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episode 2

フェミュールの村は国外れにあった。

ワインが名産の、一面ブドウ園の村だ。

フェミュールの家もまたブドウ農家で、よその村から来た従業員たちと一緒に彼女もブドウの収穫をした。

彼女が14の少女に育った頃、村は少し騒ぎになっていた。

この村とワインの直輸入を契約している、首都に住む貴族の主人が訪問することになったからだ。

村人たちは誰もが貴族の噂話をし始めた。

その話はフェミュールの耳にも入っていた。

「王様の親戚の方だそうだ。」

「少し性格が悪いらしい。」

「欲しいものはどんなものでも手に入れたがるんだそうだ。」

聞こえてくる貴族の話は、どれも嫉妬の混ざった悪い評判ばかりだった。

そしてそれに混じって聞こえてくるのは、その貴族の一人息子の話。

「あそこの息子は生まれたときからS級らしい。」

S級とはこの国にあるランク制のトップにある位のことで、国王よりも上のくらいになる。

国王はA級なのだ。

S級は国民の中からわずか1パーセントしか生まれてこないと言われる存在。

彼らにはどんな職業にもなれる権利を与えられ、彼らと子を作れば高い位を持つ子が生まれるから人気も高い。。

魔力の弱い者はどれほど頑張ってもB級が限界だ。

S級は生まれながらか、A級の者が努力して手に入れるしか不可能な位。

とても珍しく高貴な、皆が憧れる立場なのだ。

そんなS級には彼らにしか就くことを許されない職業があった。

この職こそが皆の憧れの要因だった。

その職とは“魔導士”。

他人の魔力を公平な立場から見極めて、位を決定する最高権力者だ。

また、未来予測をして国の危機を予言し、回避に努めるのもまた仕事の一つだった。

賄賂わいろなどはもちろんのことながら許されず、性格をB級に位置する最高権威の医者に分析させ、バランスよく5人組のチームに分けられる。

万が一賄賂を受け取った場合、その人物には死刑が言い渡される。

研究や未来予測、魔力審査など、仕事の全ては決められた5人のチームで行い、他チームと意見を出し合ってまとめた結果を国王に報告するというような仕組みだそうだ。

最高権力者になる権利を与えられ、人生を自由に生きる権利があって、生まれ落ちた家が国王親族の貴族の家となると、大人も子どもも思うことは一つだった。

“あわよくば、娘が見初められないだろうか”—————。

フェミュールは顔も知らぬ彼を哀れだと思った。

そして、自分は決して貴族やその息子の噂話には参加しようとはしなかった。


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