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剣と魔法のラジオ塔  作者: 渡久地 耕助
偽勇者サトーと鉄靴のカランコロン

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2/2

魔力に宿る意思

本編でまだ名前が明かされない主人公


そんなことある?

夜明け前の空気には、まだ昨夜の魔力のざわめきが残っていた。

ドラゴンの魔力は独特だ。

荒れ狂う殺気と、災害みたいな圧。

それが突然、ふっと消えた。


「……まあ、そりゃ引き返すよな」


俺はコーヒーを啜りながら、軽く肩をすくめた。

あの消え方は“死んだ”ものじゃない。

方向転換。

ただそれだけ。


理由は分かっている。

()に邪魔されたのだろう。


でも、別に誰かに彼の偉業を説明する必要もない。



「さて、今日もコーヒーがうまい」


ドラゴンがまた来るのは分かっている。

でも、慌てる必要はない。

俺には俺のやり方がある。

焦っても仕方ないし、

コーヒーは冷めるし。


自前のラジオが、かすかに震えた。

昨夜の残響がまだ残っている。

魔力の波形が乱れているのは、街全体がざわついている証拠だ。


「……まあ、今日の放送で少しは落ち着くだろ」


ラジオは魔力のノイズを整える。

人の心も、街の空気も。

だからこそ、俺はラジオを作った。

誰かを救うためとか、そんな大層な理由じゃない。

ただ、世界が少しでも面白くなればいいと思っただけだ。


そして──

その“面白さ”が、いずれ世界を救うかもしれない。

そんな気がしている。


街へ出ると、いつもの日常と、いつもじゃない空気

街はまだ落ち着かない。

冒険者が走り、騎士団が巡回し、商人は店を開けたり閉めたり。

魔力の震えが、まだ空気に残っている。


そんな中、ラジオから明るい歌が流れる。


『昨夜は怖かったですね〜!

でも今日も元気に放送していきますよ!』


街の魔力が少しだけ整う。

人々の顔が、ほんの少しだけ和らぐ。


「……うん、いい感じだ」


こういう時のラジオは本当に役に立つ。

魔力のノイズを整え、

人の心を落ち着かせる。


俺はパン屋の前で立ち止まる。

店主が空を見上げていた。


「兄ちゃん 昨夜のドラゴン……本当に帰ったんですかね?」


「帰ったよ。でも、また来るかもね」


「やめてくださいよ……!」


俺は笑って肩をすくめた。


「大丈夫大丈夫。来たらまた警報が鳴るし、逃げればいいんだよ」


安心させるような、させないような返事。

でも、こういう時は軽く返すのが一番だ。



突然、災害により命が奪われる事は無くなった。


前兆を観測する技術がラジオの普及と研究により発展したからだ。


なら、ここからは人類の反撃の時間だ。



◆◆◆



郊外 町はずれの森



踏みしめた土の感触で、私はすぐに違和感に気づいた。

ドラゴンが引き返した地点──そこには、明らかに“人間の戦闘痕”が残っていた。


まず目に入ったのは、

突き主体の剣術で刻まれた地面の抉れと、風穴の空いた木々。


「……突き技。しかも、かなり鋭い」


ドラゴン相手に突きを選ぶなんて、正気の沙汰じゃない。

強力なドラゴン殺しの魔力や呪いが籠った魔剣を所持するなら話が違うが……

痕跡は確かに“人間の剣”のもの武器にドラゴンを殺す意思を持った呪いや魔力を感じれない。


通常の刀剣で突いてできた風穴だ。



次に、ドラゴンと追いかけっこしたような足跡。


大きく跳び、急加速し、急停止する──

まるでドラゴンの動きに合わせて走り回ったかのような軌跡。


「……逃げ惑った? いや……誘導してる?」


足跡の歩幅は異常に大きい。

普通の人間では出せない速度。


その踏み込みは──

鉄靴の二つ名を持つ私と同じレベルの踏み込み。


ただし、足の大きさが違う。

私より小さい。

子どもか、若い男か……。


さらに、鼻をつく匂いがあった。


火薬。


ドラゴンのブレスとは違う、人工的な爆裂の匂い。

爆竹か、発破か、何かの火薬を使った痕跡。


「……魔術じゃない。これは……野生の獣や弱い魔物を驚かせる程度の火薬か」


ドラゴン相手に効果があるようには思えない 大砲を大量に放つのではない。


ドラゴンと対峙する胆力を持った物がとる手段に思えない。


木々の一部は、

鋭い鉱線で断ち切られたようにスパッと切れていた。


剣ではない。

魔術でもない。

何か細くて硬い“線”のようなもの。


複数の武器の痕跡から


突き技主体の私に比肩する踏み込みの剣士

発破を扱う素人

そして糸を武器にする暗殺者の3人組



だが、足跡は全て同じもの。

複数の武器を扱う個人?


「……個人でドラゴンに立ち向かった……?」


逃げ、誘導し、攻撃し、

最終的にドラゴンはその“下手人”を追いかけたが、

捕まえきれず、引き返した。



その“誰か”は、

私と同じ速度で走り、

私と同じ踏み込みをし、

私より小さな足で、

ドラゴンと渡り合った。


そして──

魔力の残滓を調べた瞬間、

私は息を呑んだ。


「……この魔力の揺らぎ……殺気が無い? 悪意も敵意も感じない魔力……?」


違う、彼の筈が無い。

現実にいるはずがない。


だが──

痕跡は嘘をつかない。

ここ2週間、そして昨夜ラジオで流れていた人物像と現場に残された痕跡、魔力の情報から推察すると、ドラゴンと対峙した人物は自分が勤務する街にいる。


私は剣の柄に手を添え、静かに息を吸った。


「……調べるしかない。

あのラジオ局から、当たってみよう」


鉄靴のフリーダからラジオネーム カランコロンとして静かに捜査を開始した。


重要参考人 偽勇者サトーを追って。









◆◆◆ おまけ ラジオネーム カランコロンの投稿ハガキ


『今週の偽勇者サトーの冒険』宛て


ラジオネーム・カランコロンです。


今週、サトー殿が試合しているところを偶然見かけました。

相手は、うちの騎士団でも有名な……まあ、ムカつく上司──じゃなくて、立派な騎士様です。


で、サトー殿なんですが……

開始直後から終始逃げ回りっぱなし。


まともに斬り結ぶ気ゼロ。

ひたすら距離を取りながら、

小手先の技でチクチク突いて回るだけ。


しかもその突きが地味に痛いらしく、上司──じゃなくて騎士様が

「おい待てコラ!」と本気で追いかけ始める始末。


その結果、試合というより、完全に追いかけっこ。


サトーは逃げる、

騎士様は怒る、

私、笑いをこらえる。


サトーはまたチクッと突く、

騎士様はさらに怒る。

私、おなか痛い


最後は、「お前ほんまに勇者か!?」と怒鳴られていました。


でもサトーはサトーで、

「いや〜、真正面から戦うのはちょっと……」とか言いながら、

ちゃっかり勝ち判定だけ持っていったんです。


あの小賢しさ、嫌いじゃないです。

来週も期待しています。



鉄靴のフリーダ


強靭な脚力で大地を踏み込むスキルを持つ。


大地を揺らす震脚に始まり、加速、跳躍、急静止もできる武闘派だが、頭も切れ、魔物の足跡などの痕跡から追跡能力も高い騎士。


優秀な為、上司や同僚の騎士から疎まれている。

そのうっぷんをハガキに書いて投稿するハガキ職人。



ラジオネームはカランコロン。

鉄靴という名前が気に入っておらず自分の足音を可愛く表現したくこのラジオネームにした。


実際にはズトン、ズン、ドォンと巨人の様な足音が響く。


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