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一章1-4 サイド:結城


「はぁ、疲れた……」


 社員寮の自室にあるベッドに倒れ込み、天井を仰ぐ。

 自身の重みで軽い軋みを上げる古いベッドは、戦闘員のお下がりだ。他にも衣装ケースや小さなテーブルなど、俺の今持っている家財は、全部が貰い物。

 この一週間は、戦闘部署での戦闘訓練が多かった。悪の戦闘員が三つのグループに分かれ、表の派遣業二日、裏の結社に二日、そして訓練一日。残りは休日の配分で運行される悪だが、社員研修と同じプログラムをこの一週間続けて受けた。

 時々、自己鍛錬で戦闘部署に顔を出すことを許されたが、当分はあの濃密な基礎訓練と組手、ドクターが発明した悪専用アイテムの安全運用マニュアルなどを覚えるとは、勘弁してほしい。


「頭がパンクしそうだ。でも――」


 でも、嫌じゃない。

 前までの死んだような目をして生きていたのが、ある日を境にここまで変わるのか。と思う。

 戦闘員の中には、前の俺と同じように、髪の毛の三分の一が異能の発現ともいえる変色を見せていたが、歳が二十代後半だと言うのだ。

 それは、つまり異能の発生はもうあり得ない。異能者にも一般人にも慣れない人だ。

 異能の発現は、早くて三才頃。遅くて十代と言われている。それ以降の発現の事例は存在しない。

 だから、期待か、差別を受けたか分からないがその可能性を持ったまま、結局何にもなれなかった人たちは、俺にとても優しかった。


 自分が、痛みを知っているから優しくなれると言ってくれた女性戦闘員が居た。

 自分が、期待される重みが分かるから温かく見守ろうと言ってくれた男性戦闘員が居た。

 自分が、人の幸福に心の底から呪ったことがあるから、今の幸福を分けたいと言う男性戦闘員が居た。

 自分が、恵まれた立場から落とされたから同じ落ちた人間を拾い上げたいと思った女性戦闘員が居た。


 その言葉のどれもが優しすぎて、逆にその人の辛い過去が見え隠れして、泣きたくなった。

 すんなりと自分の居場所を見つけた気がした。

 だから、自分は思う。自分もこの――悪の秘密結社かぞく――の一員で良いんだと。

 そして、家族を守るために、また明日から頑張ろう。そうした決意のまま深い眠りに落ちていく。




 翌週も同じように毎朝のルーチーン・ワークをこなし、研修を受ける。


 計画部署では、ドクターの発明した特許の管理とドクター発明の悪の秘密道具の管理と販売、そして、使用マニュアルの作成である。

 ドクター曰く、怪人も相手の希望を聞いて作成販売している。との事らしいが、今はその怪人を作るレベルの素材が無いとのこと。

 ここ最近、六華さんが出動して、アウターズの奪取の失敗が続いているそうだ。なんでもかなりの確率でやる気のある熱血系ヒーローに邪魔されるとのこと。

 そして、その計画部署の研修が終わり、化学部署の研修が始まる。



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