表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

序1-6 サイド:悪3


「――と、いう訳で、結城くんには、異能覚醒のために手っ取り早く、人生の再体験をして貰います」

「はぁ? 何がと、いう訳なのか分からないけど、離して貰えますか? 怖いんですけど」


 俺は、円柱状の水槽の中にいくつもの電極や何やコードに巻きつかれ、拘束されている。

 先ほどまで六華さんとドクターと一緒に和気藹々としたように会話をしていたはずなのだが……。


「異能は、自分の強い危機意識や自分の存在意義の是非。または、本能的な何かによって呼び起されることが多い。君の人生で一度は、異能の覚醒が見られたという事は、その場面を再度体験すれば、更なる覚醒へと繋がる可能性がある。所謂、短期集中コースってわけだ」


 で、冒頭の言葉になるわけで、理解できない内に、六華さん。ウィズ、戦闘員の皆さんによって拘束されました。


「ちょっと、怖いんですけど!」

「大丈夫大丈夫! 生まれ変わると思って受けてみてよ!」


 そして、水槽へと緑色の液体が侵入してくる。服が液体を吸収し、重さを増す。水が頭まで達したが水の中では、息苦しさを感じない。

 水槽の中から見る歪んだ顔のドクターたちが徐々に霞んでいき、眠気が意識を侵食しだす。

 始まるのは、俺の人生の再体験だった。



 芳野・結城と言うのは、本当の名前じゃない。

 本当の名前は、水守みずかみ・結城だ。芳野の名前は、俺を引き取ってくれた遠縁の老人夫婦の姓だ。

 俺が、養子に出されたのは、七歳の頃。異能に目覚める前は、まだ家族と普通に過ごしていた。

 ある夏の日、俺は、川で遊んでいた。浅瀬で水遊びをしていたいのだが、深い場所に足を踏み外して、流された。

 そして、死を覚悟する直前、異能が目覚めた。

 俺を助けてくれたのは、水で出来た正義のヒーローだ。その当時もっとも好きだった正義の味方が俺を助けてくれた。

 その代償に、髪の変質が始まった。毛先から水色に変わっていった。

 異能者への偏見は、あった。そして、異能者への事件と重なり、両親から向けられる目が冷たくなった。


 関わらず、最低限にしか接してこない。周囲に人の温かみを求めても同じように拒絶される。扱いの困るペットに接するように、俺は、自分の殻に籠った。

 二年が経ち、小学校の入学と共に、芳野の老夫婦へと引き取られた。

 芳野の夫婦は、【外敵】からの襲撃の初期を体験した人で、俺に対して必要な教育や人としての温かさ、正義の姿を語ってくれた。

 再び取り戻した人間らしさ。けど、二度目の喪失は、俺が十歳の時――老夫婦の死。それにより、今まで守られていた人の悪意に再び晒されることになる。

 再び、水守の家に戻ったが、そこには、妹が生まれており俺の居場所は無い。

 実の家族だったはずなのに、面倒な子として扱われた。


 だが、芳野の老夫婦に教わった心を持って、反骨精神で色々な事に打ち込んだ。勉強、スポーツ、地域活動。

 だけど、どれも正当に評価されない。

 勉強とスポーツは、異能を使ったズルだと決めつけられ、地域活動は、異能持ちはヒーローの予備軍。それなら当然と言う雰囲気だった。

 五歳の時から一切、異能が使えないのに、そういう雰囲気が蔓延していた。そもそも、自分の能力自体分からないのだ。

 中学に入り、ますます俺の居場所がなくなった。それでも努力は続けた。

 明るさを失わずに、水泳部に入り、勉強と並行して頑張った。十五歳の中学卒業と同時に両親。いや、水守の夫婦とは、縁を切り、独立する事になっている。名前だけの保護者だが……。

 勉強も高校の推薦と奨学金を貰えるほどに……水泳も大会で良い成績を出せる程に。


 だけど――世界の悪意は止まらない。


 名目上、異能者と一般人との区分の無い正式な体育連盟の大会。そこで、俺は今までで一番の成績を出した。けど、全て潰された。


「異能者だから他人より体が優れている」「水色の髪は、水を操っているからだ」


 様々な憶測が俺を追い詰める。結果は――剥奪。

 

 後で知ったが、その大会で俺に負けた選手は、今後を期待されるニューフェイスだった。下馬評では、彼が入るはずの場所に、無名で怪しい俺が入った。そして、ルール違反の容疑で剥奪と彼の繰上げ。

 更に悪い事に、ルール違反と異能者の言葉だけが伝わり、俺は、全ての推薦と奨学金の予定を失った。


 こうして見ると、自分の人生の再体験を見ると、随分と荒んだ人生だ。もっと、自分らしく生きれたはずだ。色々な物を羨ましいと思った。


 妹、クラスメイト、普通の人、だけどどれにもなる事も出来ずに、中学の後半では学校に通う事も出来ずに、親に追い出され、バイトで日々の食い扶持を繋ぐだけ。


 夢はあったはずだ。ヒーローなんてのは漠然としていた。将来は、サッカー選手とか、宇宙飛行士とか、そんな可愛い夢もあった。

 どれも、これも奪われて、俺は、何一つ持ってない。

 ドクターに拾われる日まで何も成すことが出来ずに、自分に何があるか分からない。


 だから、変わりたい。生まれ変わりたい――


作品の設定を組み直していた。

やっぱり、私には、TS要素が無いと元気が出ないみたい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ