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惑星ムンド管理官、転生者を監視する。  作者: 山田村
第五章 歴史

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第51話 スコットランド国 1486年 魔王




 ハーポート湖の集落へ向かう途中、ルビーと並んで歩いていると、半島へ続く道に獣人らしき人影が動いているのが見えた。鼻の利くルビーはすぐに走り出した。


 数分後、ルビーが戻ってきて言った。

「伯父さんに会わせるから、来てくれ。」


 私たちは獣人の後をついてゆき、集落へ案内された。ルビーの伯父から感謝の言葉を受けたが、一族全体が苦しい時期で、満足なお返しは出来ないと告げられた。だが、私もこちらに転移してきた時のことを思えば同じ状況で、その気持ちが痛いほど分かる。だから気持ちだけ受け取り、その場を後にした。


 それからウィローの実家へ向かった。途中で「この道を行くとハーポート湖に向かいます」と言われ、立ち止まって道をまっすぐ見据え、再びウィローの家を目指して歩き始めた。夕方前に町へ到着し、ウィローの母親と面会した。ウィローとの出会い、そしてここへ来た目的を話し、私たちは別室へ移って親子の時間を尊重した。


 翌日は村でゆっくり過ごした。母親のエレノアのはからいで、持参した商品を村で販売できるようにしてもらった。ウィローは客を集め、数時間で大半を売り切り、残りは鍋や家庭雑貨、刃物の修理などを行った。


 さらに次の日、ハーポート湖の集落へ向かうことになり、ウィローとエレノアが道案内をしてくれた。夕方近くに到着し、私たちはひと休みした後、ウィローとエレノアが村の長老のもとへ紹介書を持って訪ねた。程なくして長老たちとの面会が可能となり、集落の集会所へ向かうことになった。


「ようこそ。わしがこの村の代表、イモジェンだ……魔王の末裔だ!」


 長老イモジェンは中年女性のように見えたが、おそらく高齢者だろう。私は簡単に自己紹介を済ませ、本題に切り込んだ。

「魔王に関する伝承を教えてください。あと、魔法についても。」


 その問いに、イモジェンは「話は長くなるから座るがよい」と促し、私たちは椅子に腰を下ろした。彼女は静かに語り始めた。


「魔王とは我らの祖先で、この村から出たことは知っていると思う。祖グリーンは子供の頃、優しく頭の良い、そして魔力の強い子供だった。両親は幼い時に亡くなり、姉が面倒を見ていた。


 ある日、姉が姿を消した。グリーンは島中をひと月かけて丹念に探した。村の手の空いた者も協力し四方を探したが、見つからなかった。だがグリーンには特別な魔力があった・・・召喚魔法。しかしそれは死霊の召喚で、死んだレイスを呼び出すものだった。姉は死んでいるかもしれないと思い、彼は姉を召喚した。」


イモジェンは一度言葉を切り、深く息をついた。


「辺りの空気が変わり、白く透明な影が現れ、それが姉であることが分かった。グリーンが『なぜ死んでしまったのか』と尋ねると、姉は淡々と答えた。

『この島に出入りしていた商人の男に拉致され、スコットランド王への貢ぎ物にされた。抵抗し反抗したら、王に殺された。』


 感情のない姉の言葉を聞き、グリーンは狂った。そこから先は人間を呪い、殺戮を重ね、特に王族には民族浄化のために子を残した。その後のことは、皆が知っている通りだ。」


 イモジェンはそう語り終えると、エラを見つめて小さくつぶやいた。


 「お前は王族とグリーンの血が色濃く出ている。今の話を聞いて、魂が震えただろう・・・同族よ。」


 エラは無言で肩を震わせ、声にならない嗚咽が漏れた。


 私はその場の重苦しい雰囲気を変えたくて、持参していたお茶とお菓子を取り出し、休憩を提案した。イモジェンとエラは黙々とお菓子を口に運び、その音だけが静かな部屋に響いた。


 他の惑星から来た者である私が客観的に見ても、繁殖能力の高い人族が原因であるような予感がした。しかし、エルフの言い伝えを思えば、それは間違いないような気がした。


 ひと休みしてから、イモジェンは次の魔法について語り始めた。


 「我らには、魔法を使えない者はいない。魔力の大小はあるが、人間よりは多い。祖のように召喚に関しては伝承しているが、使える器を持つ者はおらん。古代からの伝承では、術者の魔力が吸い取られる。


 祖グリーンは一人で数体の魔物を召喚し、スコットランド王を倒した。しかし召喚後の疲労で、歩くのがやっとだったと伝わっている。他の魔法も同じで、大きな魔力を使うものは魔力を奪われる。そのために魔道具が発展した。


 当時、聖女グレースが祖グリーンを止めるために派遣され、一時的に事態は収まった。だが王族の裏切りにより、聖女は祖を殺せと命じられた。しかし拒否したことで殺され、そのこともあって、この国の当時の王族は根絶やしにされた。祖は聖女と良い関係にあったと伝わっている。」


 私は最近の聖女の話を交え、現存するワンドの構造や魔力についての憶測を語り、互いに議論を交わした。語り合ううちに夜は更け、ランプの灯りが頼りになった。やがて眠りにつき、朝の光に起こされた。


 イモジェンは「島にはいつ来ても歓迎する」と言い、島民に触れを出すと告げた。ただし「甘味を持参せよ」と付け加えた。


 外へ出て帰ろうとした時、ルビーが目の前に現れた。彼女はウィローと一緒に働く予定で、ウィローの母親エレノアも納得していた。私は馬車をウィローに譲る条件で、持ち込む生活雑貨や剣などの用品を卸し、護衛の娘を雇う条件を提示していた。


 別に金儲けでやっているわけではない。ただ、縁のあった者が理不尽な暴力によって生き方を変えられてほしくない・・・その思いだけだった。


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