第七話 霊峰ベルフルーヴ
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ほほう、ベルフルーヴね。
俺はその表示を見て少し驚いてしまった。
霊峰なんて呼ばれるような山をこんな地方の貴族なんかが支配してしまってもいいのかと。
霊峰というからには信仰されていたりする山なんだろ?
そんな山であれば直轄地にしたほうがいいんじゃないかと思ったのだ。
……、明日聞いてみるとするかな。
もしかしたら何か知っているかもしれないし。
そんなことを考えながら、まだ子供の体のせいであろうか、眠気に耐え切れなくなってしまった俺はベッドに突っ伏して寝てしまったのであった。
「霊峰ベルフルーヴ?」
「うん、父さん知ってる?」
翌日の朝食の時、俺は父さんにそのことについて聞いてみた。
まぁ、知らなければ他の人に聞いてもいいし、スキルで調べてみてもいいしな。
「あぁ、知ってるさ。
ちょっと来い」
そういって東側の窓際に連れて行かれる。
「あれが見えるか?
あの連なっている山々がベルフルーヴ山脈というんだ。
そしてあの山を二つぐらい越えると霊峰ベルフルーヴがあるらしい」
「らしい?」
「俺は行ったことはないからな。
あそこらへんになると魔物なんかも出始めるんだ。
それもかなり危険なやつがな」
「へぇ~」
「言っておくが、許可なく行くなよ。
まぁ、行こうと思ってもここからかなり時間がかかるし無理だろうけどな」
「分かった」
「あぁ、後アルマンが今日も呼んでいたぞ。
後で家のほうに行ってくれ」
「了解」
こうしてちょっとだけ情報を得た俺はソフィーの家へと向かうことにしたのであった。
「それにしても、あの山々がベルフルーヴだったとはなぁ」
自分の部屋へと向かいながら俺はそうつぶやく。
今までの俺はこの村の中だけで完結してしまってろくに外のことに目を向けていなかったからな。
こんなんで旅に出たいなんていっていたとは……、反省しないと。
山を見ていてきれいだなぁなんて思ったりはしたけど、それ以上のことを調べたりはしていなかったからな。
今度そういうところも勉強したいけど、誰か詳しい人はいるんだろうか?
ちなみになんだが、『危険度別魔物一覧~ゴブリンからドラゴンまで~』にも霊峰ベルフルーヴのことが記載されていた。
霊峰ベルフルーヴ
危険度:十(最高レベル)
大陸最東端にあるこの霊峰ベルフルーヴは一万メートル級の山々が連なるベルフルーヴ山脈の中でも最も高い山である。
ベルフルーヴ山脈は多種多様な魔物が存在しており、その中でもこの霊峰に存在する魔物の危険度は総じて高い。
特徴は一万メートルを越える山にもかかわらず、山のどの部分を見ても森で覆われているということである。
ここにも書いてあるとおり、ベルフルーヴ山脈は緑が多い。この村の周りの森がそのまま向こうまで連なっているという感じだ。
だが、なぜこの村の回りは魔物が弱いのだろうか、疑問である。
「早速なんだが、昨日の件について許可が出た。
データについては他の従士がやってくれるらしいから心配はない」
「そうですか」
「昨日書いてくれたやり方をそのままやらせてみようと思うんだが、この辺は実際にやってみて不都合が出たら変えていくという形で行こうと思う」
「それがいいと思います。
あのひとつ質問いいですか?」
「なんだね?」
「この村の領土ってどこまでなのでしょうか?
この村と周りの森だけなんですか?」
「むっ、そういえば私は知らないな。
特にその辺は考えていなかったな。
なんせ、ここは結構孤立しているからなぁ、周りに他の村はないし、そういう境界線のようなものは気にすることもなかったし」
「王様からもらった許可状などがあるのでは?」
「ふむ、確かにあるかも知れんな。
領主様に聞いてみるとしよう。
ウィルもいくかい?」
「はい、是非」
こうして俺は領主の館のほうへと向かうのであった。
「霊峰ベルフルーヴがね~」
「まさかですね」
埃がたまった倉庫の中で実際の許可状を見つけた俺とおじさんは一度ペリシエ家の執務室に戻り、その中に書かれていることを見て驚いていた。
まぁ、俺はもともと知っていたのだが、スキルに関しては秘密にしているので今知ったふりなんだが。
「だがまぁ、あそこが家の領土であろうが、特に何もないんだがな」
「なぜですか?」
「あそこらへんの魔物は強力でな、この村の戦力では無理なんだ。
というか、王国の軍が本気でかかっても厳しいかも知れんな」
「そうなんですか」
「あぁ。
まぁ、霊峰ベルフルーヴの麓ぐらいまでならいけるとは思うがな、そこから先は他では見ないような魔物がうじゃうじゃいるんだ。
なぜか山を降りてはこないからここらへんは平和なんだけどな」
「なるほど~」
なるほどな。
この地域はサフィーナ王国の王都からすればだいぶ離れた場所だ。
ゆえに、一応家臣のような形こそとってはいるが、ほとんど自治領のようになっており、多少の税金を納める以外に特にすることはないし、王国側からも名前を貸してもらっている以外にされえていることはない。
王都からの距離からすれば、もし仮にここらへんで何かが動きを見せても対応はほとんどできないだろう。
それならば、ここにいる貴族に『霊峰』を与えるということで恩を売るという事とともにそこに縛り付けようということだな。
国としても、おそらくはここに戦力を割く余裕なんてないだろうし、あまり利用価値もないんだろうからな。
もし、ここに戦力を割くのであれば、王都の近くにあるいくつかのダンジョンに行ったほうが儲けもいいわけだし、他国が攻めてくる可能性なんかも一応考慮しなくてはならないことを考えれば、仮にダンジョンがなかったとしてもこちらに戦力を集中させることはないだろう。
うん。
それならば、この辺境の貴族であるアリンガム家に『霊峰』を渡したというところも納得ができる。
あの国王は実益を求める人だったのだろう。
いくらそこにあるものが価値があったとしても、とることができなければ何の意味もないし、名前だけのものなんざくれちまえぐらいの感じだったのであろう。
加えて問題が起こった際に時間稼ぎだったりもさせることができるといったところか。
いろいろ考えているんだなぁ~。
まぁ、仮にも一国の国王なわけだし、いろんなことを考慮しなくてはいけないんだろうなぁ、なんて思いつつ、そのほかの話なんかもいろいろと進め、執務室を出るのであった。
「うふふふふ~♪。
えへへへへ~♪」
執務室を出て自宅へと帰ろうとした俺の耳にちょっぴり変な、ただしなんとなく嬉しそうな声が聞こえてくる。
声の元は……ソフィーの部屋だ。
う~ん、いったいどうしたんだろうか。
きになりますねぇ。
そんなことを考えていた俺の頭の中に選択肢が出てくる。
四択のようだ。
Q.あなたが次にとるべき行動は?
A.こっそりと中を見る
B.こそっと中を覗き見る
C.堂々と中に入っていく
D.ドアをノックし、入ってもいいかと許可を取ってから入室する
ふむ、まぁ、見ないって言う選択肢がないことはおいておくとしてAとBの違いって何なんだろうか。
まぁいいや。
それはおいておくとして、ちょっと俺はここでひとつ考えを言いたい。
俺は仮にも前世日本人であり、モラルや礼儀を大事にする国で生まれ、育った。
そんな俺に言わせてもらうとだ。
覗きなんてものは最低だ。
盗撮なんてのはもっと最低だ。
こんなものは言語道断だ。
STOP覗き。
STOP盗撮。
というわけで、特に違いの分からないAとBなんて選ぶやつは最低だと俺は思うね。
ええ。
さてと、それじゃあ潔さというものを美と捉える日本人の模範としてしっかりとした行動をとるとしましょうかね。
ばーん!!
「ソフィー、どうしたの?」
「きゃっ!!
えっ、ウィル?」
勢いよくドアを開けた俺はそのままソフィーに向かって声をかける。
ソフィーはベッドの上で何かをしていたのか、そこで座り込んでいる。
「どうしたの、ソフィー?
なんか変な声が聞こえてきたんだけど」
「え、えっ?
えっと、別になんでもないよ?」
「そう?」
「うん。
でもびっくりしちゃったよ~。
急に入ってくるんだから」
「ははは、ごめんごめん」
「まったくもう」
そういいながらソフィーは手を後ろへと回す。
ん?
あれは……。
「それってプレゼントのペンダントだよね。
気に入ってくれた?」
「えっ!!!
あぁ、うん。
あ、ありがとね、ウィル」
「どういたしまして」
ソフィーが手に持っていたのは俺が誕生日にプレゼントしたクレアとおそろいのペンダントであった。
一応、中にはめている石は色違いで緑色の石にはしているのだけれどね。
それにしてもいったい何をあせっているんだろうか。
「そ、それはいいとして、レディーの部屋に勝手に入ってきちゃだめなんだよ!!」
「ご、ごめんなさい」
俺はその言葉にすぐさま謝罪したのであった。
潔ぎよさは美徳だからな。
昨日二話更新できなくてごめんなさい。
ついうっかり寝てしまった……。
記念すべき5000件目のお気に入り登録者には賞品として……、う~ん特に何も考えていなかった。
そうですねぇ、まぁ、特定の個人を贔屓するのはどうかと思うのでなにか一本閑話でも書かせていただこうかと思います。
リクエストなんかあれば本日の活動報告のコメント欄か感想までどうぞ。
どんなものでもかまいませんのでなにかあればお気軽にどうぞ。
とはいえ、大して分量もないのであれなんですけどね。
筆者に任せるというのであれば、この章が終わるまでに何かしら考えておくとします。
ちなみにリクエストは「クレア視点」でとか、「ソフィーの誕生日会のようす」とか、その程度でもかまいません。
そして、ウィル君。
日本には「親しき仲にも礼儀あり」という諺があるんだよ。
でもまぁ、十歳ならセーフなのかな?




