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図書館の番人  作者: トリブレイシオ
第二章 幼馴染たちの祝福と村での生活
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第五話 幼馴染たちの祝福③

 ガラン、ガラ~ン、ガラン、ガラ~ン


 夕方、ソフィーの祝福の儀式が行われている教会からは鐘の音が響いていた。

 クレアのときもそうだったのだが、この鐘の音が祝福の儀式がとりおこなわれたことを表しているらしい。

 この神聖な感じを受ける鐘の音で、新たに祝福を受けた子供たちを祝おうということなのだそうだ。


 だが、この鐘の音には一つ問題点がある。

 祝福の儀式が行われるのは教会の中でも少し特別なオーブのある部屋であり、村人が逃げ込む最後の砦となっている。

 そのため、儀式の行われる場所の扉は飾りもなかなかのものなのだが、それ以上に頑丈な扉でできているのだ。

 つまり、何が言いたいのかというと、祝福を受けている本人には鐘の音が全く聞こえないという事態が起こっているのである。

 それはどうなのよと思わなくもないが、まぁ、別に祝福を受ける本人にとっては自分のステータスに興味津々でたいして鐘の音なんて気にしないから問題ないのかななどとも思う。

 鐘の音を聞く余裕があるのは他の人たちだけだしな。

 ちなみに、その部屋以外では普通に鐘の音を聞くことができる。

 その部屋だけが完全防音となっているため、何も聞こえないのだ。


 まぁ、それはともかくとして、鐘が鳴ったということはソフィーの祝福が終わったということだ。


「ソフィーはどんな感じなのかな?」


 俺の横でちょっぴりそわそわしながらソフィーを待つクレア。

 じっと教会の入り口を見ているその目は「まだかな~、まだかな~」と語っていた。


「もう直ぐ出てくるからゆっくり待ってなさい」


 犬に「待て」を教えるように手を前にかざしながらクレアにそういう。

「クレア、ステイだ、ステイ。」と言いたいがきっと通じないだろう。

 通じたとしたら犬扱いしないでって怒られそうだな。


 そんなどうでもいいことを考えていると、教会の扉がギィと音をたてて開く。

 中からはソフィーとその両親が出てきた。

 前回のクレアのときとは違い、今度はこちらからソフィーのほうへと向かう。

 というか、クレアが向かっていってしまったので俺もそれに続くような形だ。


「ソフィ~」


 近づきながら、クレアがそう呼びかけるとソフィーもこちらに向かって近づいてきた。


「ありがとうございます。

 おかげで家の娘も無事……」


 横でソフィーの父親(アルマン=ペリシエ)が他のみんなに対してお礼の言葉を述べている中、俺たちは三人で集まった。


「それでそれで。

 どんなクラスになったの?」

「う~ん、それがね、よく分からないの」

「えっ、よく分からないって?」

「神官さんにも聞いてみたんだけど、知らないって」

「ふ~ん、どんな職業なんだ?」


 職業がよく分からないと言う言葉に対して俺が反応する。

 任せとけ、クレア。


『検索』スキルが準備運動を始めました。


 俺の頭の中ではこんな言葉が浮かんできた。

 完全に検索スキルの出番だろ、これは。

 クラス検索って言う新たなスキルも得ている今、ついに活躍の機会がということか。

 よかったな、『検索』スキル。

 やっと、やっと出番だよ。

 今までは『参照』スキルにばっかり重要なところを持っていかれていたような気がするが、ついに君の出番だ。

『検索』スキルも、「出番かな?出番ですかな?」と頭の中で叫んでいるかのようだ。











「えっとね、飼育委員っていうクラスなんだって、なにか知ってる?」


 ……。


『検索』スキルさんがログアウトしました。


 あぁぁぁああぁああぁぁぁあぁあああぁあ。

 落ち込まないで、『検索』スキルさん。

 出番はある。

 絶対に出番はあるから。

 それに仮に出番がなかったとしてもつくればいいんだよ。

 うん、俺がつくってやるから。

 もはや、なにか分かりきっているけど今から調べるから、なっ?

 元気出せ、『検索』スキル。

 お前の力なら、俺の前世の知識よりもすごいものを出せるだろ?


「ふ~ん、飼育委員か。

 多分なんだけど、動物の世話なんかに補正が入るスキルなんだと思うよ」

「多分そうよね。

 でも、【委員】と言うのは何かしら?」

「おそらくはそれ専門のとか言う意味なんじゃないかな」

「ということは飼育専門家という意味なのね」

「それだったらそのクラス名にすればいいのにどうしてこんな変な名前なのでしょう」


 クレアとソフィーはクラスのことでいろいろと話しているようだ。

 よし、この間に『検索』スキル、出番だ。

 発動、職業検索!!!!!




 職業検索

 検索ワード:飼育委員

 所有者:ソフィー=ペリシエ(Lv.1)


【飼育委員】とは、固有クラスの内の系列の一つであり、系列においてはそのはじめの一つである。

 特徴としては通常のクラスである【魔物使い】などとは違い、扱うことができるものはモンスターに限らず、通常の動物なども扱うことができる。

 ただし、【飼育委員】の内の効果はあくまで生き物に関して仲良くなることのできる確率が上がる程度であり、自在に動かすことはできない。

 効果はレベル依存。


 レベル一現在


 効果①:生物との親密度の向上にプラス補正。

 効果②:調合(えさ)スキルの成長にプラス補正。


 昇格条件(飼育委員⇒飼育委員長)

 ・生物一匹に対して「お手」をさせることに成功で昇格可能。

 ・生物百匹に対して「お手」をさせることに成功で無条件昇格。




 な、なんだと!!

 職業検索が本気を出した!!

 レベルが上がらないと固有職は見れないといっていたのにがんばったよ。

 さすが『検索』スキルだな。

 そして昇格条件……。

 何だこりゃ。

 まぁ、一応、昇格条件をクリアさせておくとするか。


「ソフィー、ソフィー」

「なに、ウィル」

「手を出して」


 そういうとソフィーは素直に片手を出してくる。


「で、お手といって」

「お手」


 その言葉と同時に俺はソフィーの手の上に自分の手を重ねる。

 ……。

 なんだろうか、この感覚は。

 やっていることはただ、ソフィーの手の上に自分の手を重ねているだけなのに……、まぁいい。

 もういちどソフィーを見ると、

(昇格可能)

 となっていた。

 やべぇ、昇格が安いよ、安すぎるよ。

 だがよし、成功だ!!

 これで二人とも昇格ができるようになったぞ!!

注意

スキルが実際に話したりしているわけではありません。

ウィル君が脳内補完しているだけです。



ちなみに、彼女らは「飼育」という言葉の意味は分かっていましたが、「委員」という言葉の意味が分かっていませんでした。

そういう言葉を使う機会がなかったからでしょうね、きっと。

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