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図書館の番人  作者: トリブレイシオ
第二章 幼馴染たちの祝福と村での生活
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第四話 俺とクレアの合同訓練

「痛い痛い痛い。

 ウィル、もう少し緩めてよっ」

 

 本日はソフィーの祝福の儀式の日、すなわち、ソフィーの誕生日だ。

 現在の時刻は朝の八時、朝食を食べ終わった俺はクレアの訓練を手伝っていた。

 こないだ、クレアに自分の持っている武術系スキルを教えてもらったのだが、その中の体術があまり高くなかったので一緒に訓練をすることになったのだ。

 がしかし、

 

「お、折れた、絶対に足が折れた~」

「折れてない、折れてない。

 ほら、次行くよ、足を開いて。」

「いや~~~!!」

 

 クレアはめちゃくちゃ体が硬かったのだ。

 まだ子どもなのにその体の硬さはまずいだろう、ということで現在柔軟を重点的に行っているのだ。

 そう、これはクレアのためなのだ。

 体が硬いと怪我もしやすくなってしまうからな。

 決して、クレアをいじめたいとか、そんなことを考えてはいない。

 そう、まったくもってそんなことは考えていないのだ。

 

 何だかんだいっても、毎日ちゃんと来ている訳だし、そんなにいやなわけじゃないんだろうと勝手に解釈して、俺は訓練を続ける。

 最近では始めた頃に比べて少し柔らかくなった気もするしな。

 今は対面になって座り、足を開いて手を交互に引っ張り合うという方法で柔軟をしている。

 

「あう~」

「泣きそうな顔をしても止めないよ。

 ほらっ、いっち、に、さんし……」

「うわ~ん。

 ウィルの鬼~、悪魔~。」

「なんとでも呼ぶがいいわ~、ハッハッハ」

 

 そんなこんなで楽しい楽しい(俺にとって)柔軟体操の時間は続いていくのであった。

 

 

 

「あ、足が取れた~。

 ウィルに足をもがれた~」

「取れてないしもげてもいないから大丈夫だよ。

 ほら、足を見てみな。

 両足ともちゃんとついているから。」

「いや~、絶対もげてるもん。

 もう歩けないよ~」

 

 柔軟体操が終わり、地面に横たわっているクレアは放心状態だ。

 というか、毎回毎回こうなっていないか?

 まぁ、いずれ直るだろうさ。

 

「ほら、クレア、これでも食べて元気だしなって。」

 

 森で採ってきた果物を冷やしたものをクレアのほうに持っていく。

 

「わ~い、スリーズの実だ」

 

 クレアの大好物であるスリーズの実は赤くて小さな果物でこの森の中にある果物の内の一つだ。

 わりと遠くのほうにしか生えていないのであまり食卓に上る機会はないのだが、その甘さとわずかな酸味がよく好まれる果物の内の一つだ。

 籠に入れて水で冷やしておいたものを一つ手にとって横たわっているクレアの口元に持っていくと魚が餌に食いつくかのようにパクッとスリーズの実を口に入れた。

 実についている枝を切り離しながら、クレアが起き上がる。

 ふっ、ちょろいな。

 子供のご機嫌をとるなんざ俺にとっては朝飯前よ。

 まぁ、朝飯は食ったんだがな。

 

「ねぇ、ウィル。

 もう少し優しくしてくれないかな、ダメ?」

 

 足を伸ばして座っているクレアが上目遣いで可愛らしく聞いてくる。

 

「い……、ダメだ」

「う~、ウィルの意地悪」

「クレアのためにならないからな。

 こういうのはある程度つらいものなんだから仕方がないだろ」

「む~」

 

 一瞬、「いいよ」といってしまいそうになったがここは我慢だ。

 これもクレアのためを思えば(悲鳴を聞きたいが)こそだ。

 ん?

 なにかおかしな注釈がついたような……。

 まぁいいか。

 こうしてクレアとの訓練の一つ目が終わったのであった。

 

 

 

 ガキン、ガキン、ガッ、ガキン。

 

 現在、俺とクレアは戦闘の訓練を行っていた。

 とはいえ、お互いの得物は全く違うのだが。

 俺は短剣でクレアはその時々によって変えているのだ。

 そもそも、俺は狙撃手というクラスの名前からも分かるとおり、完全なる遠距離型だ。

 それに対してクレアは騎士、一応遠距離もできなくはないのだが、基本的には近距離が専門な職業だ。

 これだけ見れば確実にクレアのほうが有利なのだが、まぁ、実際に対戦するわけではない。

 基本的に二人で行っている訓練はクレアの攻撃を俺がどこまで捌くことができるのかという訓練だ。

 俺は攻撃に関しては基本弓で行うわけであって、俺が接近戦で必要なのは、敵の攻撃を受け流せる技術だからな。

 

 というわけで、クレアの攻撃を受け流すような訓練を行っているのだが、なかなかうまくいかない。

 

「いってぇ」

 

 何度かの打ち合いの後で、俺は短剣を持っていたほうの手をさすりながらそう呟く。

 うまく衝撃を受け流せないせいで手への衝撃がかなりあり、なかなか辛い。

 

「ほらほら、さっさと立ちなさい。

 続きをやるわよ」

 

 一方のクレアは先ほどの柔軟をやっていたときとはうってかわって晴れ晴れとした表情で近くにおいてあった籠の中からスリーズの実を一つつまみ、頬張っている。

 スリーズの実はすでに最初の半分に以下になってしまっている。

 食べすぎじゃねえか?

 そんなことを考えつつ立ち上がる。

 そして、そのまま一時間ほど近接攻撃の受け流しの訓練を行っていくのであった。

 

 まったく、訓練をしなくちゃいけないのは分かるけど、痛いのは辛いな。

 よし、明日からはクレアの柔軟体操も優しくしてあげることにしよっと。

 そう決心する俺だった。

 

 しかし、俺はすっかり忘れていたのであった。

 昨日も、そして一昨日もクレアに優しく指導してあげようと思っていたことを。

 そして、やっているうちになんとなく厳しくなってしまっていたことを。

ウィル君?

こないだの昇格はやらなくてもいいのかい?

もしかして、忘れていたりしないかい?

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