episode 7
アルパジカ伯爵邸での暮らしは豪勢なものだった。
だが貴族の中では質素な方なのかもしれない。
フレドンナは元気で貴族の婦人らしくはない人物だった。
花に囲まれていることが好きで、時々庭師と一緒に花の手入れをしたりするのだ。
彼女は元々身分の低い貴族の出身だったらしく、実家では自分の庭を持っていて園芸を楽しんでいたそうだ。
この家はかなり身分が高いため、あまり庭の手入れなどに手は出してはいけないと言われ、それでもどうしても植物に触れたくて、たまにならと許されたらしい。
しかし彼女は病弱でもあった。
ルイードを産んだ時も生死の間を彷徨ったらしい。
時々床に臥せって起きられない日などもある。
それでも彼女は笑顔でいた。
両親を失い、住み慣れた村から離れたフェミュールにはとても心強い存在だった。
彼女はルイードにもフェミュールにも変わらない愛情を注いでくれた。
その甲斐あって、フェミュールは少しずつ、両親を亡くしてから決してなかったのに、歌うようになった。
勉強はルイードと同じように家庭教師が付けられ、礼儀作法や乗馬なども教わり、フェミュールはみるみるうちに令嬢と呼ぶにふさわしくなった。
伯爵は週に1度、夕食後に家族と執事とお付きのメイドたちを集めて、フェミュールの歌を聴いた。
彼はやがて、歌の指導員を彼女に付けさせ、彼女の歌はより素晴らしいものになった。
その噂は貴族の間だけに収まらず、国中にシンデレラガールとして広まっていった。
フェミュールは時々行われる、伯爵の家のパーティーでも歌うようになった。
そして遂に国王一家の前でも歌うことになったのだった。
伯爵は鼻高々といった様子だ。
当日、彼女は伯爵たちがわざわざ新調したドレス一式に身を包み、国王一家の前で歌った。
国王は大層喜ばれ、彼のアンコールにより、結局3曲も歌った。
しかしそれだけでは国王の気は収まらなかった。
彼は是非彼女の歌を国民にも聴かせたいと言い始めたのだ。
フェミュールは週に1度、国営ラジオで歌うことになった。