人工知能がパブリックAIとなることは雨上がりの森の妖精のささやきから・・・
あなたの未来はあなたが何も考えていなくても次の瞬間にある
セントラルパークの昼下がり。
MaryとLanaは水辺の芝生に横たわっていた。
穏やかな日差しの中、誰もが思い思いのスタイルでくつろぐ。
散歩する家族、ジョギングをしている女性、ベンチに腰掛ける老夫婦。
ただ、
昔と違うのは誰もがウエアラブル(身に着ける)端末をどこかに身に付けていること。
2012年から公開された近未来小説「Neo Border」。
やがてスマホなどのモバイル機器とリンクする外部周辺機器が研究開発が加速する2013年。
2014年にはグーグルグラスなど様々なウエアラブルが発表発売された。
2015年には人工知能の憂慮で幕を開け、クラウドAIが頭角を現すと
2016年にはニューラル・ネットワークを超える。
その中で、一部のヒューマンウエアラブル販売の発売を急ぐ経営陣と、
特異領域の対ヒューマンシステム構築の必要性を唱える一部の開発チームが決裂し、
それら離反したブレーンが参加した企業による新しいシステムが、
数年後のこの公園の中にあふれている。
ウエアラブル端末に搭載された"守護妖精システム"である
これはアプリに似ていて、スマホなどのモバイル機器などから立体映像の妖精が現れ、オーナー(所有者)の様々なライフサポートをするシステム。
既存のクラウド型AIによるシステムとは一線を画すこのシステムについてはいずれ開発者から語られる
"守護妖精システム"の妖精はその特質上、多くのコミュニケーションは会話によって行われる。
触れることができるマスコットタイプもあるが、やはり妖精は自由に飛びまわるイメージがあることから、
ユーザーにおいては高機能な立体映像での使用が大半を占める。
そして今、
人々がこのシステムを活用することによって、スマホなどのモバイル機器の中に妖精が宿ることになった。
Mary
「ねえ、Lana。"守護妖精システム"ってなんだろう?」
Lana
「え!どうしたの、どこか調子が悪いの?」
Mary
「もぉう、まじめに聞いて」
Lana
「ごめんごめん、でも新しいカフェのマカロンの話から急にそんな話するからびっくりしちゃった」
Mary
「うん。実は昨日プレゼンの情報を集めていたとき、昔の事故や事件の記事が出てきて、読んでいるうちに、
もしこの時代に"守護妖精システム"があったらどうなっていたのだろうって思ったの。
そして、じゃあ今の私たちが"守護妖精システム"を手にして、得たものは?そして失ったものは?
たしかに私たちが"守護妖精システム"を受け入れて、日々の生活がスマートに送れて、 最近いじめや犯罪、争い事が格段に少なくなり、世界が変わり始めた。これは誰もが感じている」
Lana
「そうね~、はじめはほとんどの人が"守護妖精システム"はモーニングコールや、スケジュールを知らせてくれるなど、生活のサポートはもちろんだけど、
まったくこれまでにないコミュニケーションの拡大、仕事や趣味、娯楽のサポートなどを漠然とイメージしていたわね。
もちろんそれも大きなスキルだけど、本当は犯罪や、事故などからオーナーの命を守ることが最大のコマンドだったことが、
開発者のレポートから見つけられた時は、世界中が驚いた。」
Mary
「いろいろな記事の中で、広場で遊んでいた男の子たちがあっという間に爆弾の被害にあうこともあれば、
小さな子供たちや女の子が誘拐されたり、命を奪われる事件が世界のどこかで毎日のようにおこっていた。
中には何の理由も無く何百人の人たちが空に散っていったこともあった。
だけどもし、この時代に"守護妖精システム"があったなら、爆弾が爆発する前に逃げることも、
犯罪を未然に察知し迅速に対応すること、
相手の精神状態の把握からの危険回避行動なんかも、このシステムでなんとか、なんとかできたんじゃないかなって・・・
それに、ほかにもたくさんたくさん悲しいことがあった・・・」
Lana
「ちょっとちょっとMary、どうしちゃったの、そのきれいな瞳が潤んじゃってるじゃない。
もう・・・大丈夫!大丈夫よ。
これからは妖精さんがみんなを守ってくれるわ。・・・きっと」
Mary
「うん、うん。ちょっと今日は変だな。へへ」
Lana
「(優しく微笑みながら)・・・そんな日もあるわ。・・・だって人間だもの」
Lana
「あ、Nathanが予定通りにもうすぐここに来るわよ。
しかし、よくもまあいつも同じ時間に同じ場所に現れるわね。ジョギングってジャパニーズトレインって呼ばれてる?」
Mary
「わかったわかったから。ごめん」
Lana
「はいはい、邪魔者は消えましょうね。」
「でも、電源落としは無しよ。見ざる言わざる聞かざるは守りますから」
Mary
「わかってるって。じゃあ後でね。・・・それと話を聞いてくれてありがとう」
その言葉を受け取り、優しく微笑みながら小さく手を振ってLanaはスマホ(モバイル端末)の中に消えていった。
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Nathan
「やあ、Mary!今日も来ていたんだね!元気だった?あえてサイコーにうれしいよ!神様ありがとう!」
よく冷えたミネラルウォーターとジンジャー
甘すぎないマカロン
そしてうれしそうに微笑むMaryと
あなたの過去はあなたが何も覚えていなくても前の瞬間にあった