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図書館の番人  作者: トリブレイシオ
第三章 森の異変と魔物
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第五話 覚悟

 俺は森から帰ってきた後、一人部屋にこもって考え込んでいた。

 今日の戦闘、もし誰の助けもなければ確実に俺は死んでいただろう。

 名前は分からないが、あの声の主が現れなければ確実に死んでいた。

 それに、もしあの声の主が俺の敵についたとしたら、俺なんかあっという間に土にかえることになってしまうだろう。


 俺にはまだ甘えがあったのかもしれない。

 実際に意識はしていなくとも、心のどこかで、二つもクラスがある人は珍しいというし、などという甘えがあったんだと思う。


「はぁ、やっぱり平和ボケしているのかねぇ」


 そんな風に一人つぶやき、俺は明日からのことを考え始める。


 今までのことを後悔しても遅い。

 一度過ぎていってしまった時間を取り戻すことはできないのだから。

 であるならば、明日からのことを考えたほうが今までやってこなかったことを反省するよりも何倍も建設的であろう。


「とはいえ、だな」


 正直に言ってどんな訓練をするべきなのか全く持って検討がつかない。

 もっと近接系を鍛えるべきなのか、それとも得意である遠距離系をもっと育てるべきなのか。

 苦手をなくすか、特化させるかというところだな。

 う~ん、難しい。

 結局この日は自分の部屋でどうしようかということを考えたまま、眠りについてしまうのであった。


 もっとも、弓術士が単体で多数の敵とそこまで距離のない中で争うというのは自殺行為に他ならないうえに、まだウィルは十歳でなのではあるが、そんなことは全く頭に浮かばないのであった。







 ウィルがこれからのことについていろいろと考えていた頃、アリンガム家の食堂ではアラン=スワンソン、アンドリューアリンガム、アルマン=ペリシエの三人が集まって話をしていた。


「正直に言って、今の森の中はかなり危険だ。

 少なくともヴェールーが十体以上同時に俺たちに襲い掛かってきているし、俺たちを全員眠らせるような危険な魔物もいることは確かだ。

 幸い、それ以上の危害を与えることはなかったんだが……」

「そうか、正直言ってあまりよくないな。

 それはベルフルーヴ山脈ではない場所でなのだろう?」

「はい、いつも薬用の水を取りに言っている泉の周辺です。」

「あのあたりか。

 ベルフルーヴまでは徒歩で行けば二日程度かかるような場所だな。

 そのぐらいだったよな、アラン」

「あぁ、そんなモンだろうよ」

「これは調査を依頼したほうがよいのではありませんか?」

「冒険者ギルドにか?」

「はい。

 幸いなことに財政的には問題ありませんし、辺境であるとはいえ、儲けがよければ受けてくれる所はあるはずです」

「ふむ、そうだな。

 何もせずに村に危険が及んでしまうのは不味い。

 他の調査のこともあるだろうが、依頼を出しておいてくれ。

 報酬は……アルマン、いくらぐらいがいいだろうか?」

「そうですね……、ここは辺境ですから多少は割高になるものの、あくまで調査が目的だということを考えますと、金貨十枚程度、ですから、百(アース)程度が無難ではないかと」

「ふむ、まぁ、その程度であれば問題はないであろう。

 こないだの貿易の収支がいくらだったかな?」

「少々お待ちを。

 えっと、五千Eの黒字となっています」

「黒字?」

「あぁ、失礼、五千Eの儲けとなっております」

「何?

 そんなに儲けが出ていたのか?」

「はい、薬、岩塩共に需要が大きいらしく、その値段が高まったことに加えて、農作物なども売れていますので」

「因みに昨年の税収は?」

「……。

 三百Eです」

「なんというか、若干変な感じがするな。

 まぁいい、家では使う用事もないし、そんなに税金を取っていないからそんなものだろう。

 それではその条件で頼む。

 あぁ、追加報酬ありとでもしておくか。

 回復薬の需要が高まっているということであれば、さらにやってくれる人たちが増えるだろう」

「ではそのように」


 こうして、従士の一人が次の朝、馬に乗って一番近くの都市であるフェッサリアの冒険者ギルドへと向かうことになったのであった。







 五日後の朝、一つのグループが新たに張られたとある依頼を目にして、それを受注した。


「調査の依頼で百Eだそうだ。

 まぁ、若干場所的には遠いが、儲けとしてはかなりの物だしいいと思うんだがどうだろうか?」

「四人で割っても二十五E、いい依頼ね。

 というか、正直破格といっていい報酬なんじゃないかしら。

 辺境の村でこれだけの報酬が出せるなんて。

 加えて追加報酬として回復薬もあるみたいだし」

「まぁ、多い分にはなんら問題はないわけだし、ギルドを通しての依頼だから信用もあるだろう。

 よし、それじゃあ受けてくるからちょっと待っててくれ」


 四人組の内の一人が受付で受注の手続きを行う。

 しばらくして手続きが完了し、彼が他の三人のほうへ戻る。


「ウミネコ亭の魚定食を一日三食食べても三ヶ月近く持つにゃ。

 ところで、そのアリンガム領ってどの辺の位置にあるのかにゃ?」

「魚ばっかりそんなに食ってたら飽きるだろうよ。

 あぁ、ちなみにここから一週間弱で着くらしいぜ、さっき受付のねぇちゃんに教えてもらった」

「こらっ、色目を使うんじゃないの、手なんか振らない」

「いってぇ~」

「はいはい、そこまで。

 それじゃあ、さっさと準備をしていくよ」

「は~い、私もそろそろ防具を変えようと思ってたところだし、ちょうどいいかな」

「アタシ、帰ったらウミネコ亭の魚暴盛り定食をお腹いっぱい食べるにゃ」

「ははは、何だそりゃ」

「お皿の上に魚がたくさん乗っているウミネコ亭伝説の定食メニューにゃ。

 三日前ぐらいに亭主さんから聞いたときからお金に余裕ができたら食べるって決めていたにゃ」

「じゃあ、今日の昼ごろに出発って言うことでいいかい?」

「おう、馬の準備とかもしとかなくちゃいけないしな」

「私も弓の準備をしておかないと」


 こうしてこの四人は依頼のため、おのおの準備を始めるのであった。

貰った感想やメッセージなどをみて、新たに作品を執筆してみようと思い、新作の投稿を開始しました。

よろしければ見てみてください。

リンクはこちらです。

http://ncode.syosetu.com/n1140ce/


題名は『月の魔眼と麗しき姫』です。

とはいえ、まだ一話目しか投稿していないですけどね。

二話目は明日投稿予定です。

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