第50話 スコットランド国 1486年 討伐
マシューが盗賊団をギルドへ送る前に、町の拠点を襲撃することになった。裏口の見張りは私とエラ、突撃はマシューとバレリアだ。
マシューが一階、バレリアが二階を担当する。二階には二名、一階には三名の手下がいたが、光学迷彩のマシューが
「はい、一丁上がりっと」
マシューが手を払うようにして言う。見えないマシューを必死に探すが続く二人も速攻で殴られ、うずくまり倒れ、そのまま素早く拘束された。
二階はちょうど“お楽しみ”の最中で、バレリアは二人の脳に性的達成感を連続して与え、抵抗できない状態にして拘束した。
二階から「片付きました」とバレリアの声がかかり、エラはすでに家探しを始めていた。
「ほれ見ろ、また金貨が出てきたぞ。ほんと盗賊の家は宝の山じゃ」
お宝を回収し、私たちは素早くその場を離れた。
次は取引先だ。ここが少し厄介だった。奴隷商にも正規と潜りがいるらしい。商業ギルドの情報では、違法な迂回ルートを使い、正規店に奴隷を流している人物とのことだ。
紐付きの相手がいるのではと心配していたが、それも望むところだと全員一致した。
夜になる前、奴隷商の家を包囲し、マシューが突撃した。
「じゃ、行ってくる」
マシューが軽く手を挙げて突撃し、護衛三人を一撃ずつで沈めた。
残る奴隷商を拘束する。
バレリアは護衛を縛り上げ、奴隷商に自白作用をかけて背後関係を聞き出した。やはり地元貴族との繋がりがあったらしく、今後のお楽しみが増えた形だ。
エラは家探しを終え、袋を抱えて戻ってきた。
「金と書類、全部回収したぞい。さっさと帰るか」
早朝、私たちは地元男爵家の中にいた。光学迷彩のおかげで、中の者は全員ぐっすり眠っている。
私たちは家探しをして関係書類を探し、バレリアは男爵の自白内容を確認していた。
「こやつにはもったいない! 魔道具は回収じゃ」
エラが魔道具を抱えて嬉しそうに言う。
男爵には「神からのお告げで、告白しないと救われない」と言って自白をするように脳に指令を送りコントロールをした。しかも、自分が苦手としているこの地方貴族たちの前で、自らの悪行をすべて告白し、罪を償うように設定した。明日には自首するはずだ。
その日の全てを終え、拠点へ帰った。
翌日、マシューとは別行動で、救い出した女たちを一人ずつ家に帰していった。そこには様々な物語があった。
「よかった……! 本当に無事で……!」
町の娘は親に抱きしめられ、泣き崩れた。
別の女は夫に怒鳴られた。
「どの面下げて帰ってきた!」
「……ごめんなさい……」
彼女は家に入れてもらえなかった。
子どものことで泣いていた女も、家から拒否された。
「帰ってくるな!」
「そんな……!」
次の娘は、家の前で震えながら言った。
「……怖い。帰るの、やめます」
残りの者は無事に帰ることができた。
問題の二名――一人は猫獣人のルビー。
彼女は去年、全長二百メートルの害獣が島に上陸し、島を岩と土の塊に変えてしまったとき、一族がバラバラに避難している最中に拉致された。
もう一人はスカイ島の住民、ウィロー。
彼女は商人ドランの娘・インヴァネスの商店で聞いた、あのドランの娘だ。ドランは娘を守って殺され、ウィロー自身は先週から監禁されていた。
二人とも帰りたい気持ちはあるが、ルビーには帰る家がない。
ウィローはインヴァネスの商店の奥さん、シエナに連絡してから帰りたいと言った。
帰れなかった女性たちは、カイルの町で仕事が見つかるまで第二拠点で面倒を見ることにした。
私はウィローにスカイ島の現状を聞いてみた。南西部のハーポート湖の集落の族長のことも含めて尋ねたが、族長は知らないらしい。
「島はエルフ以外住んでいない」
ウィローは言葉少なめにそう返した。
翌日からインヴァネスのシエナの所へ向かう。ウィローは意外と足が速く、馬車もないのに二日でインヴァネスへ到着した。宿を取り、翌朝一番でシエナの所へ向かう予定だ。
朝一で訪ねたウィローは、今回の経緯を時間をかけて話していた。私は外でお茶を飲みながら、終わるのをじっと待った。
昼前、少しスッキリした顔のウィローが出てきた。シエナに見送られ、私たちはカイルの町へ戻った。
ウィローは、今後も行商人を続けるつもりだと、小さな声で自信なさげに話してくれた。
「ウィロー、私の家に夫婦の管理人をしている人たちがいるでしょう。あの夫婦の身内で、今度こっちに来る娘がいるの。もしよかったら、一緒に商売させてくれない? 剣の腕はいいんだけど、商売の腕がねー……。あ、今すぐじゃなくて、来月からだけどね!」
ウィローはしばらく考え、「今は何もお返しができませんが、お願いいたします」と頭を下げた。
数日後、ウィローと私たちはスカイ島へ向かった。船には馬車を載せ、数時間の船旅だ。肉眼で島が見える距離だが、北の冬の海は荒れやすい。
馬車には、野菜と雑貨、焼き菓子、剣やナイフ、簡易鍛冶道具を積んでいる。そして、すっかり元気になった猫獣人のルビーも同行していた。
「捕まった時は丸腰だったから……」
そう言う彼女の腰には、私が作った高級品の短剣が二本ぶら下がっている。暇さえあればマシューやバレリアに挑んで鍛錬しているようだ。
港に入ると、ウィローを先頭に知り合いの家へ向かった。私たちは家の前で待ち、ウィローが出てくるのをじっと待った。
しばらくして、泣き顔のウィローと年配のエルフ女性が現れ、丁寧に挨拶をしてくれた。感謝の言葉を述べ、「我々にできることは何でもする」とまで言ってくれた。
「私は単刀直入に言います。魔王の里へ行って、魔法のことを調べたいんです」
「わかりました。長老宛に手紙を書きます」
そう言って、エラをじっと凝視する。
「なんじゃー、お前もわしの顔がそんなに似ていると言うのか。ほれ、耳はふつうじゃ」
エラのいつもの調子だ。
「ほう……声も似ておるな。あっ、後ろの猫獣人。お前、ルビーか?」
「そーだけど、なんで名前知ってるの?」
「話は長くなるが、昔、猫獣人と我らの間に“誓い”があってな。困った時は互いに助ける、というものだ。島を追われた者をこの島で保護していて、主に南の半島に集落を作っておる。
そこで、もしはぐれた者が訪ねてきたら、集落の場所を教えてやってくれ――とな。お前の他にも数名いたが、お前以外は分からなくてな。お前の伯父さんが心配していたぞ」
その話を聞いたルビーは、飛び上がって気勢を上げ、心の底から喜んでいた。




