第二話 幼馴染たちの祝福②
成功したと思うので二つ目。
前のほうのは直ぐに消します。
「昇格可能?」
思わず俺は口に出してしまっていた。
「ん?
ウィル、なんかいった?」
「ううん、なんでもないよ。
そろそろ誕生日パーティーなんだし、行かなくてもいいの?」
「え、えっと、それはもちろん行かなくちゃ行けないんだけど……」
俺の問いかけに対して少しだけ戸惑ったような表情を見せたクレアは少し視線をさまよわせた後で助けを求めるかのようにソフィーへと視線を向ける。
はてさて、いったいどうしたのであろうか。
う~ん、あっ、そういえば誕生日プレゼントを渡さなくちゃ。
「クレア、クレア」
「な、何かしら?」
「これっ、誕生日プレゼントだよ。
ほら」
そういって俺は首にペンダントをかけてあげる。
あぁ、そうそう、これがそのペンダントのステータスだ。
夜のペンダント
身に着けるものに対して、心の平穏を与えるとされ、古来から、邪を制するためのお守りとして使用されるペンダント。
闇属性に対する耐性が上がるとともに闇属性の攻撃も上がる。
また、いくつかの状態異常に対しての耐性も上げることができる。
作成者によって桜のシンボルが形作られている。
まぁ、俺ががんばって作っていたのは桜の花だったわけだな。
やっぱり、日本人としては桜のシンボルがいいよね。
それに、クラスが騎士っていうし、尚いいよね。
騎士(Knight)と夜(night)。
ふふっ。
……。
気温が下がったような気もしたが気のせいだろう。
うん、そうに違いない。
決して俺のギャグのせいではないはずだ。
そうだよな?
みんなだって一瞬思っただろ?
騎士が夜のペンダントをつけるのかよ(笑)って。
……。
ゴホン。
さて、さっきのは忘れることにしよう。
まぁ、なんかたいそうな名前はついたが、結局はただのペンダントだ。
気に入ってもらえたであろうか。
そう思い、クレアの顔色なんかを窺ってみようと思ったのだが、クレアが俺と反対方向を向いてしまったので残念ながらわからない。
「気に入ってくれた?」
「ま、まぁまぁね。
でも、せっかくもらったわけだしつけておいて上げるわ」
「そっか、気に入ってくれたみたいでよかったよ」
「べ、別に気に入ったわけじゃないわ。
ウィルが着けてほしそうだったから仕方なく……、そう、仕方なくよ」
「そっか~、仕方なくか~。
ありがとね」
後ろからそっと近づき、頭をなでてあげる。
よしよし。
「っ!!
もう少しで誕生日パーティーが始まっちゃうし、行くわよ!」
ちょっと激しい口調でクレアはそういう。
う~ん、さすがに怒らせちゃったかもな。
反省しなくちゃいけないかも。
後で謝っておくか。
こうして俺はクレアの後を追ってパーティーの開かれるクレアの自宅へと向かうのであった。
「う~ん、こりゃどういうことなんだろうか」
夜、クレアの誕生日パーティーを終え、家に帰ってきた俺は部屋でさっきクレアの画面に出ていた(昇格可能)というものについて考えていた。
パーティー中、クレアに聞いてみたのだが、クレアは、そんなものは書いてないといっていたので、恐らくは俺のスキルの影響だろう。
「というか、まちがいなく、このスキルの影響だよなぁ~」
自分のスキルの『検索』スキルの下、に新たなものが出ていたのだ。
検索 (Lv.5)
経験値 550/600
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職業検索
職業検索ねぇ~。
どんな効果なのであろうか。
実際に調べてみた。
職業検索
『検索』スキルの一種。
『検索』スキルがレベル5以上になることによって開放される。
職業限定の検索スキルであり、職業に関する検索の幅が広がった。
効果は『検索』スキルのレベル依存であり、レベルが高まると固有職についても調べることが可能となる。
また、他人の職業を見た際に昇格できる場合、その職業を示すことができる。
ただし、その効果は『検索』スキルのレベル依存であり、仮に相手が昇格の条件を満たしていたとしても『検索』スキルのレベルが足りない場合にはこの能力は使用不可能である。
なるほどね~、限定することによって、その分野に関しては更に深くいろいろとできるようになったというわけか。
う~ん、なかなか面白いじゃないか。
この分だと、このままレベルアップしていけば、更に機能が増えるっぽいしな。
明日にでも実際に使ってみようかな。
実際にやってみたわけじゃないが昨日の感じを見る限り、恐らく使えそうな気はするしな。
まぁ、使えなかったらそのときはそのときだ。
よし、検証も終わったことだし、寝るとしますか。
こうして俺は眠りにつくのであった。
翌朝。
俺は日課の準備運動をしていた。
毎日の体作りがやはり一番大事なのだよ。
という訳で柔軟体操と筋トレを行う。
筋トレは以前に比べて少しきついメニューに変えることにした。
いつかは指一本で腕立て伏せをしたりするような訓練が余裕でできるようになりたいものだ。
そんなことを考えながら地道に訓練をこなしていく。
増やした初日ほどではないがやはりつらいな。
まぁ、ここでやめたら台無しなわけだし、しっかりと続けるんだけど。
いちっ、にっ、さんっ……。
こうして俺は朝食までの時間を筋トレをしてすごすのであった。
朝食をとってしばらく時間が空いた後、俺は村の畑を見に来ていた。
自分がそそのかして行った改革なので、大丈夫かどうかを一月に一回は確かめに来ているのだ。
とはいえ、村のみんなは父さんたちが改革したという風に思っているので、俺はただ好奇心旺盛な子ども程度に見られているのであろうが。
まぁ、そっちの方が都合がいいので特に何も言う気はない。
下手にうわさになってしまったりすると、なんか問題がおきそうな気がするからな。
まぁ、父さんは「この子頭いいな」的なことを思っているかもしれないが、昔からずっと旅に出たい旅に出たいといっているので王都へ役人になれといって送り出されるようなことはないだろうから、その点については安心だ。
目立つとろくな目にあわなそうなので、本当ならばこの改革もしたくはなかったのだが、両親に対して旅に出てしまえば何もしてあげることはできないのだから、せめてこれぐらいはしてあげたかったのだ。
自分を生み、そして育ててくれた両親にはね。
どこかへ旅立ってしまうのであれば、せめてなにかを残していってあげたいという思いだ。
親孝行の大事さを俺はもう前世で知っているからな……。
いなくなってしまってからでは、もう何もすることはできないのだから……。
べ、別に、一番の理由はおいしい食事を食べたかったからとかじゃないんだよ?
ウィル君は家族思いのとてもいい子どもです。
誤解しないであげてください。