第二話 森の異変
昨日投稿できなくてごめんなさい……。
ちょっとだけ展開に迷いがあって一日だけ考えさせていただきました。
えっ、なんで一日も必要だったかって?
そりゃぁ、地球の裏側で行われている試合を見るために決まってるじゃないですか。
やだなぁ。
レミジオさんたちの商隊がこの村に来てから一週間程度が過ぎた。
彼が率いていた商隊は五日ほど前に帰っていってしまい、村ではいつものような平和な時間が流れていた。
賑やかさはないけれど、平和であればそれでよしだ。
そんな中で俺はいつものとおり、調合の訓練なんかを中心に一日を過ごしていた。
最近教えてもらったのだが、回復薬なんかを作るときに使ってた水はただの水じゃないんだそうだ。
魔石を砕いた物なんかを入れた特殊な水らしい。
加えて、その水も森の奥にある泉の水を使用しているんだそうだ。
この辺りでは魔石をとることができないため、年に二回の商隊から買っているのだそうだ。
材料を買って加工した物を売る。
日本のような加工貿易をこの村はやっているようだ。
それなら他の場所で作ればいいじゃないかとも思うのだが、師匠の作る薬はほかの薬に比べても効果がいいらしい。
きっと師匠のことだからほかのみんなが知らないようなことをいろいろと知っているんだろう。
さすが師匠だ!!
まぁそれは置いておくとして、先日の商隊との取引の結果、魔石の補充ができたため、明日はそのやり方なんかを教えてもらう予定であった。
材料は少し多めに買っておいたから失敗しても問題はないということらしく、実際にやらせてもらえるということで、俺は気分が乗っていた。
いや、なんか今までの調合とは違って魔石なんかを使うとなると、本当に異世界の調合っぽくていいよね。
というわけで現在は森の奥、こないだ『精霊たちの住まう川』を見た場所と同じぐらいの深さ(場所的にはこないだより北側なのかな)のところまで来ていた。
現在来ているメンバーは俺と父さんほか三名の従士が護衛として付いてきている。
いや、まぁ、護衛といっても実際は荷物運び的な役割になるんだけどな。
薬を作成する場合、ほとんどこの特殊な水を使うんだそうで、結構な量が必要なんだそうだ。
「村の近くの川の水でもいいのでは?」と父さんなんかは聞いたのだそうだが、師匠が言うにはこの泉の水のほうがいいのだそうだ。
なんか、いろいろと違いがあるらしい。
ちなみに、師匠とクレア、ソフィーは薬を作るための準備をするということで村に残っている。
いろいろと準備があって大変なんだそうだ。
さて、それは置いておくとして、現在の俺たちの位置は目的地近くの森の中なんだが、おれたちの一団はかなりピリピリとしている。
なぜって、今回はやけに野生動物との遭遇が多いのだ。
とくに多いのが野犬だ。
普段であれば探し回らなくては見つからないような動物たちと今日に関しては多数遭遇している。
そして今はちょうど泉の近くへと到達したところなのだが、うっすらと何者かの気配を感じる。
次の瞬間、俺の眼は少し離れた場所に敵影をとらえた。
「十時の方向に敵影。
距離はおよそ五十メートル。
野犬と思われます。
その数、最低十五頭」
「またか。
全員、戦闘態勢に移れ」
「ったく、いったいなんだってんだ」
父さんの号令の下、全員が武器を構える。
俺も弓を矢に番え、来る方向へと向ける。
ちなみに、この中で最も索敵機能が高いのは俺だ。
父さんと狩りをしていてうすうす気づいてはいたのだが、どうも俺の索敵機能はかなりのものらしい。
森の中でも動物の居場所がすぐにわかるのだ。
範囲は五十メートルから六十メートルといったところか。
その距離であれば、基本的に獲物がどこにいるかを知ることができる。
なかなか便利なものだ。
「ウィル、狙撃準備だ」
「了解」
今日来ているメンバーで弓を使えるのは父さんと俺の二人のみであるため、二人で弓を構える。
木々に隠れながら接近してきているようではあるが、残念ながら丸見えだ。
「泥でもかぶってくるんだったな!!」
その言葉と同時に、射線の通る場所へと飛び出してきた相手に先制攻撃を仕掛ける。
しっかりと命中させた俺は同時に投擲用として持ってきていたダガーを投げ二頭に命中させる。
父さんのほうも二頭に命中させたようで、俺の眼には合計五頭の倒れた姿が目に映っている。
がしかし、他の十頭はまったくもって無傷で俺たちの前に現れる。
仲間を五頭も殺されたというのにどうしたことか。
「なにっ!!
ヴェールーだと」
全身が緑色と変わった色をした野犬を目の前にして父さんが驚きの声を上げる。
がしかし、今はそれが何かを聞いている時間はない。
おれの剣の腕では邪魔になるだけなので、一度後ろに下がる。
それと同時に周りを索敵してみるがなにもいないようだ。
だからといって油断はできないため、そのまま弓に矢を番え周囲の警戒を続ける。
前線の援護をしたいところではあるが、俺の腕では邪魔になる可能性のほうが高いだろう。
万が一当ててしまった場合のリスクが高すぎるからな。
とはいえ、誰かが窮地に陥った場合などは手助けをするつもりではいるのだけど。
ヴルルルルウウゥゥ
野犬の中でもひときわ大きな一頭が出した唸り声が引き金となり、一気に襲い掛かってくる。
数としては十頭、こちら側が五人であるため、一人で二頭を相手にしなくてはいけないようだ。
一気に戦闘が開始される。
群れのボスは父さんが相手をしているようで、他の八頭は他の三人に、そして残る二頭は間を抜けて俺のほうへと走ってきた。
「ふっ。
無駄だよ」
俺はそう呟き、一頭に向けて矢を放つ。
矢はあっさりと野犬の脳を貫き、その場に崩れ落ちる。
命を絶ったことを確認した俺はすぐさまもう一一頭のほうへと視線を移す。
この距離では矢を番える暇はない。
やむを得ず、俺はダガーを取り出し構える。
飛びかかってくる野犬に対して身をかがめてかわすと同時に、着地の瞬間を狙って投げる。
ザシュ
体の中央付近にヒットするも、まだ息があるようだ。
俺にはいたぶるような趣味はないのであっさりととどめをさす。
二頭を倒し終わった俺は前衛の方へと目を戻すが、全員なにも問題なさそうだ。
そのまま特に何も特筆すべきことはなく戦闘は進み、最後は父さんが敵のボスと思わしき個体にとどめを刺し、戦闘が終了するのであった。
戦闘が終わり、落ちている死体と魔石の処理を他の皆がやっている間に俺は一人考え事をしていた。
ヴェールー……。
どこかで聞いたような名前だが……、あっ!!
こいつ魔物辞典に載っていたやつだ。
まてよ、ということはこいつは魔物の類ってことか?
まさかとは思いつつ、おれはこの死体を相手に『参照』スキルを使用する。
するといつものように画面が目の前に現れた。
ヴェールーの死体
ベルフルーヴ山脈にのみ生息する狼(享年四歳)の死体。
……。
いや、いちいち享年とか出さなくていいから。
とはいえ、これに出ている通り、こいつらはヴェールーで間違いないようだ。
いったいどうしてこの森にいるんだ?
魔物は基本的に山脈を降りてくることはないはずだと思っていたのだが……。
いったいこの森で何が起きているというんだ?
魔物が出てきたということはかなりまずい状況だろう。
もう水汲みのほうはあきらめて帰ったほうがいいかもしれない。
おそらくは父さんもそう考えているはずだ。
まぁ、ただ死体の処理はきちんとしておかないとおびき寄せてしまったりといろいろな問題があるからな。
「なぁ、父さ……」
次の瞬間、強烈な悪寒に襲われた俺は後ろへ大きく飛ぶ。
もはや反射的な行動といってもいいだろう。
何を考えたわけでもないのだが、足が勝手に動いたという感じだ。
次の瞬間、俺や父さんがいた一帯が霧に覆われる。
おそらく父さんのほうはまきこまれてしまったであろう。
くそっ。
その霧の正体を確かめるために霧にスキルを使用する。
アルラウネの霧(眠り)
吸い込むものを眠らせる霧。
ひとまず、即死させるようなものではないようだ。
がしかし、少なくともこの霧を出した魔物がこの周辺にいるということだ。
これはかなりまずいというか、おれでは到底かなわないだろう。
後ろに跳んだ俺がいるのはちょうど目的地としていた泉の傍で、少しではあるが周辺の木々から距離はある。
アルラウネは植物系の魔物であるからして、迎え撃つにしろ逃げるにしろ木に近づくことは愚策。
そして、周りを森に囲まれているこの状況下では逃げることは不可能。
それならば迎え撃つしかないだろう。
矢を弓に番え、スキルを発動させる。
属性としては火が最も効果的ではあろうが、ここは森の中、それをやるにはいくら湖が近いからといってリスクが高すぎる。
であるならば使うべきは闇であろう。
植物系に対しては有効なはずだ、という気がする。
植物は光合成とかをして生きているのであるから、アルラウネだって闇に対して強いということはないはずだ。
闇の力を矢に込めて周囲を見渡す。
父さんたちはさっき寝てしまった場所から全く動いていない。
おそらくはその場で寝ているのであろう。
がしかし、これからどうなるかは分からない。
気を抜かずに油断なく周辺を見渡し、何かの姿が見えないかを探していく。
次の瞬間、何本もの蔦が一気に俺のほうへと迫ってくる。
それに対して弓を撃ちこむもいかんせん数が多い。
弓を撃った蔦は完全に動きを止めたものの、残りの蔦はそのままこちらの方向へと迫ってくる。
万事休すか。
この量相手への対抗手段を持たない俺にこれ以上できることはない。
最後のあがきとばかりにダガーを取り出して迎え撃とうとする。
その蔦が俺に到達しようかというその瞬間、目の前の景色一瞬ぼやける。
瞬間移動……、いや、これは水の壁か?
目の前に現れたのはおそらくは水の壁、その水の壁がすべての蔦を受け止めていた。
「あらあら、おいたはいけませんよ、アル。
人をむやみに襲うというのは感心できませんね」
昨日(今日)の試合を観た感想:ケーヒル~!!
書いていてふと思ってしまったんですけど、最後に少しだけ出てきたキャラって需要あるのでしょうか?




