閑話:ある受付嬢の憂鬱
来た。また来た……。
何で何時も何時も私なわけ? 空いてる所があるんだからそこに行きなさいよ……。何で入り口でずっと待ってんのよ……。
私あなたに何かした? なんで何時もそんなに睨むの?
なに? 私の注意が気に入らない?
だったら他所に行きなさいよ! 何処に行っても同じ事を言われるわよ!
採集物はことごとくミンチにするし、バキバキに折れて何の牙だか骨だか分らなくなった物をよくもまあ臆面もなくあんな偉そうに……。
私じゃなかったら突き返されるところよ!
どれだけ苦労してあのミンチで依頼人を納得させてると思ってんのよ! だいたい、何で全部ゴーレムにやらせようとするわけ? あんな丸太みたいな指もない手で出来る訳無いでしょ? あなたのその手と指は飾りですか?
ローレンスさんももっとガツンと言えば良いのに!
……まぁ、立場上難しいのは分るけど、次期当主なんでしょ? そのままだとその子、正真正銘の暴君になるわよ?
それにひきかえ―――隣に登録に来てた中性的な美少年は素晴らしいわ。初々しくて、目なんかキラキラ輝かせちゃって。早く唾付けとかないと……。
あの艶々の髪なんて女の子みたい。……もしかして女の子なのかしら?最初の内は男のフリをする人も居るみたいだし。――まぁ、どうでもいいわ。私はどっちもいける口よ。
ニーナも澄ました顔で対応してるけど、口元がにやけてるわよ?
はぁーあ、この子には報酬渡してとっととお引き取り願いましょ。
それにしてもあの美少年はいいわぁ……そこのクソゴーレム共、私と代わりなさいよ。
どぎまぎしちゃって、もしかしてゴーレムに話し掛けようとしてるの? 無駄よ。話ならお姉さんがベッドの上で体にたっぷり聞いてあげるわ。
あら、あなたはお帰りですか?
……自分で歩くようになっただけ多少は進歩してるのかしら? 前はいつもゴーレムに抱っこさせて自分では歩くことすらしてなかったし……。
次はゴーレムを外で待機させることを覚えなさい。
床は痛むし、あちこちぶつけて塗料を付けていくし、落すの大変なんだから!
――あらあら、ニーナの渾身のアピールはスカね。いつもはあちらにって言うだけなのに、わざわざカウンターから乗り出して……。その貧相な谷間を見せ付けたつもりなのかしら? まぁ、あたなにしてはよく頑張ったわ。後は私がやるから、あなたは手を引きなさい。
さてと――、このミンチは……またバレットさんに泣いて貰おうかしら。この間さりげなくお尻触ってきたし。こっちのよく分らないのも焼けば薬草園の肥料ぐらいにはなるでしょ。
シフトも変えないとね。ニーナと休みが被らないようにしないと……。新人は登録をした受付に通う傾向があるからね。ニーナが休みの間に私の所に通うようにしてみせるわ――
ちょっと! あんた握手なんてした事ないじゃない! 職権乱用よ! 羨ましい……。
フン! 見てなさい! あの子を射止めるのは私よ。
さて……と、クソガキにも出来る依頼も見繕わないと――
2016/07/07… 2017/07/19改行等修正