魔法の乾電池
ひょんな事から、うちに住み着いた獣人のクルガ。
彼は好奇心旺盛で色々な知識を吸収していった。
言葉もここに来るまでの間に覚えてしまったという。
「人間にはここに来るまでの間に色々と助けられた」
「そうなんだ」
服も立ち寄った村で貰ったらしい。
俺はクルガと話しながら『闇の触手』で彼を洗っていく。
「ふう、綺麗になった」
「人間は匂いを気にしすぎだ」
クルガは不満そうにそう言うが、気持ちは良かったようだ。
町を散歩してくると言うクルガを見送り、俺は魔法の乾電池の作成に取りかかることにした。
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俺は材料を持って薬屋のディックの店を訪れる。
「ようカツ、揃ったのか?」
「ああ」
手頃な大きさの陶器の小瓶に底から口に向かって金属の棒を貫通させる。
そして、様々な素材を層になるように入れていく。
最後に口を塞いで準備は終わった。
手に金属の棒の刺さった小瓶を握り、本番とも言える本に書かれた呪文を唱える。
魔力こそ尽きないが、凄まじい魔力が使われているのが俺にも分かる程だった。
それはディックにも分かるようだった。
「すげえな」
「ああ、これは普及しない訳だな」
「いや、カツの魔力だよ。どんだけあるんだ?」
「さあ?」
魔法の発動が終わると、見た目は変化のない小瓶を眺める。
「これで完成かな?」
「どうなんだろうな?」
「魔力流してみるか」
「おう、気をつけろよ」
俺は小瓶に意識を集中させて魔力を流し込むイメージを作る。
小瓶に魔力が流れ込む......。
さっきの呪文を使った時以上の魔力が流れ込んでも、未だ小瓶が一杯になった感覚はない。
結局、呪文の時の倍近い魔力を流し込んだ所で小瓶が一杯になった感覚が返ってきた。
『魔力蓄積器』が完成した瞬間だった。
動力を確保したら、次は魔法道具を取り出す。
俺からすると、こっちの方が作るのは楽しかった。
『魔導工学』の本に載っていた魔法陣を刻んだ金のプレート。
それを金の配線で繋いだものを納めた木の箱。
その仕組みは電気回路に似ていた。
金の配線は試行錯誤の結果、右腕にイメージした溝に『火の魔法』で溶かした金を流すことで、均一の太さの配線を作ることに成功した。
かなりの熱に『氷の魔法』も同時使用しての作業だった。
俺は本に載っていた物に独自の改良を加えて、ON・OFFのスイッチと冷・暖・送風の切り替えスイッチを付けた。
風の出口には木製の羽根を付けて、風の方向を拡散させるように工夫してある。
『魔力蓄積器』を所定の位置にはめ込み、スイッチに手を掛ける。
緊張の一瞬だ。
俺もディックも手に汗を握っていた。
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「これは、すごいな。天国だ」
「ああ、いい物だろ」
「ああ。カツの居た国ではこれが普通だったんだろ?」
「まあな」
俺とディックは冷風に当たりながら話していた。
ディックは会話の中で、俺が何処か違う世界から来た人間だと言うことは分かっているようだった。
あえて違う国と言うのは彼なりの気遣いなのだろう。
「しばらく使って見てくれないか?」
「いいのか?」
「ああ、どのぐらいで『魔力蓄積器』が空になるのかも知りたいから、記録は付けてくれよ」
「おう、任せておけ」
「ちなみに、価値はどのぐらいになると思う?」
「......3、いや5でも行けるだろ」
「金貨50枚か、悪くないな」
「いやいや、白金貨だよ」
「......まじかよ」
「そりゃそうだろ。これってお前しか作れないんだぜ」
消費する魔力を考えたら確かにそうだろう。
数人で魔力を流すという方法もあるかもしれないが、それでも難しいと言えるほどの魔力が必要になる。
ちなみにマジックタートル1匹から『魔力蓄積器』10個分の量が確保出来た。
俺はその後、もう一つ魔法のエアコンを作った。
暑さに苦しむ衛兵への為だ。




