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惑星ムンド管理官、転生者を監視する。  作者: 山田村
第五章 歴史

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第48話 スコットランド国 1486年 来客




 オリハルコンのワンドと剣を製作した翌日、私たちはウェールズの鍛冶屋に戻り、地下に風呂と寝室の拡張工事をおこなった。寝室を作るつもりはなかったが、エラが「お前らの交尾の声、聞きたくないから新しく寝室を作れ」と要求したため、追加工事となった。保護した村娘ハンナも、まるで昔からここに住んでいたかのように馴染んでいた。今は十二歳ほどに見えるポールと二人で過ごしているが、時折ラシーヤが出入りしてホローしているので、特に問題はなかった。


 エラと共に魔法の店へ入ると、アンナが床掃除をしていた。

「アンナ、ご苦労様。綺麗になったか?」

「おばさま、言われたとおり週一回やってます。お土産は?」


 そこで「イザベル、頼む」と言われ、私はウィッカーバスケットに入れたお菓子とワンドを渡した。チェック柄の布をよけて焼き菓子を取り、パクリと食べたアンナはにっこり笑って話しかけてきた。

「イザベルが作ったの?やるわねー。家で雇ってもいいかも。」


 エラが口を挟む。

「お前はまだ早い。それに中を確認したか?」

「なに?……なにこれ、古いワンド……にしては形が変?」

「アンナ、これを見て分からんようでは扱うには早いな。これは聖女グレースのワンドだ。壊れていたのを直したものだ。」


 アンナは沈黙し、急に真剣な眼差しでワンドを確認した。

「おばさま、これをどこで?」


 しばらく沈黙した後、エラが答える。

「わしらは歴史を研究している。……それ以上は研究成果が具体的になったら教えてもいい。」

「今わかっていることを教えてください。私も研究者の一人として知りたいのです。」

「アンナ、研究所を辞められるのか?出来んだろう。」


 長い沈黙の後、アンナは言った。

「辞めたら……教えてくれますか。」

「辞められたらな……イザベル、わしもお菓子が食いたくなった。あの、ほれ、プリンを食いたい。はよ帰ろう……またな、アンナ。」


 そう言って店から数冊の本を持ち出し、鍛冶屋へ向かった。翌日、アンナが鍛冶屋を訪ねてきたらしいが、私たちはスコットランドの冒険者ギルドで仕事を探していた。バレリアから「明日の三時頃また来る」と聞き、エラに伝えると、

「要件だけでも聞いてやるか!」

ということで、急ぎ戻ることにした。


 三時、鍛冶屋に戻ると店の前に仁王立ちするアンナの背後からエラが声をかけた。驚いたアンナは「ぎゃー」と叫び、エラに「これ!はしたない男爵令嬢か」と叱られ、「失礼しました」と小さく答えた。

「話はなんじゃ。辞めたんか?」


「これ!国宝級の物です。少し使ったら大変な威力で……」

「なんだ、そんなことか。イザベル、お菓子を出してくれ。」

「エラ、少し食べ過ぎですよ。体に良くないよ。」

「そこを何度か頼む。頭を使うと甘味が恋しいのじゃ。」


 レアチーズケーキを切り分け、ハンナに配ってもらった。私たちは奥のテーブルでお茶を楽しむ。ハンナはケーキを知らなかったが、今ではこの習慣にすっかり慣れ、ここから離れられないと言っている。エラたちは黙々とケーキを食べ、まったりとした時間を過ごしていた。紅茶のお替りを持って行くと、エラが追加のケーキを要求してきた。客も来ていたので渋々出してやると、私は「特別ですよ(怒)」と告げ、ガラスの皿にフルーツタルトを二つ置いて奥へ引っ込んだ。


「おばさま、毎日こんな甘味を食べて……」

「うるさい。わしの研究には甘味が必要だ……」

「私、決めました。研究所を辞めて、おばさまと研究します。お父様に今日話します。」


 さて、どうなるか。エラによれば研究所は男爵家の指定席で、後継者がいないと辞めるのは不可能らしい。あのワンドを研究して国王に報告すれば、それなりの評価が得られるはずで、今回の召喚の穴埋めになるだろうと話していた。エラは「弟に会ってくる」と言い残し、出かけてしまった。



 次の日、冒険者ギルドにスカイ島関連の依頼があれば連絡を頼み、鍛冶屋に戻った。するとポールがやってきて、「お客みたいな人が訪ねてきた」と不思議な言い回しで伝えてきた。何だろうと思い店先に向かうと、こちらをじっと見ている小柄な若い男が立っていた。


「何か用ですか?」とイザベルが問いかけると、甲高い声で答えた。

「私は、ここで仕上がった剣を拝見したくて参りました。」


 剣――客か。私は普通仕上げと上級仕上げの剣を一本ずつ順番に見せた。男は丁寧に下から上まで、裏表をじっくり観察している。

「これは標準剣の見本品です。望むなら、この上の品も見ますか?」


 その問いに男は少し嬉しそうにして、「是非」と答えた。私は奥から、悪戯心で作ったミスリルと鉄の三枚合わせ仕上げの業物を取り出した。これは高級品として奥に寝かせてある非売品だ。売り物は鋼の高級品で、貴族用にギルドへ卸している。一本目の鋼の剣をじっくり見ている姿に、同業者かと思い尋ねてみた。


「はい、そうです。ここに凄腕の鍛冶屋が出来たと聞いて、実物を見たい欲望が……すいません。」


 そう言って、布に包んだ剣を取り出し私に渡してきた。

「初対面でこのようなお願いをするのは申し訳ないのですが、これの感想を聞きたいのです。」


 それは普通サイズの鉄の剣で、高級品にはなり切れていない出来だった。私は剣を作るプロセスは説明できないが、状態は分かる。それを伝えると、本人も自覚しているらしく、壁にぶち当たっているような仕上がりだと認めた。


「私は弟に工房を譲って修行に出る予定です。同じ女性で巧の噂を聞いたからには、なんとしても技能のモヤモヤを解消したい。その一途な思いで来てしまいました。」


 私が黙って聞いていると、彼女は続けた。

「私はドワーフ町として有名な北の町で、五代続く鍛冶屋の娘で修行中です。本来、ドワーフが他族の鍛冶屋に教えを乞うのはルール違反ですが、そんなことには構っていられません。」


 私は別のことを考えていた。もし自分がここに生まれていたら、目の前の彼女と同じ容姿だったかもしれない。ああ、管理官に感謝を――そう祈るような仕草をした。


「あの、すいません。聞いていますか?すいません、一方的にこちらの都合ばかり話して。」


 言っていることは理解したが、こちらもこの女に合わせて生きるわけにはいかない。

「ああ、ある程度は理解した。それで何を望むの?今、私は魔法使いの手伝いで留守が多いのよ。」

「忙しいのはよくわかります。一度、仕事を見せてください。それと、私の仕事も見てください。」




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