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私は幻想入りしました。

作者: 梨

・色々詰め込んだら、大好きな魔理沙要素が少なくなっていました。

・キャラ崩壊注意です。

・この小説は、上海アリス幻楽団様制作の東方プロジェクトの二次創作です。

あれ…私、何をしていたんだろう。

目が覚めた。もっとも、眠る前にどこにいたかは覚えていないけれど。視界がボヤけて、ほとんど何も見えないけれど、真っ赤な大きいモノは見えた。声が聞こえる。

「あなた、どうしたの?」

「お嬢様…この者は、少し体調不良に見えるのですが」

「私の喘息よりマシではないかしら」

「パチュリー様、ご無理をなさらないで下さい。わざわざお外に出てくるなんて…」

「ねえ、咲夜。お腹すいてるんじゃない、この人?」

「いきなり門の前に倒れているのですから、お腹くらいすいているのでは?私が居眠りしている間に、こんな人が来訪してくるとは」

目の前で、会話がなされている。少し経つと、目がよく見えるようになっていた。独特な服装をした人たちがいる。その中で一番偉そうに構えていた女の子が言った。微笑んでいたが、目の奥には鋭い何かが宿っていた。

「あなた、大丈夫?いつもはこんなことしないのだけれど、あなたは初めて幻想郷に来たみたいだし、この館で休ませてあげるわ。感謝しなさい。ほら、咲夜」

女の子がそう声をかけると、紺色のメイド服を着た背の高い女性が私の手を引いて立たせた。

「お嬢様、お任せ下さい。…歩けるかしら」

その言葉を聞いて、口を突いて出た声は、

「あ、ありがとうございます」

だった。

「それじゃ、私達は先に戻るわね。ゆっくり歩いてあげなさいよ」

女の子をはじめ、数人の人は空を飛んで、紅い館に消えた。緑のチャイナ服を着た女性は、門の前に立って動かなくなった。空を飛んだりするのに静かに驚いていた私は、メイド服を着た女性に手を引っ張られて我にかえった。

「さあ、私達も行きましょう?」

「え、あ、はい!」

館の部屋に向かう途中、その人は色々な話をしてくれた。なにしろ館が広いのだ。話す時間はたっぷりあり、すぐに馴染んだ私はたくさんの話をきくことができた。まず、女性の名前が十六夜咲夜だということや、ここに住んでいる人の名前、レミリアさんやフランドールさんは見かけによらず高年齢だということ、この幻想郷という世界では、ほとんど誰もが特別な能力を持っているということ…私が貸してもらえる部屋についた時、咲夜さんはこう言った。

「幻想入りした人は、誰でも能力が使えるようになっています。また、前までいた世界の記憶は残りません。あなたも、自分の能力を探してみてはいかがでしょうか?ちょうど良い暇つぶしになるでしょう。…そうね、しばらくしたら、上の階のテラスにいらっしゃいな。お茶を淹れてあげるから、お嬢様や妹様とお話しなさい。自分の能力が分かるかもしれないですよ。では」

咲夜さんはたんたんと言って消えた。そういえば、咲夜さんの能力は時間を操る程度の能力だったっけ…。

しばらく部屋を見回したり、服装を整えていたりしていると、約束の時間が近づいてきた。部屋に落ち着いて気分がスッキリした私は、クローゼットを覗いて綺麗なドレスを着、咲夜さんの説明してくれた道順でテラスに向かった。


少女移動中ーーー


テラスに着くと、机にさしたパラソルの陰から真っ赤な夕日が見えた。この館にずっといると、赤色が好きになってくるから不思議だ。夕日に見惚れていると、後ろから声がした。咲夜を着けたレミリアの声だ。振り向いて話を聞く。

「あら、早いわね。…あなたのことはなんて呼んだらいいかしら?私はネーミングセンス無いから、咲夜、決めてくれる?」

レミリアが咲夜の顔を伺った。私は前の世界での自分の名前を覚えていない。それがおかしくて、ちょっとにやけてしまった。

「お任せ下さい。ええと…そうですね。耀華ようかはどうでしょう?輝く花という意味ですよ。もちろん、あなたが気に入ればだけど」

気に入った。にっこりと、私なりのいい笑顔で答える。

「とても気に入りました。これからその名前で過ごしますね。ああ、あと…立派な部屋とかドレスもありがとうございます」

この言葉に頷くとレミリアが咲夜に何かを囁いた。咲夜は一瞬で何処かに消えた。レミリアはそれを見届け、改まったように言った。

「耀華の姿…その…とっても綺麗よ。咲夜の服選びのセンスもあるだろうけど、こういう服はもともと美しい人でないと似合わないものね」

私の身につけているドレスは、オレンジ色の軽いレース生地を何枚も重ね、襟の部分には控えめなデザインのフリルがあしらってあるという、見た目的には高級なものだ。優しい風が吹き、ドレスの裾が舞い踊った。この時のレミリアの笑顔で、私達は親友になった。…それからしばらくして。レミリアと夕日を眺めながら、上品な話に花を咲かせていると、急に咲夜が現れた。そばには可愛い金髪の女の子…フランドールがいた。

「連れてきましたわ、お嬢様。妹様、お茶の時間です。耀華、この方は、レミリアお嬢様の妹君、フランドール様です」

咲夜がそっとフランドールを押しやると、フランドールはいい笑顔でおしゃべりをはじめた。

「こんにちは、耀華。私はレミリアお姉様の妹、フランドール・スカーレットよ。名前が長いから、フランって呼んでね。咲夜から話を聞いたのだけれど、耀華ってまだ、自分の能力を知らないんだよね?一緒に探しましょう。能力がわかったら、楽しく遊べるね!」

レミリアが愛おしそうにフランを見つめて言った。

「フラン、あまり耀華を振り回してはいけないわよ。あなたの本気は並じゃないから。それと咲夜。耀華は私の親友になったのだから、丁寧に呼びなさいね」

咲夜はいたずらっぽく微笑み、答えた。

「わかりましたわ、お嬢様。どうぞ、先ほどまでのご無礼をお許しください耀華様」

それから、堪えきれずに、朗らかな声で笑った。台所やホール、図書館のある場所を教えてもらったり、自分の覚えている限りのことを話したり…幸せな夕暮れの時間が過ぎていった。そして、暗くなった時。

「もうこんな時間だし、あなたはそろそろ部屋に戻った方がいいわ。咲夜も休みなさい」

私はきょとんとしてレミリアを見つめた。

「レミリアとフランはまだここにいるのかしら?」

フランは綺麗な羽を動かしながら無邪気に答えた。

「私達は吸血鬼でしょう。耀華や咲夜みたいな人間と違って、夜にテンションが上がるのよ。昼でも起きてはいられるけど、たまに妖力が落ちちゃうの」

「そう。じゃあ、先に部屋へ戻らせて貰うわね。ありがとう」

私は軽くお辞儀をして、テラスを後にした。咲夜は私と違う方向に歩いていった。

少し歩いて部屋に着くと、私はドレスを脱いで、丁寧にたたんだ。

「お風呂、入ってなかった」

1人がほんの少し寂しくて、口にだして呟いた。急いで寝巻き(らしきもの。すごく豪華な服だから、着るのに戸惑った)を身につけると、廊下に飛び出して、小走りで浴場に向かった。


少女休憩中ーーー


体が温まって気分も落ち着き、お風呂から上がって廊下を歩いていると、そばの部屋から声が聞こえてきた。レミリアと、フランの声だ。

「お姉様、あの耀華って子、すごく可愛いわね」

「私の親友になるような子ですもの。お客様だから、大切にしてあげましょうね」

「お姉様、あの子の能力、私わかったような気がするわ」

私ははっとして、ドアの前を離れた。まだ自分の能力を知らないということを今思い出した。たとえ根拠のない予想だとしても、能力がわかる瞬間はお楽しみにしておきたい。私は部屋に戻ると、ベッドに倒れこんだ。


少女就寝中ーーー


夢を見た。レミリアが私の顔を覗きこみ、囁く。

「耀華、私は運命を操ることが出来るの。夢というものは、人の運命を表すものだから、私は夢を少しだけ操ることができるわ。そこで、あなたに話があるの。さっきフランと話していたの。フランがあなたの能力、わかったみたいよ。話すと長くなるから、明日食卓で色々教えるわ。私は少しの間しか夢に立ち入ることが出来ないから…。じゃあ、おやすみなさい」

そういってレミリアは消え、私の目にはなにも映らなくなり、意識が遠くなっていった…


少女再就寝中ーーー


翌朝目が覚めると、部屋の小さな窓からは爽やかな光が降り注いでいた。私は昨晩の夢を思い出し、急いでドレスに着替えた。なんとなく気になる。咲夜が早朝に用意してくれたのか、ドレスのデザインは変わっており、赤いフリルをあしらったちょうちん袖に、胸には小さな宝石が付いているという、これまた私好みの代物だった。でも、ずっとドレスに見惚れているわけにはいかない。寝ぐせがついた髪を軽く整えるとクローゼットの横にあったパンプスを履き、私は大広間に走った。


少女移動中ーーー


赤色の扉を開け、私は大広間に足を踏み入れた。金の燭台に乗ったロウソクに火はついていなかったが、大きな薔薇の形をした窓から、朝の光が差し込んでいる。レミリアは、広間の奥の玉座に優雅に座っていた。太陽の光は苦手なので、どんな仕組みなのか、そこだけ薄暗かった。

「おはよう、耀華」

レミリアが玉座を立つと、薄暗い部分もそれに合わせて移動した。レミリアの後ろに立っていた咲夜も微笑んであいさつをしてくれた。

「耀華様、お目覚めはいかがでしょうか?今日も一日、頑張って下さいね」

レミリアが私の手をとって真剣な表情になった。

「さあ、昨晩夢の中で話した、能力のことを教えるわ」

私もつられて真面目な顔で頷き、レミリアが指し示した席に座ってあたりを見回すと、いつの間にか、紅魔館の住人全員が集まっていた。レミリアがゆったりと話し出す。

「耀華。唐突かもしれないけれど、あなたの能力を教えるわ。あなたの能力は、『幸せなひと時を操る程度の能力』よ。あなたのこの能力は特別よ。そうよね、パチェ?」

私は初めてパチュリーの声を聞いた。澄んだ美しい声。

「ええ、そうよ。耀華、あなたにこれを説明するには…まず、そうね。幻想郷が、博麗神社という社から放出される、強力な結界で外界から切り離されているということから説明しましょう。この世界は結界の威力によって外界からは見えないようになっているの。もし、この結界が一部でも壊れたら、外の世界の大気や広さに負け、幻想郷は崩壊してしまうわ」

パチュリーはここで一旦話を区切り、手元の紅茶を一口飲んだ。

「そこで、この大切な結界を守っているのが博麗の巫女…博麗 霊夢よ。でも、この人は感情の起伏が激しくて、気分がマイナスの方向…つまり、極度の怒りや嘆きの感情が高まると、結界の維持が出来なくなってしまうの。だから、この能力を持ったからにはあなたは霊夢を幸せな状態に保たなければならないということよ」

私の背中が緊張した。その霊夢という人がどんな人なのかはわからないけれど、とりあえず博麗神社に行ってみる必要がありそうだ。

レミリアが言った。

「一応、人を幸福にすることが出来るウサギはいるのだけれど。でも、その子は妖力が弱すぎるのよ。あなたは人間としては、とても強力な力を持っているわ。じゃあ、博麗神社に行ってきなさい。紫、いるかしら?」

なにも無い空間に、紫色の裂け目が出来、そこから日傘をさした女性が現れた。

「おはよう、耀華。あなたの話は、レミリアから聞いているわ。私の能力は、『境界を操る程度の能力』。この能力を使って、博麗神社へ行きましょう。あなた程の妖力なら、ものすごい速さで空を飛べるでしょうけど、今は急ぎの用事よ。ほら、ここに入って…」


少女移動中ーーー


「さあ、外に出なさい。ここが博麗神社よ。霊夢の仕事は結界の維持の他に、掃除や参拝客の接待などがあるの。異変解決というのもあるけど、滅多に起こらないわ。基本的な仕事を手伝ってあげるときっと喜ぶわ、あの人は…。いってらっしゃい」

紫に言われて私は隙間から飛び出した。すると、目の前に紅白の巫女服を着た女性が立っていた。この人が霊夢だろうか。

「あんたのことは色々な人から聞いているわ。というか、幻想郷中の全員があんたのことを知ってるわよ。…じゃあ、早速仕事に取り掛かってもらおうかしら?ああ、その前に。紫、いつまでそこにいるつもり?」

紫はぼんやりとした声で言った。

「霊夢ぅ。私、今日はなにもすること無いのよぉ。耀華はここに送り届けちゃったし…。お茶くらい出しなさい!」

「お賽銭、入れてくれるならいいわよ」

霊夢はめんどくさそうに答えた。紫は答えず、隙間に消えた。

「妖怪の賢者ともあろう者が…そうね。耀華、最初は私の手伝いをしてくれる?」

仕事を手伝われることが、霊夢にとっての幸せなのだろうか。でも、私は心から不満を覚えなかった。幻想郷を維持する為には私も頑張らないと!

「霊夢さんの幸せな時間作り、お手伝いさせていただきますね」

霊夢が微笑んだ。

「ほら、この巫女服を着なさい。ドレスでは動きにくいでしょう」


少女仕事中ーーー


夕方になり、仕事が終わった。さすがにこき使われることは無かったけど、巫女の仕事は大変だった。参拝客が全く来なかったので接待は無かったが、その分呼び寄せがあった。掃除や霊夢のお茶の用意などもあった。夜ご飯を食べている時、ちゃぶ台の向かいにいた霊夢が話しかけてきた。

「私、見てるとわかるのだけれどね。あなたはとてつもなく大きな妖力を持っているわ。修行次第では、幻想郷で5本の指に入る程強くなれるわ」

私は驚いて、箸に挟んであったお刺身を落としそうになった。

「ええ、でも…5本の指に入るなんて、ありえません。所詮私は外の世界から来た人間です。こんな私が」

私が言うと、霊夢は首を振った。

「この幻想郷の物や人、全てが外の世界から来たものよ。あんたがなんと言おうと、明日から修行を始めるからね!」

こうして、私は博麗神社と紅魔館、どちらも自宅になり、修行と仕事と休日、三つの日常を持つことになった。修行の日と仕事の日は博麗神社で、休日は紅魔館で過ごす。そんな毎日を過ごしているうちに、幻想郷の住人とも仲良くなった。

…修行のある日。私は、うまく弾幕技を撃てるようになり、スペルカードもいくつか覚えていた。そして霊夢と弾幕ごっこで修行をしている時のことだった。ふいに私の目の前に隙間が出来て、紫が首を出した。

「久しぶりね、耀華、霊夢。異変が起こったわ」

霊夢が即座に反応した。

「どんな?」

紫は眉を潜めて話した。

「地底で、変な妖怪が湧き続けているの。主犯はメディスン・メランコリーよ」

霊夢は慌てたように言った。

「メディスンが?あの妖怪は、普通に暮らしていたでしょう。確かに人間を憎んではいたけど…」

「耀華が…耀華がここに来たからよ。幻想郷に人間が増えた為に、メディスンを筆頭として、人間を憎んでいた妖怪が動きはじめたのよ」

霊夢が唇を噛み締めた。

「わかったわ。異変解決に行きましょう…耀華が」

「ほえ?」

一瞬なにを言われたかわからなかった。私単独で妖怪退治に行く?

「耀華。これも修行の一環よ。それに、事の発端はあんたなの」

紫に心の中で助けを求めたけれど、なにも言ってもらえなかった。もう断れない。私の心は決まった。

「わかりました。行ってきます」

「気をつけなさい。これは弾幕ごっこではないわ。弾幕よ」

霊夢に地底の入口を教えてもらい、私は飛び立った。


少女移動中ーーー


地底の穴が見えてくると、それと同時に、穴の周りに集まっているやじうまの妖怪達も見えてきた。見つかると色々言われて決心が鈍りそうだったので、その妖怪達に姿を紛れさせてそっと飛び下りた。


少女降下中ーーー


しばらく行くと、前から話には聞かされてきた地霊殿が見えてきた。どうやらその内部で妖怪が湧いているらしく、大きな不協和音が響いていた。大きな扉を開け、用心しながら中に入ると、足元で声が聞こえた。

「人間の娘!確かこの娘は、博麗神社で修行を受けていた人間ね?」

見下ろすと、小さな妖怪が騒ぎ立てていた。…生き人形だ。足元だけではない。廊下や、開きかけたドアの隙間からも大量の姿が見えた。私は深呼吸をした。

「異変解決に来たわ!あなた達、まとめて相手してあげる!」

その一言で人形達は私に向かって来た。

だが、飛ぶ速さも弾幕技の力もこっちが上。寄ってくる小さな妖怪を吹き飛ばしながら、私は館の奥に向かった。異変の主犯を…メディスンを倒さなければ。


少女戦闘中ーーー


人形達をあらかた吹っ飛ばすと、私は一番奥の部屋の前にいた。扉に耳をつけても音がほとんど聞こえないので、人形はいないらしいとわかった。それでも警戒を解かずに扉を開けると…金髪で頭にリボンを結んだ背の低い女の子が、玉座へ座っていた。その妖怪があいさつをした。

「こんにちは。異変解決に来たの?」

いきなり弾幕が始まると思っていた私は、少し拍子抜けして言った。

「妖怪が湧くのをやめて欲しいのだけれど」

妖怪は、狂ったように笑った。

「嫌よ。そんなすぐにやめるくらいなら、最初から湧かせていないじゃない。人間は愚かで無価値で、無意味。存在する意味が無いのよ。だから、私は人間を滅ぼそうとした。でも、今までいた人間達の力は強すぎたの。そこにあなたが来た。私は聞いたわ。今の幻想郷は、あなたがいなくなれば少しずつ消滅していき、人間は…変化に耐えられなくて死ぬと。だからあなたを倒そうとしたのよ。でも、私が操った人形は弱すぎたみたいね。まあ、あなたの運もここまでよ」

私の後ろで扉が開き、声がした。

「あら、お客様?残念ながら、ここでは人間のお客様は歓迎できないの」

メディスンと共に親しくなれなかった妖怪の一人、風見幽香だ。いきなり弾幕が始まった。最初は驚いたが、出来るだけ手っ取り早く終わらせたい。最初からスペルカードを使うことにした。


輝符 輝く華と死のワルツ


当たらない。避けられているのではなく、技が二人の身体をすり抜けているのだ。私は弾を撃ちながら叫んだ。

「どうして⁉どうして当たらないのッ」

メディスンが狂笑した。

「私の能力よ。人形を操って、私達の身代わりになってもらっているのよ」

大広間の床に、壊れた人形の靴が転がった。

「これじゃ…勝てない…」

その人形の靴と一緒に、私は赤い絨毯の上に座り込んだ。それを見た幽香が、日傘に光線を集め、私を狙った。

「本当はもう少し楽しみたかったのだけれど…ここまでかしらね」

白い光が私を包み…そして、消えた。硬くつぶっていた目を少しずつ開けると、心から驚いたメディスンと幽香がいた。後ろであきれたような声が聞こえる。

「全く…修行にもならなかったわね」

「…とにかく、無事で良かったわ」

霊夢と紫の声だ。

「なんでここに…」

霊夢が私に手を差し出し、立たせてくれた。

「あら。心の中で助けを求めたのは、あなたでしょう?私の勘をなめてもらっては困るわね…」

「ふふふ。それに、霊夢と私だけではないわよ」

聞き慣れた、幻想郷の住民の声が響いた。

「耀華!こんな面白そうなこと、独り占めするつもり?」

ハッとして振り向くと、そこにはレミリアを筆頭に、幻想郷の住民達が勢ぞろいしていた。

「久しぶりに地底に来たZ☆E」

「耀華様、おけがなどはございませんか?」

「今日は門番の仕事を休んで来ましたよ!」

「そこのお姉さん達!今からやっつけてやるー!」

「喘息の症状が良くなったのよ。それでなきゃこなかったわ」

「パチュリー様、ご無理をなさらず…」

「最強のあたいに任せれば安心だよ!」

「あわわ…危ないよ、チルノちゃん!」

「わはー。なんか知らないけど、戦うぞー」

「まだご飯食べてないのよぉ。力が出ない…」

「この桜楼剣に切れないものは、絆だけですから」

「私たちの家を盗むだなんて、恥知らずなことを…」

「あれぇ、この人達だあれ?」

「こいし様…あたいらは、この館を追い出されたんですよ」

「うにゅ?今どういう状況?」

みんなが一気にしゃべるので、何を言っているのかわからない。それでも、嬉しくて、頼もしくて、涙が噴水の様に溢れてきた。それを見た霊夢が、私の肩に手を優しく置いた。

「ふふふ。みんな助けにきてくれて嬉しいのはわかるわ。でもね、これはどんな場合であろうとあんたの戦いなのよ。だから…だから、あんたが指揮をとりなさい」

私は迷わなかった。顔を温めた涙が止まった。

「さあ。反撃開始よ!!」

幽香はしかめっ面で首を振っていたが、メディスンは食い下がった。

「いいわ!あなた達がいくら多くたって、こっちは無限に人形が作れ…って、あら!?」

メディスンが人形を作る度に、陶器で出来た靴やドレスが粉々になって飛び散った。

「な、な、なんてこと…?」

幽香はさっさと大広間から出ていった。

「ちょ、ちょっと幽香!?あなたどういうつもり!?それに、なんで人形が…」

幽香は廊下を歩きかけて止まった。

「ほら。もう勝ち目は無いわ。私、負け戦はしない性分なのよ。ああ、でも、今私を追いかけてきたら殺すわよ。あなたが私を誘ったんだし、その責任はとってもらわなくてはね」

幽香が指差した先には、右手を握りしめたフランが笑顔で立っていた。

「キャハハハッ!とっても面白い遊びね!」

その言葉を合図にしたように、全員のスペルカードが発動した。


耀華:輝符 ライトミュージックフラワーズ


霊夢:夢戦 幻想ノ月


紫:廃線 ぶらり廃駅下車の旅


魔理沙:星符 オカルテイション


レミリア:獄符 千本の針の山


咲夜:メイド秘技 操りドール


美鈴:虹符 彩虹の風鈴


フラン:禁忌 カゴメカゴメ


パチュリー:火水木金土符 賢者の石


小悪魔:獄符 リトルネザーデーモン


チルノ:氷王 フロストキング


大妖精:祈符 エレメンタルプレイヤー


ルーミア:闇符 デマーケイション


幽々子:亡舞 生者必滅の理 -毒蛾-


妖夢:妄執剣 修羅の血


さとり:想起 波と粒の境界


こいし:無意識 弾幕のロールシャッハ


お燐:猫符 怨霊猫乱歩


お空:核熱 核反応制御不能


メディスンはダメもとでスペルカードを撃ってきた。


毒符 ポイズンプレス


だけど、こっちの威力に敵うわけがない。結局、白い煙が晴れた広間には、服がボロボロのメディスンが座り込んでいた。霊夢がそれを見て、勝ち誇った様に言う。

「ほら、見なさい、メディスン。耀華の力を甘く見てはいけないわよ」

メディスンは首を振った。

「いいえ。いつか必ず、あなた達を皆殺しにしてみせるわ。…その時が来るまで、おとなしくしているから」

そう言って館から出ていく後ろ姿を見送った文がカメラを構えた。

「異変解決、おめでとうございます!ほら、みんなで写真撮りましょうよぉ〜…」

幸せだった。初めての異変解決。霊夢も褒めてくれた。

「確かに助けを借りたけど、結局勝ったのはあんただものね。よくやったわ」

その時、私におずおずと話しかけてくる妖怪がいた。さとりだ。

「あの〜。言いにくいことなんですけど…いえ、私も確かにスペルカードを使った一人なんですけど…あれ…なんとかしてくれませんか…?」

さとりが指差した先には、立ちつくす地霊殿の住民達。その目線の先には、床や天井の崩れた館があった。












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― 新着の感想 ―
[良い点] 幻想入り死ね [気になる点] 幻想入りファック [一言] 殺す
2016/12/30 20:05 幻想入りファック
[良い点] いいと思います! [気になる点] 改行などを使ったら見やすくなりますよ! [一言] 魔理沙ぁ!可愛いよ!
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