20 持つべきものは『友』
愛魚視点で第16話終盤~第19話をおさらいしつつ、イチャラブです。
魔王輪には《保護抵抗》というのがあるらしく、クゥンタッチさんの《眷属化》さえも受け付けなかった了大くん。
男の人ならではの部分の元気が抑えきれなくなってた時は、どうしようかと思ったけど『はさんであげるといい』というのは有力情報だった。
その辺はさすがベルリネッタさん。
恋敵ではあるけど、そういう話ではやはり数段上手の人だ。
やはり共同戦線を張るように話し合ったのは得策だった。
それで、了大くんに私のおっぱいの中で満足してもらえたのは、イチャイチャラブラブイベントとしてはかなりポイントが高かったと思う。
了大くんってば、本当に巨乳好きなんだから。
でも、うわごとみたいに私の名前を呼んで、終わった後は瞳を潤ませて、とろーんとしてた了大くんは……
すっごく、可愛かった!
あんなに無防備でカワイイ了大くんが見られて、しかも私に夢中になってくれるなら……
また、してあげても……いいよね……
でも、あのカエルなんとかって……《聖白輝龍》の人は油断できない。
了大くんを呪文でドラゴンにして、暴走させて、しかも止めるのに魔力をいっぱい使ったからって、了大くんから魔力をもらったってことは……
しかも『あっちの方も魔龍』なんて言ってたってことは……
それって、会ったその日に了大くんとエッチしたってことじゃないの!
『僕が自分の力を制御できなかったせいだから』って言ってた了大くんには、そういう事情もあるとしても……
気をつけなきゃ!
結局は地道な鍛練が大事と、今日もトニトルスさんの授業を受けていた了大くんの……機嫌が悪い。
ベルリネッタさんにお茶を淹れてもらって休んでる。
「トニトルスさんも、冗談が過ぎると思います。こっちは真面目に困ってるのに」
「まあまあ。トニトルスさんも、りょうた様が思い詰めてはいないかと心配してのことですので」
行き詰まってるみたい。何かあったのかな?
でも、これはチャンスかも!
向こうの学校の宿題もあるから、それを済ませるのに今週はもう戻ろうと思ってたけど、了大くんも誘おう。
「今週はもう帰ろうか?」
学校の宿題があるのは了大くんも同じだから、それを一緒にやるって意味でも、了大くんにはマイナスにならないどころかプラスのはず。
この有利な条件を活かさない手はない。
「うーん……とはいえ、魔力のつかみ方の修行も全然できてないんだよね」
なるほど。
基礎のところの授業だったのに、トニトルスさんの冗談が過ぎて捗らなかったと。
「それなら、なおさら帰っちゃおう。私にいい考えがあるから」
これは、かつて苦しめられた父さんのカリキュラムが使えるかも。
父さん、あの時は恨んでごめんなさい。
あの無茶振りが、今こそ役立ちそうです。
「でも、かなり遅くなると思うから、うちで……次元を移ってからだから、深海御殿のほうね……うちでごはん食べて泊まって、日曜にお話しよっか」
きっと向こうに着くのは、最速でも現地時間で土曜日の夜。
父さんは会社の出張で留守だし!
よしんばいても、むしろ孫の催促するレベルだし!
いや、今の学校を卒業するまではまずいけど!
それはさておき、深海御殿ならいっそそのまま住んだって不自由はさせないし!
「あ、うん……何から何までごめんね、なんか……」
んもう!
遠慮がちな了大くん、超カワイイ!
了大くんにはお風呂もパジャマも貸して、泊まってもらって……
今夜は、きっと、何かある……
うふぁ……
ありませんでした。
なんで!?
既に恋人同士、しかも父親公認の肉体関係よ!?
何が不満なの!?
とりあえず、顔を洗って落ち着こう。
「愛魚ちゃん、おはよう」
「……おはよう、了大くん」
と思ったら、了大くんと廊下で出くわす。
何食わぬ顔でぼんやりしてる。
人の気も知らないで。
「そろそろ痛くなくなってきたかなーと思ったのに……」
やっぱりアレかな……
ベルリネッタさん以下、他のメイドやトニトルスさん、それにあの青白いカエルっ子に、その他大勢……
みんなが了大くんを狙ってるから、目移りしてるのかな?
やだなー……
頭の中がもやもやする。
「せっかく、こっちで過ごすように誘って、ようやく邪魔されないと思ったのに……」
でも、こっちの次元には、この深海御殿には、私だけ。
ベルリネッタさんも他の誰もここにはいないんだから……
私を見てほしいのに。
もやもやがどんどん深くなる。
「……よかった」
「何が『よかった』なの! もう!」
了大くんは何を言い出してるんだろう。
意味がわからない。
思わず叫んでた。
すると了大くんは、私が静かすぎて心配してたと言う。
「『大丈夫だよ』って聞き分けがよさそうなのは、一見都合がよさそうだけど……僕は、愛魚ちゃんが僕のことなんてどうでもよくなったのかと思って、心配になったんだから」
そういうことだったんだ。
どうでもよくなんて、なるわけないのに。
でも、ヤキモチ妬いてないフリをしすぎて、かえって了大くんには伝わらなかったみたい。
たまには程々にヤキモチ妬いて見せるのも『好きですアピール』のうちということね。
気をつけなきゃ!
で、朝ごはんの後は『マクダグラスの限定シェイクが始まってる』って了大くんが言うから、そのマクダグラスへ。
ハンバーガーの厚みはやっぱり苦手だけど、お茶するだけならいいよね。
学生相応って感じでもあるし。
出てきたシェイクを飲んでみる。
すごく甘い。
ちょっと甘ったるいかも。
でも、了大くんにとってはなかなか好みの味らしい。
『レギュラーメニューになればいいのに』なんて言い出す。
こんなに甘いのがいいなんて、お子ちゃまなんだから……
でも、そこもカワイイ♪
一息ついたところで、無茶振りカリキュラム……スポーツ選手の高地トレーニングに例えての、こっちの次元での魔力感知の訓練。
「……ダメだ」
魔力を思うように感じ取れなくて、落ち込む了大くん。
自分の指先にほんのちょっと魔力を集めて、感じ取りやすいようにしてみると、そっと了大くんの指先が触れてきた。
指同士が絡み合う。
ちょっとだけ指先が揉まれる。
ぷにぷに。
ああ……何これ……幸せすぎる……
限定シェイクより甘い、甘い時間。
少しずつ魔力の感知に慣れていく了大くんが、少しずつ私との時間にも慣れていく。
魔力感知も恋仲も、すぐにはうまくいかない。
一度やそこらの肉体関係なんて、それだけじゃたいした意味はなくて、少しずつでも心と心でわかりあっていくのが大事なんだ。
「おお、イチャイチャしてますなあ……」
そうしていると、クラス委員の富田みゆきさんに出会った。
手元を見れば、限定デザインの紙コップ……ということは特に他意はなくて、単に富田さんも限定シェイクが目当てで来ただけのことみたい。
「あら、富田さん。こんにちは」
「こんにちは、富田さん」
にこやかに挨拶。
何しろ富田さんは了大くんに意地悪をしない上に、真魔王城の面々と違って了大くんを狙うこともしない。
敵対する理由は一切ないからね。
「こんにちは……あっ、ごめんね、イチャイチャの邪魔しちゃって」
言われてみると確かに。
私としては正直、最初は魔力感知の訓練が目的だったけど、今はそれよりもイチャイチャの方が楽しい、という感覚だった。
了大くんは……真面目だから、訓練の方が重要かもしれないけど。
で、富田さんは別に私から了大くんを取ろうとしたわけではなく、単になんとなく話しかけてきただけで、自分でも邪魔をしたと思っているようなので、そのくらいは友達付き合いということで笑って流しておく。
「はー。本当、深海さんは真殿くんラブなのねえ」
「当然! だって……本当はとっても優しくて、すっごくカワイイんだもん!」
うん、カワイイもん。
それに見た目だけじゃなくて、優しさと芯の強さも魅力だ。
私から『手ほどき』をお願いするまでは、頑なにベルリネッタさんの誘惑を断ち切っていたほどの意思力と誠実さ。
そりゃ処女でも捧げるってものよ。
「うーむ、なるほど……そういえば真殿くんは身長低めだからねー……年下系の良さか……」
富田さんの美的感覚がどうなのかはさておき……これはむしろクゥンタッチさんが言うところの『雛鳥』趣味に近いのかも。
私も、あの人のことをとやかく言うのはやめよう……
「……私も、彼氏欲しい……」
むむ。
ダメよ!?
富田さんとは利害関係抜きの友達でいたいの。
いくら富田さんでも、ううん、富田さんだからこそ。
「了大くん、富田さんはダメだからね?」
「ちょ!?」
さすがにこれは、私の考えすぎだったみたい。
了大くんには全然そんなつもりはなくて、富田さんも驚いてる。
「『富田さんは』ダメ、ってさぁ……私以外には誰か、公認してる人がいるように聞こえるよ?」
うっ……富田さん、鋭い……
というか、口が滑った。
「やっぱりあの、愛人宣言してたメイドさん? 美人だもんねぇ……」
ベルリネッタさんのことか。
確かに富田さんならベルリネッタさんとも会ったことがあるから、必然的にそういう考えに行き着く可能性は充分あるし、実際問題としてベルリネッタさんは『二号さん』状態だし。
……一番は私よ!?
私なんだからね!?
「ふふん、それはどうかな!」
唐突な大声に振り返ってみれば、嫌なのがいた。
ビッグTシャツコーデの……カエルなんとか。
「カエルレウム? なんでこっちに?」
了大くんが反応してる……
即エッチできた女がそんなにいいの?
……あー、いや、単なる世間話よね。
いけないいけない。
「なんかお買い得なゲームを探しにと思ったが、店が開店前でな! それまでちょっと休憩に寄ってみたら、りょーたがいたわけだ!」
別にカエルみたいな顔というわけじゃなく、むしろ美少女のルックス。
男性が了大くんだけだから、どんどん男女比が偏る。
「この人も真殿くん狙いなの? モテモテか!」
「りょーた、この人はりょーたの友達か?」
鉢合わせる二人。
了大くんが困ってるじゃない……
「あ、真殿くんとは学校で一緒のクラスの、富田みゆきです」
「サンクトゥス・カエルレウムだ! よろしくな!」
富田さんが怪訝そうにカエルレウムを見てる。
そりゃそうよ。
「外国の人だから、名前が言いにくいとかハンドルの方が馴染んでるとか、そういうね」
すかさずフォローする了大くん。
こういう時の了大くんは、本当優しいんだから。
それに機転も利く。
カエルレウムの名前のことは、インターネットのハンドルネームということで誤魔化すことにしたらしい。
「あ、ネットで知り合ったんだ。へー」
これで富田さんも納得。
うまいなぁ、了大くんは。
じゃ、私もここは機転を利かせて……
「もうそろそろ、お店も開くんじゃない? ゲームは私も了大くんもあんまり詳しくないけど、富田さんから何かおすすめゲームがあったら、それをカエルレウムに教えてもらってもいい?」
……それとなく追い払う。
私は了大くんの魔力感知の訓練を手伝いながら、思う存分イチャイチャするのよ。
二人ともここで消えてもらおうか。
「えー……私、特定ジャンル以外のゲームはほとんどやらないから……」
特定ジャンルって。
何かあるなら教えてあげればよくない?
「乙女ゲーって日本語の台詞を聞けたり日本語のテキストを読めたりしないと無理とか、日本的な理想像って外国の人には合わないとかで、おすすめしづらいのよ」
おとめ……?
よくわからないけど、おすすめできないのかな。
「ギャルゲーの女向け版みたいなのだろ? 日本語は聞くのも読むのも平気だけど、恋愛は別になー」
カエルレウムも好みのジャンルじゃないみたい。
なんとかうまく追い払えれば、なんでもいいんだけど。
「ゲームの男キャラより、りょーたの方がいいからな!」
何を言い出すのかしらね、このカエルは。
それは私が言って、了大くんに『えへへ』って可愛くはにかんでもらうための台詞でしょうが。
むしろ言えばよかったのか。
まずった。
「……まあ、ゲームはおすすめできなくてもいいか。カエルレウムさん、行きましょ」
悩みそうになったところで、富田さんがカエルレウムを促す。
おすすめゲームはないのに?
すると今度は私に、近づいてこっそり話しかける富田さん。
「これ以上、イチャイチャの邪魔されたくないのよね? あの子は引き離して私も退散するから、あとはお好きに」
さっすがー!
富田さんは話がわかるッ!
「ありがとう」
つとめて上品に笑顔でお礼。
意識しないと、富田さんがベストフレンドすぎてにやけそう。
《持つべきものは友》よね!
何かあったら、私も富田さんには親切にすることにしよう。
「カエルレウムがいると、あの人の強すぎる魔力でわけわかんなくなって、感知の訓練どころじゃなくなるの」
そして了大くんには説明。
ただの嫉妬だけで追い払ったわけじゃないの。
……違うのよ!?
「あの人は見た目は隠して人間の姿に合わせてても、自分の魔力までは隠そうとしてないもん。そんなのがいると困るから」
さて、気を取り直して……
了大くんとイチャイチャ魔力感知訓練、イベント再開!
◎持つべきものは友
困ったときに相談に乗ってくれたり、力を貸してくれたりするのは、友達だということ。
そういう友達は大切にしようという意味でも使われることも。
このイベントをフラグにして、主人公の魔力感知から少しずつ戦闘能力アップ描写を入れていきます。