第六話 レベルアップ?
山の中での遭遇の翌朝、村では森への進入禁止と警戒態勢の強化が実施される中、俺はクレアとソフィーと共にいつもどおり、朝の訓練を行っていた。
二人はともかく、俺は森の周辺の巡回に参加するというのもありといえばありではあったのだが、流石に十歳の子供に危険の多い仕事をやらせるというのは気が引けたようで、二人と一緒に遊んできなさいと締め出されてしまった。
まぁ、今の俺ではそこまで役に立たないだろうと思うし、二人と一緒に訓練するのも全然嫌いではないので素直に二人と訓練を始めた。
いつもの通り柔軟体操でクレアをひいひい言わせ、いつもと同じ近接の打ち合いの訓練を始めたのだ。
しかし……。
「きゃっ!」
「ん?
やっぱりおかしいよな~」
現在の状況を説明しよう。
遠距離攻撃ありというルールであればともかく、近接のみというルールにおいてはクレアのほうに分があり、昨日までの訓練では俺はその攻撃を捌ききるので精一杯であった。
ところがである。
現在、俺はクレアの攻撃を完全に見切ることができている上に、反撃を加える余裕まであるのだ。
一つ一つの動きに関してもゆっくりに見えるし、全く脅威とは思えない。
まぁ、今のうちだけかとも思いそのまま訓練を続けていったのだが……。
「ううぅ~、勝てないよ~。
なんで~!!」
結局情勢は変わらず、むしろどんどん俺のほうが押していくという結果に終わったのであった。
「なんでなんだろうな~」
「なんでなのでしょうね~」
俺とソフィーがのどかに相槌を打つ。
「ウィルに接近戦で勝てないなんて……。
私、このままじゃ……」
なにかぶつぶつとクレアがつぶやいている。
それを見たソフィーがすぐさま俺にここで待っててといってなにか話しかけている。
さて、それじゃあ何が起こったのかを確かめなくちゃいかんな。
どう考えても、前までに比べて身体の動きも良いし、相手の動きだってよく見える。
可能性として考えられる物としては……やはりレベルアップ的なものなのかな。
とはいえ、どう考えてもレベルが上がるほど獲物を倒してはいないんだよな~。
昨日倒したのは狼が数頭だけだし……。
まぁ、実際に見てみればいいか。
そう思い、俺は自分のステータスを表示させる。
名前:ウィリアム=スワンソン
年齢:十歳
種族:人族
レベル:十
クラス:狙撃手 図書館の番人
所属:スワンソン家
賞罰:精霊に愛されし者
スキル:一覧▼
……。
…………。
………………。
えっ?
ええっ!?
レベルが五つアップ、だと。
たった数匹しか倒していないはずだと思うのだが、これは一体……。
今まで倒してきた獲物を全部あわせてもレベルが五しか上がっていないというのに一気に同じだけレベルが上がった。
どういうことだろうか?
倒したのが魔物だからというのが考えとしては一番ありそうな気はするんだが、それでも流石におかしいといわざるを得ない。
俺たちが倒したヴェールーはそこまで強い魔物ではなかったはずだ。
決して弱いわけではなく、群れで襲い掛かられるとかなりの強敵となるであろうが、個々の強さとしてはたいしたことはないはず。
それをたかが数対倒したところで個々までレベルが上がるとも思えないのだが……。
というか、そもそもレベルってなんなんだ?
う~ん、まぁ、せっかくスキルがあるわけだし、実際に調べてみるほうがずっと考えているよりもはるかに建設的だろう。
さて、『参照』スキル君。
久しぶりに出番だよ。
存分に働いてくれ給へ。
① 価値づけや評価をする場合の標準を表す言葉。全体の水準やその程度。
②水平面。水平線。
③ 高低差を精密に測量するための機械の名称。水平に回転する望遠鏡と水準器とを組み合わせたもの。水準儀とも言う。
ふぅ。
やれやれだぜ。
俺はゆったりとした動きでしゃがみ、そばにあった石をつかむ。
「まったく、こんな程度で俺を怒らせようだなんて……、甘いんだよ、コンチクショー!!!!」
そしてストレス発散のため、その石を誰もいないほうに投げ込むのであった。
「はぁ、落ち着け、落ち着くんだ、俺。
そうだ、KOOLになるんだ。
イラついたっていいことは何もないぞ」
しばらく八つ当たりをした後で俺は自分に言い聞かせ、気分を落ち着かせる。
そう、スキルにあたったところでいいことなんて何もないんだ。
個々は広い心で許すとしようではないか。
それにしても、レベルが十になっても相変わらずか。
これって効果が安定していないとかじゃなくて最早仕様なんじゃないのか?
もっとも、スキル自体のレベルは変わっていないだろうしそのせいなのかもしれないが。
まぁいい、仮にレベルというのがゲームとかと同じだったと仮定しよう。
スキルレベルに経験値なんていうのもあるしな。
そうするとだ、一体このレベルというのは何に作用しているんだ?
一つ一つのスキルにレベルがあるということは確実にそれに関してではないだろうし……。
う~ん、分からないな。
多分、「こうげき」とか「ぼうぎょ」とかそんなんが上がっているような気はするが、偏に攻撃って言ったっていろいろとあるわけだしな。
……。
まぁいっか。
別に何が上がるんだとしても別に対して問題があるわけではないし。
レベルの上がる条件だったりも不明だが、恐らくは魔物を倒すとレベルの上がりが早いとかそういう感じなのだろう。
それは今の段階では確かめようがないことだし、いずれ経験をつむ中で分かっていくことのような気がする。
それじゃあ、二人の話も終わったようだし、続きをやるとするかな。
こうして、いろいろなことに考えをめぐらせていた俺ではあったが、結局考えるのを止めて、今日の訓練を続けることにしたのであった。
その日の夜、昼寝をいつもよりも多めに取った俺は皆が寝静まっても未だに目を覚ましたまま、実験を行っていた。
森での戦闘の経験から俺は三つやりたいことがあった。
一つ目は近接の強化であり、これは昼の訓練を少し厳しく、そして長めに取ることで大丈夫であろう。
レベルも上がったおかげで多少補正がかかったみたいだし。
そして二つ目と三つ目が『精霊魔法』と『複写』スキルを育てようというものである。
まず、魔法のほうについてだが、これは魔法ならば複数の敵を相手取るのに都合がいいのではないかと思ったからだ。
弓では単体を狙い打つのが限界だろうし、仮に致命傷を与えられなかったとしても足止めとしてならば使えることは間違いないと思う。
そして、複写のほうについては完全なる興味だ。
スキルは多いに越したことはないだろうし、レベルが上がれば何らかの新しい特殊能力的なものがつく可能性だってある。
というわけで、俺は今現在『精霊魔法』に挑戦しているのだが……。
全然できない。
検索してみても精霊魔法の呪文について書かれている本はないし、勿論家にもない。
この世界のどこかにはあるのかもしれないが、残念ながら今の段階では見ることができないということだけは確実だ。
それならば独学でと思い、挑戦しているのだが感覚が全然つかめない。
俺にはいろいろと精霊をひきつけるための道具があるので間違いなく付近に精霊はいると思うのだが、全然だめだ。
う~ん、ここはアプローチの方法を変えて見ようか。
いままではただ頼むだけだったのだが、先に自分の魔力を与えてみるというのがいいかもしれない。
よくよく考えてみれば、『精霊の住まう川』も先に魔力を与えていたではないか。
あれと同じように考えればいけそうな気がする。
よし、それでは、いざ。
そう思い、魔力を放出する。
そんなに多くなくてもいいような気がするので、一割程度だ。
そして、願う。
(う~ん、そうだなぁ。
あまりへんな魔法を使ってしまうとやばそうな気がするしな。
火で燃えてしまったりしたら大変だ。
とすると、光なんかがいいかな。
それならば別に眩しいということはあるかもしれないが、それ以外に説く影響を与えたりはしないだろうし。
よし、光の精霊よ、我に光を!!)
その言葉と同時に部屋の中央付近で少しだけ光が灯る。
「おっ、成功か?」と思った次の瞬間、その光が爆発的に増え、俺の目に襲い掛かるのであった。
「目が、目がぁ~!」
一瞬のまぶしさに目を押さえ、思わずそういってしまう。
夜ということを考慮して叫ばなかった自分を褒めてやりたい。
もっとも、光だけで十分に迷惑な気はするけれども。
しばらくして、段々と目が見えてくるようになった俺は、ひとまず成功ということでいいのかなと結論付けるとともに、若干目が見難いので今日はもう寝ることにしようとベッドに入るのであった。




