第49話 スコットランド国 1486年 問題
このドワーフ女の話は、そんなに難しい注文ではなかったが、
「あなた、これから仕事を見てたら夜になるよ。帰りはどうするの?」
と聞いてみた。
すると女は、
「軒下でも貸してもらえれば、そこで寝ます。食事は隣のギルドで間に合います」
と平然と言う。
「あなた、今、冬よ。外は無理でしょう」
と言うと、彼女は胸を張って答えた。
「ドワーフは外気に左右されない丈夫な種族ですから平気です。私もこの通り薄着で年中過ごしています。むしろ服なんか無くても平気です」
どうも、地元のドワーフ族とは大分人体構造が違うようだ。
「体のつくりが違うみたいだね……」
と考え込んでいたら、マシューが声をかけてきた。
「おっ、ドワーフの人か! 母上から頂いた剣も、ドワーフに作ってもらったんだ」
「マシュー、私もドワーフだよ。言わなかったっけ?」
「え、あり得ない。我らと同じじゃないか?」
私はドワーフの女をその場に置き去りにして、マシューを奥へ連れていき祖国の話をした。マシューも納得したので、置き去りにした彼女のところへ戻る。
「先ほどドワーフと言ってましたが、混血してもあなたのようになった事例はありません。あまり変なことは言わないでもらいたい」
と抗議されたが、無視した。正直、説明するのが面倒だった。
改めて自己紹介をすると、北部コーウェン出身のポピーという女性だった。筋肉質の小柄な男性と勘違いしていたが、そこは言わない方が良さそうだ。
その後、仕上げが必要な普通剣と、直し用に預かった剣を簡単に直しながら、ふと思った。
高級品以下の製品なら仕上げることができる。ポピーに仕上げ前まで作ってもらい、私が仕上げれば、お互いにとって良いかもしれない。
「ポピー、提案だけど話を聞いてくれる? 今考えたんだけど、製品を仕上げ前まで作ってもらえれば、あなたの仕事を見られる。そして私が仕上げをすれば、あなたが見られる……どう思う?」
ポピーは目を輝かせた。
「いいかも。いろんな材質や形の物を見てもらえれば、私の弱点に気づけるかもしれない」
その後、ポピーに剣を作ってもらって気づいた。
――魔力を使っていない。
どう伝えていいのか分からず、見てもらうしかないか……。
その日は部屋と食事を与えて休んでもらった。
翌日、エラが合流したので、ポピーの話をした。朝食を取りながら質問してみる。
「エラは、体から魔力の流れや、物に流れる魔力って見える? それと、見えるようになるにはどんな訓練した?」
エラはデザートを持ってきながら答えた。
「あのドワーフ娘のことか。見えるというより、感じるかのう……おやつ」
テーブルに皿を置き、続ける。
「ワンドを振る感じだと、お前たちのトンカチに似てるかもな」
なるほど、そうかもしれない。流石、年の功だ。
「男爵様に会ってきたんでしょう……どうでした?」
「アップルパイを追加で。例のワンドを検証・解析して国王に報告し、その成果が認められたら辞めることを許す。そしてワンドを国王に献上すること……という具合だ。あれを分析するのは骨が折れるぞ。数年はかかるじゃろうて」
出かける前にポピーへ、普通剣を毎日二本作るよう頼み、私たちは北の冒険者ギルドで依頼を探した。討伐依頼が一件あり、職員に詳しい内容を聞くと、北三十キロ付近の道に山賊が出るので討伐してほしいとのこと。生け捕りなら報酬が倍になる契約だ。マシューは即断し、北へ向かうことになった。
目的地の上空から探ると、西一キロの森の影に、複数の反応が揺れていた。ここから歩いて向かう。しばらく歩くと、
「左に五人、右に十人」
とバレリアが告げた。マシューが左へ向かい、右は固まっているのでエラが麻痺魔法をかける段取りになった。
工学迷彩で近づき、一斉に攻撃。右は麻痺状態をバレリアが拘束し、左はマシューが足を攻撃して動けなくしたところへ、エラが麻痺魔法を追加した。全員を拘束し、一番身なりの良い者にバレリアが脳に自白作用をかけ、アジトや隠し財産、町での拠点と取引先を自供させた。
山賊を眠らせて船に放り込み、近いアジトへ向かう。留守番は三人。エラと私で麻痺魔法をかけ、マシューとバレリアが拘束して船へ運んだ。そこからはエラがお決まりの家探しをして戦利品を回収した。
だが、一つ問題が見つかった。バレリアが指さした奥に、数人の女性が檻の中で震えていた。山賊のお決まりだ。
とりあえず洗濯魔法をフルパワーでかけ、船に乗せて第二拠点で事情聴取した。結果は前の山賊と同じで、全員が近くの村や町の拠点から攫われていた。総勢七名。今回は全員が家に帰りたいと申し出た。長い者で一ヶ月、短い者は十日間軟禁されていた。
彼女たちは慰み者にされた末、奴隷として売られる運命だった。家に幼い子供がいるという女性は、泣いて私の腕を掴んで離さなかった。夫や親にどう思われるか心配して暗い表情を浮かべる者もいた。問題はあと二人――これは後回しだ。
山賊は三日後、マシューと管理人の二人でギルドまで護送した。




