ふーん。よかったね、いろんな女の子とエッチできて」
愛魚ちゃんが冷たい。これはもう氷の海だ。
もうなんていうか返す言葉もない。
この機嫌の悪さに加えて、実は愛魚ちゃんとは『初めて』をもらったときしかエッチしてないから、評価を聞くのは無理だろう。
それに今は、もっと客観的な視点と、もっと具体的な攻略法が欲しい。
となると、もっと別の……
『僕にそれほど肩入れしてなくて、それでいてエッチなことを教えてくれそうな人』の協力が必要、かな?
「りょうた様、ここはぜひわたくしを頼ってくださいませ♪ それはもう、手取り足取りで♪」
だからベルリネッタさんはダメなんだって。
ここ最近は特に甘やかしてくるから公平性や客観性を欠く上、少し会わない時間があると次に会った時に『お情け』をねだってくるし、フリューには『淫魔っぽくない?』と罵倒されてたし。
……ん?
淫魔?
「そういえば!」
最適な人物を思い出した。
ベルリネッタさんには呼び出しとスケジュール調整を頼もう。
まだ日が高いうちから、寝室の王様ベッド。
思えば、明確に誰かを指定してここに呼び出すなんて、愛魚ちゃん以外は初めてだ。
「やっと、了大さんからお呼びがかかりましたねえ」
フリューがベルリネッタさんを罵倒した時の台詞で思い出した。
来てもらったのは《女淫魔》ヴァイスベルク。
客観的な評価をしてくれそうで、エッチなことを教えてくれそうな子。
素性から言っても、これほど適任な子は他にはいないと思った。
ベルリネッタさんには『この調子で他の女もどんどんお喰べくださいませ』と推奨されたり、愛魚ちゃんには『了大くんのバカ! スケベ! 節操なし!』と怒られたり、いろいろあるけど……
「うん。実は、ヴァイスにいろいろとテクニックを教えてほしくて」
この場合《餅は餅屋》ということで、サキュバスのエッチテクニックに頼ろうと思う。
少なくとも、軽率に無策で挑むよりはずっといいはずだ。
「了大さんったら……可愛いお顔の裏側で、女を堕とす毒牙を磨きたいんですねえ?」
毒牙。
さすがサキュバスは言うことが違う。
ベルリネッタさん以上の爆乳を揺らしながら、童顔から想像もつかない妖しい表情で、僕に迫る。
「お話は聞いてますよ。あのルブルムさんを堕とせるかどうか、賭けに出られたと」
ベルリネッタさんにヴァイスの呼び出しを頼んだ時、事情の説明も頼んでおいた。
ヴァイスは快諾してくれて、対策を考えてくれたそうだ。
「ルブルムさんほどの方には、精神面に《保護抵抗》がありますけど……今の了大さんでしたら、願望を読めますよ」
何それ!?
さすがサキュバスっていうか、勝手に見られるのはちょっとっていうか。
「了大さんは、おっきいおっぱいが大好き……♪ 揉んだり、吸ったり、顔を埋めて甘えたり……最近は、《ピー!》を挟ませてご奉仕させるのも、お気に入り♪」
筒抜けにも程がある。
そんなことを言われて、ついついヴァイスのおっぱいもそういう目で見ちゃう。
僕だって男子なんだし……というか、まあ、そういう目的で呼んだわけだし。
「そ、こ、で……そんな了大さんにピッタリの、女の子がおっぱいでとっても悦んじゃうようになる《超必殺技伝授/Initiate Super Death Blow》です♪」
僕の視線が向いてるのを承知で、ヴァイスは自分の衣装の胸の部分をはだけさせて、おっぱいを露出させた。
やっぱりすごく大きい……
「ここを見てください……おっぱいの横と腋の下の境目くらいの、このカーブ……ここを時間をかけて調教して、開発してあげると……女の子はすごく感じやすくなるんですよ♪」
そんな夢のテクニックが!?
驚きの連続に固まってしまっていると、ヴァイスが僕の手を取って、自分の胴体にもあるそのカーブに当てさせた。
「さあ、了大さん……じっくり触って、しっかり覚えてくださいねえ……♪」
実物で紹介され、実際に手で覚えさせてもらう。
すごい。
サキュバステクニックすごい。
他にも前戯の色々な小技がいっぱい。
ヴァイスが言うには『最後まで行く前のプロセスにこそ、真髄がある』んだとか。
気づくと、自分の手やヴァイスの肌が汗だくになっていた。
ずいぶん長い時間、集中していたかもしれない。
「そろそろ、お腹がすきましたねえ」
不意にそう言われて、確かに……と思ったと同時くらいに、ヴァイスが僕から離れる。
正直、ちょっと名残惜しい。
「んふふっ……了大さん。『授業料』をいただいても、いいですよねえ?」
ヴァイスは答えを聞かずに、僕の服を緩めて男子のアレを露出させた。
さっきからの流れに興奮しっぱなしで『最大』の状態を、ヴァイスは呆けたような顔でじっくりと眺める。
「やぁん、コレぇ……すっごぉい♪ それじゃ、了大さんの魔力……いただきまぁす♪」
じっくり見られて恥ずかしいなんて思考がまとまる前に、ヴァイスのおっぱいの谷間に案内された。
しっかり挟まれて、ヴァイス曰く『ご奉仕』が始まる。
「了大さんのだぁい好きな、おっぱいで……気持ちよぉくなってくださいねえ♪」
* ヴァイスがレベルアップしました *
肉体と精神の両面から僕の弱点を的確に攻めるヴァイスに、抵抗なんてできるはずもなく。
僕はたっぷり『授業料』を支払うことになった。
夕食と入浴を済ませて、あとは寝るだけ。
ルブルムに僕を認めさせるべく、ヴァイスにテクニックを伝授してもらったけど……
認めるとか認めないとかなんて理由でエッチするのって、なんか違うような気がする。
そんなことを考えながら、ぼんやり歩いていると。
「ここにいた……了大くん」
表情の厳しい愛魚ちゃんが目の前にいた。
僕は恋人を放っておいて、恋人にこんな表情をさせて、何をやってるんだろう。
すごく申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「別に、了大くんと別れたいとか、嫌いになったとかじゃないの。了大くんは魔王で、そういう立場もあるし、男の子で、そういう興味もいっぱいだし……でもね……」
理屈で割り切って、我慢しようとしてるのが伝わる。
そんな理屈なんかは本心じゃない、ってことも。
「了大くんの気持ちが、どこにあるのか……教えてくれないと、怖いの……」
僕だって怖い。
真魔王城の恵まれすぎた環境の中で、なんでもさせてくれる美女たちと美少女たちに甘やかされて、大切なものを見失いながら堕落していくのは……実力主義の中で認めてもらえないとか、生存競争の中で殺されるとか、そういうわかりやすい恐怖よりももっと、ずっと怖い。
だから、愛魚ちゃんの手を握る。
「愛魚ちゃん……今夜は、愛魚ちゃんと過ごしたい」
甘やかされてばかりじゃダメだ。
流されてばかりでもダメだ。
自分でしっかり決めて、自分の心を言葉にして、自分から動くんだ。
愛魚ちゃんの手を強く握って、愛魚ちゃんの瞳をまっすぐ見つめて、僕の気持ちを伝える。
「それが了大くんの気持ちなら……私にちょうだい」
もう、今は愛魚ちゃんのことだけを見る。
二人で王様ベッドに入って、僕を迎え入れてくれる愛魚ちゃんを丁寧に確かめて……
最後まで行く前のプロセスを大事にして……
* 愛魚がレベルアップしました *
ヴァイスに教えてもらったテクニックを、いろいろ試したり復習したりする形になった。
嫌がられるかと思ったけど、愛魚ちゃんは全部受け入れてくれた。
朝が来て、遅めの朝食を愛魚ちゃんと一緒に。
「前にベルリネッタさんが『初めて同士だと何があるかわかりませんから』って言ってたの。その意味がわかった気がする」
そういうやりとりもあったのか。
確かに、もしもお互い初めて同士だったら、最初はなんとかなっても後が続かなかったかもしれない。
ベルリネッタさんやヴァイスのおかげかな。
一途じゃないのは申し訳ないと思う。
でも、もう好きになっちゃったんだから、今更になって離しはしない。
日を改めて、夜までは英気を養って、ルブルムを探す。
なんだか乗せられてるような気がしなくもないけど、認めるとか認めないとかがエッチの理由として適切かどうかは、この際置いておこう。
どっちみち、認めさせなきゃ始まらない。
真魔王城の中に個室は持ってないらしいので、カエルレウムに聞くしかないかな……と思って部屋を訪ねたら、ここにいた。
姉妹でテレビゲームで対戦してた。
「ワタシが他の女みたいに、最初からおとなしく従うと思ったら大間違いだよ。ワタシを従わせたかったら、それに見合う男だってことを見せてくれなきゃ認めない」
ルブルムはゲームプレイの区切りが来たところで、コントローラを置いて画面から目を離した。
『お前なんかに負けない』という目つきで僕を見る。
敵意を感じないのは……まあ、ナメてかかられてるんだろう。
「りょーた……妹を○○ックしていいとは言ったけど、ここではヤるなよ?」
わかってる。
いくらなんでも、実の姉が見てる前でそれは……いや、どうしてもダメなら考えるか。
こんな時にユリシーズの薄い本の展開を思い出してしまった。
どうしてだろう。
とりあえず、王様ベッドに連れて行く。
「今までの女たちはベッドで従順にさせてきたんでしょ? それとも、もしかして『小さい』のに、おべっかを使ってもらってたとか?」
あっちの意味だとはわかったけど、そもそも身長が低いから『小さい』と言われるのは好きじゃない。
挑発とはわかっていながら、ついカッとなってしまった。
ヴァイスに教えてもらったテクニックを、よく思い出して……
最後まで行く前のプロセスを大事にして……
* ルブルムがレベルアップしました *
入念に手触りを確かめて、激しく懲らしめた。
少しも効いていないわけではないようで、ルブルムは声を上げないように我慢している感じだったけど、一度では僕の気が済まなかったのでもう一度。
* ルブルムがレベルアップしました *
それでもルブルムは素直に僕を認める気はないようだ。
このままで終わるのは寝覚めが悪い。
翌日。
やっぱり、ルブルムは僕を認めようとしない。
「はっ、たかが一晩寝たくらいで、もうワタシを屈服させたつもりなの? これだからお子様は」
さすがに初日ですぐというのは無理だ。
予想もできていたので、これは別にいい。
「女を本気で従わせたかったら、一ヶ月でも一年でも粘りなよ。ヘタクソ」
お子様なのは仕方ないとしても、ヘタクソというのは聞き捨てならない。
仮に僕がヘタクソなら、他のみんなの言葉が嘘や演技だったという意味になってしまう。
そんなのは認めたくない。
だから認めさせなくちゃいけない。
ルブルムという女に、僕という男を。
* ルブルムがレベルアップしました *
昨日よりもさらに入念に、ルブルムの肢体に弱点がないかを探し、蕩かす。
気のせいか、昨日に比べてたまに声を我慢できない時があったかもしれない。
* ルブルムがレベルアップしました *
「こ……これくらいで、いい気に……なるな……っ」
二度懲らしめても、まだまだ余裕を見せてくる。
こうなったら意地だ。
絶対に認めさせてみせる。
また翌日……
これで連続三日目だ。
「キミも懲りないねえ……本当に、ワタシに認めさせられると思ってるんだ?」
認めさせる。
すまし顔でいられるのも、今のうちだけだ。
少しずつ勝算が見えてきたような気がする。
* ルブルムがレベルアップしました *
昨日の感触を思い出し、弱点と思われる場所を重点的に攻める。
お気に入りの、ユリシーズのエッチな薄い本で見た手口もダメ元で試してみたけど、これが意外と効いた。
声を我慢できなくなったルブルムが、いい声で鳴く。
もちろん、だからと言って手を緩めることはしない。
少し休んだらもう一度。
* ルブルムがレベルアップしました *
「ちが、う……ワタシは、認めない、っ……」
懲らしめられた肢体を震わせながら、まだ口答えするルブルム。
少しずつだけど、確実に揺らいでいる実感を得られた。
◎餅は餅屋
何事においても、その道のことはやはりそれぞれの専門家が一番ということ。
上手とはいっても、素人では専門家にかなわないということ。
了大は普通なようでいて「エロ同人誌を買っている」という設定をこれまでも断片的に地の文に入れてきましたので、それと慣れてきた感じとで少しずつ態度が大胆になってきています。




