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からくり野球〜土壇場のジョーカー〜  作者: 水前寺鯉太郎
1年目

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26/46

第26話:カリブの超鉄人、キューバ戦の衝撃

 世界大会「ワールド・サイバー・クラシック」予選ラウンド第1戦。侍ジャパンの前に立ちはだかったのは、アマチュア野球の雄にして、今や世界最大の「バイオ・アスリート」輩出国となったキューバ代表だった。

 彼らの肉体は、ナノマシンによる筋線維の強化と、重力制御を応用したスパイクによって、人間の限界を遥かに超越していた。

「……これが、世界か」

 ベンチのしみまるは、目を見開いた。

 キューバの遊撃手が、三遊間の深い打球を逆シングルで捕球したかと思うと、空中で体を反転。そのまま時速165kmの送球をファーストへ叩き込んだのだ。

「アウトッ!」

 生身の日本代表打者たちは、その「物理法則を無視した守備範囲」に、ヒット1本を打つことさえ困難な状況に陥っていた。


 0対2。日本はキューバの豪腕投手、ガルシアの前に無安打に抑えられていた。

 6回裏、1アウト二塁。ここで監督が、ついに「切り札」を投入する。

「――代打、しみまる」

 スタジアムが、異様な緊張感に包まれる。

 マウンドのガルシアは、不敵に笑いながら自身の首を鳴らした。彼の首筋には、薬液を注入するためのポートが埋め込まれている。

 

 シュゴォォォォ!

 ガルシアが放った初球。それは、空気の断熱圧縮で白球が焦げるほどの熱を帯びた、168km/hの「ヒート・ファスト」だった。

(……くる。でも、怖くない)

 しみまるの右腕、**『オーガニック・アーム』**が静かに脈打つ。

 以前のバスター・アームのような轟音はない。ただ、しみまるの神経とガルシアの放つ殺気が、一本の糸のように繋がった。

「――同調シンクロ、開始」

 バキィィィィィンッ!!!

 爆音。しかし、それは打球音ではなかった。

 しみまるの振り抜いたバットが、168km/hのエネルギーを「逆流」させ、ガルシアの球威をそのまま倍返しにして弾き返したのだ。

 打球は、音速を超えてライトスタンドへと消えていった。

「……嘘だろ。ガルシアの剛球を、あんなに軽く……」

 キューバベンチが、初めて静まり返る。

 ダイヤモンドを回るしみまるの右腕から、見たこともない「黄金の輝き」が漏れ出していた。

 黒金博士が、ベンチでタブレットを握りしめる。

「……やはりか。オーガニック・アームは、ただの義手ではない。……周囲の『エネルギーの波動』を吸収し、自身の力に変換する恒常性維持ホメオスタシス機構……大和の本当の目的は、これだったのか!」

 相手が強ければ強いほど、そのエネルギーを吸い取り、自身の出力に変えてしまう。

 それは、終わりなき軍拡競争を止めるための、究極の「平和のからくり」。

 しかし、その輝きを目にしたキューバの監督が、ニヤリと笑った。

「……面白い。ならば、我々の『真の姿』を見せてやろう。……第2形態、解放だ」

 キューバの選手たちの全身から、赤い蒸気が噴き出し、彼らの瞳が不気味な光を放ち始める。

 野球場は今、人類の進化を賭けた「聖域コロシアム」へと変貌しようとしていた。

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