第七話 森での出会い
回想編(といっても三日前ですが)です。
今日は俺の祝福の儀式から十日後、すなわちクレアの誕生日だ。
今日の夕方から祝福の儀式が行われるため、まだ昼過ぎなのではあるがクレアは着替えのために連れ去られてしまった。
着替えのためにそこまで時間がかかるって言うのはすごいねぇ。
さて、それはおいておくとして、現在俺はクレアの誕生日プレゼントを作成している。
本来はもっと前に完成させたかったのだが、何にすればいいのか悩んでしまってなかなか進まなかったのだ。
結局俺は森の中でなにかアイデアを探しに出かけたのだが、その途中で面白い物を見つけたのでそれにしたのだ。
そのプレゼントは見た目はただの石である。
だがしかし、俺にはその周りにたくさんの精霊が見えたのだ。
というか、今でも時々見える。
おそらくというか確実に加護があることが分かっているのでこの石にしようと思い、ペンダントのように加工をしている最中なのだ。
ふ~、なかなか疲れるぜ。
そんなことを考えながら、俺は三日前のことを思い返すのであった。
「う~ん、どうしようかねぇ」
そんなことを言いながら俺はクレアとソフィーの誕生日プレゼントを探しに森を訪れていた。
近いのはクレアの誕生日なのでとりあえずはクレア優先なんだが、すぐ後にソフィーの誕生日もあるのでできればどちらも準備を終えてしまいたい。
あと、どちらかを特別扱いするのもあまりよくないと直感が告げているので、できれば同じような物ではあるが少し違うものをプレゼントしたい。
イメージで言うなら色違いのペンを誕生日に上げるみたいな感じかな?
年齢的にもそんなもんだろうしね。
まぁ現代の日本のように周りにたくさんの店があるような状況であればそこで選んだのかもしれないがここにはそんなお店はもちろんない。
それに、やはり自分で見つけたものや手作りの品の方が喜んでくれるだろうしな。
手作りには手作りなりのよさという物があるしな。
職人が作ったすばらしい作品もいいが、自分で一から作ったちょっぴりぎこちなさが残る作品って言うのもありだというのが俺の考えだ。
もちろん、ぎこちなさが残ると入っても自分のできる限りの手は尽くすべきだと思うけどな。
というわけで俺は森でなにかいいものはないかと探しているわけだ。
素材がなければ何も始まらないからな。
俺がもう少し生産系のスキルが高ければ調合なんかをうまく使っていろいろとできるのだけど、今の俺ではそんなことは正直に言って難しい……、というか無理だ。
そんなわけで、きれいな石だったりでもいいのでなにかないかなと普段よりも奥のほうまで入っていく。
もちろん迷ったりはしないように対策はしているんだけどね。
あぁ、どこかの童話のようにパンを置いていって鳥に食べられて迷うなんていうへまはしないよ、俺はな。
そういえばなんだが、祝福を受けてからしばらくして、俺は一度だけ精霊を見ることができた。
おそらく、というか間違いなく精霊魔法のスキルのおかげであろう。
もしかしたら別のスキルかと思い、自分のステータスを見てみたのだが、
名前:ウィリアム=スワンソン
年齢:十歳
種族:人族
レベル:五
クラス:狙撃手 図書館の番人
所属:スワンソン家
賞罰:特になし
スキル:一覧▲
・武術▼
・魔術▲
精霊魔法 (Lv.1)
経験値 0/200
▲
精霊視
・生産▼
・隠密▼
・特殊▼
となっていた。
まぁ、これをみた感じでは、おそらく精霊魔法のスキルのバリエーションみたいな感じなのであろう。
まぁ、どうせだったら調べてみるとするか。
というわけで、実際に精霊視というものに『参照』を使ってみる。
参照スキルの便利さはすげぇな。
とはいっても、時々使えないこともあるけどな。
精霊視
精霊を見ることができるスキル。
基本的には精霊魔法の技能の内の一つとされているが、時々精霊視スキルだけをもっていることがある。
精霊魔法の技能の内の一つの場合、効果は精霊魔法スキルのレベル依存となり、精霊視スキルだけ持っている場合は精霊視スキル自体にレベルがつく。
なお、レベル1の場合のスキルは精霊が多く集まっている場所しか見ることができず、制御もできない。
また、精霊が多く集まっている場合でも見ることができるのは一パーセントにも満たない。
おお、なかなかいい説明をしてくれているじゃないか。
そう思い参照スキルを見てみるとレベルが一つ上がっていた。
これは使い勝手がよくなったな、もっといろいろとやってみることにしよう。
そう思った俺は森の中でいろいろと鑑定していったのだ。
まぁ、それでも時々変な説明が出るんだがな。
そんなわけで、森の中をいろいろと鑑定しながら進んでいたのだが、ここで俺の精霊視スキルが仕事をした。
森に入ってから約ニ時間程度の場所、森もかなり深くなってきて、俺や父さんもめったに入っていかないような場所だ、そこで精霊がたくさん集まっている場所を発見したのだ。
危険かな~、なんて思ったりもしたのだが、誘惑に勝てず近づいてみると、そこには川が流れていた。
今まで俺が何度ももぐっていた中で一度も見たことはなかったのだが、そこに精霊がたくさん集まっていたのだ。
気になって鑑定をしてみると、
精霊の住まう川
数多の精霊がすむ川。
実際に水が流れているわけではないが、川のようにしか見えないことからこの名前がついている。
場所は一定ではなく常に動き続け、見つけようとして見つけることは困難。
ただし、基本的には森の中の、それも人が殆ど立ち入らず、あまり魔物のいない場所に存在する。
移動も目に見える形ではなく、消えて現れてを繰り返していくようになっている。
また、精霊を見ることができない者にとってはその場所があってもなんとなく神聖な感じがすると感じる程度で特に何も恩恵などはない。
そのため、人間族を中心とする精霊に縁のない種族ではこの川の存在が記述された本は存在せず、知識として知っている者も殆どいない。
一方で精霊を見ることができる者に対する恩恵は非常に大きく、いくつかの本によってその存在が伝えられている。
例を挙げるとすれば、妖精族の一種であるエルフに伝わる、『冒険家トゥーリアの日記帳①』があげられる。
この本によれば、精霊の住まう川を見つけた者に対しては精霊が何らかの恵みをもたらすと書かれており、エルフの間では大変ありがたい物とされ、信仰される物の内の一つとなっている。
現在、エルフに伝わる秘宝の一つである、『女神の涙』もこの川がもたらしたものであり、たとえその人が死んでしまったとしても、その魂が体の付近に残っている限り生き返らせることができるという性能を持つ。
そのほかにもいくつかの秘宝と呼んでもおかしくないレベルの物がこの川からもたらされている。
関連項目▼
おお、なんか説明がとても長い。
がしかし、なんとなく重要そうな気がするのでしっかりと読んでおく。
……。
関連項目ってなんだろうか?
この印がついているって言うことはおそらくはここを開くことができるのであろう。
というわけで開いてみることにする。
関連項目▲
・冒険家トゥーリアの日記帳①
・女神の涙
ふむ、この二つをクリックするとおそらくは説明を読むことができるのであろうが、何で今回に限ってこんなに説明が細かかったりするんだろうか。
……。
まぁいいか。
とりあえず、これについては保留にしておくとしようではないか。
というわけでこの二つを開いてみることにする。
まずは上のほうだ。
冒険家トゥーリアの日記帳①
人間族によって迫害されてきた妖精族たち。
もちろん恨みだってあるだろう。
あなたの祖先の方々は人間族によって殺された方もいるかもしれない。
でも今、もしあなた方の目の前に死に掛けた人間族がいたら?
あなたは助けますか?
それともその人間を見捨てますか?
エルフの女性冒険家トゥーリアが実際に体験した苦しみや悲しみ、そして喜びをエルフ一と称される作家ニーセがまとめた他種族との関係性を問うエルフ界が誇る珠玉の一作。
(200字)
関連項目▼
なんだこれ?
完全に本の宣伝じゃねぇか!!
しかもご丁寧に200字きっちりでまとめてるし。
まぁ、『図書館の番人』と呼ばれる職業系列の書いた紹介文なわけだしな。
……、ちょっと読みたいかも。
さて、じゃあもうひとつのほうも見ておくとしますかね。
女神の涙
最高レベルの回復薬の一つ。
原材料は不明。
エルフ族に伝わる秘宝の内の一つであり、蘇生薬とも言われているが実際は回復薬であって蘇生ができるわけではない。
一滴で骨折を治し、二滴かければ瀕死の重体であっても元に戻すことができる。
また、三滴かければ死者をもよみがえらせることができるといわれているが、その効果は限定的であり、死者の魂が天界へと上る前に限られる。
この薬は時間を戻すような薬ではなく、その本質は『癒し』である。
冒険家トゥーリアが残したといわれ、彼女はその薬は『精霊の住まう川』によりもたらされたと語っている。
関連項目▼
あれ?
ひょっとしてこの川ってめっちゃすごい物なんじゃないか?
どう考えてもこの与えられた物ってすごいよね?
なれば祈っておくとしよう。
前世日本人の俺の考えとしては、どんな物であろうともありがたき物に関してはとりあえず祈っておくのが吉なのだ。
というわけで二礼二拍手一礼だ。
神なのかどうかは分からないが、やはりこの形式が一番いい気がする。
鐘がないのが気になるが仕方がない。
それにここら辺は神聖な感じだからな。
ここに入った時点で邪は払われているだろう。
御賽銭は……、魔力を注いでおけばいいかな?
というわけでその場にいる精霊たちに俺の魔力の内の殆ど(全部を与えると気絶してしまい結構危険だからだ)を渡す。
うっ、何度やってもこの感覚はなれないな。
力が抜けていく感じで、しかも大部分が一気に抜けるものだから辛い。
そして、二礼二拍手一礼を行い最後の一礼が終わった後で頭を上げようとして、気を失ってしまったのであった。
冒険家トゥーリアの日記帳、果たしてどんな話なんでしょうか。
皆さん読んでみたかったりしますか?
それにしても、200字ぴったりにするのが思ったより大変でした。
意外と短くまとめたりするのって大変なんですよね。
本とかの宣伝文句を書く人ってすごいと思います。