第43話 スコットランド国 1485年 北の国
我ら四人は今、スコットランド国のインヴァネスで情報収集と食糧の補充を兼ねて滞在している。誰一人スコットランド人がいない現状を打開するには、地道な情報収集が重要だ。ここまでの道中は、約三キロ手前の安全に着陸できる地点から徒歩で向かう計画だった。約一名・・・エラ・・・がグズったが、無視だ。
我らは冒険者の「グレン・ヴァリアント」。ウエールズの冒険者ギルドで、地域の魔法店の変人エラがチーム登録をした。登録の際、エラが「エラと四人の仲間達」と妙なネーミングを付けようとしたら、ギルド職員から「全員で五名ですか?」と聞かれた。私は「ラシーヤは行動を共にしません」とエラに伝え、名前の変更を要求した。各自に名前を聞いたところ、マシューは「ブラッディ・シャドウズ・レジェンド」・・・中二病っぽくて少しダサい。エラは「エラと冒険クラブ3号」。バレリアは「グレン・ヴァリアント」。私はバレリア案が気に入り、これを推したらエラ以外は納得したので決定した。リーダーはローリー・・・つまりマシューに任せた。
マシューのことに関しても、エラは激オコだった。偽名で正体を隠したこと、仲間外れにされたこと、さらに今回の戦争の代表者だったことも含めてカンカンだったが……結局おやつを要求してきたので、シュークリームを山ほど与えたら簡単に納得した。悪い癖がつきそうだが、おやつで気持ちが変わるなら安いものかもしれない。それにしても、エラは変人だが愛国者の一面もある。
話を今に戻そう。インヴァネスの市内に入るため、衛兵による簡単な質問と身分証の確認を受け、滞在税を払って町に入った。まずは冒険者ギルドに入り、依頼表を確認しながら自治区の情報を収集する。エルフ自治区は魔王誕生以来、閉鎖的な地域だと聞いている。そこでギルドや商業ギルド、町の住民にも確認するつもりだ。
宿では今日の成果をバレリアにまとめてもらった。自治区での注意事項は、外部からの住民への過度な警戒と監視、不法侵入者への警戒。自治区への行き方は、カイルから船でスカイ島へ渡る。護衛の仕事を受ければ確実に入国できるが、護衛依頼は少ない。それが自治区に入る唯一の手立てだ。そこから魔王が生まれた集落へどう向かうかは、まだ未定である。
カイルまでの護衛依頼はあるので、簡単で安い仕事を受け、二日後に出発することにした。事前に依頼主と顔合わせを兼ねて町をぶらついた。店に着き、店主に注意事項を聞いたところ、途中にはノクティルヴズという狼の群れや山賊――土エルフ――が出るらしい。運が悪ければどちらかに遭遇するとのことだ。
さらに店主にスカイ島について尋ねると、馴染みの雑貨屋が取引しているらしく、照会してもらった。数分歩いて紹介された雑貨屋に入り、店主にスカイ島のことを聞くと、奥に声をかけて奥さんを呼んできた。出てきたのはエルフの女性だった。
「なんだい、父ちゃん。ん!……違うみたいだね。」
エラを凝視して固まっていた。
「なんじゃ、おまえ~。わしの顔に何かついてるんか。」とエラが噛みつく。
「えー、気持ち悪い。声まで似てるよ。何、エルフじゃなさそうだけど。」と耳を指す。
「わしは生まれも育ちもウエールズじゃ。ご先祖様からずっとそうじゃ。」
奥さんは沈黙した後に言った。
「何ね~、私が島で行商人をしてた頃、南西部のハーポート湖の集落の族長とよく似てたから、びっくりしただけさ。でもね、旦那と知り合ってからずっと帰ってないから、今どうなってるか分からないよ。」
エラは沈黙し、何か考え込んでいた。私は尋ねた。
「あの奥さん、行商人をしていたんですか。どんなものが売れるんですか。」
「そーねー、基本何でも売れる。特に野菜。水のせいかどうか知らないけど、同じ葉物野菜でも地物はえぐ味が強くて、持って行くとすぐ売れたわ。あとは甘い物。それと鍛冶屋が一軒しかないから、鍋とか刃物も売れるわ。詳しいことは今月来るドランが一番詳しいよ。」
まさかスカイ島の住民に会えるとは思わなかった。売れる物やその他の情報も参考になった。私は鍛冶屋に戻り連絡を取り、金物の制作を依頼して後で届ける手筈を整え、宿の部屋で食事を取り、その日を終えた。
当日の明け方、待ち合わせをしていた我々の元へ、店主が馬車でやって来た。到着と同時に簡単な挨拶を交わし、目的地へ向けて出発する。
馬車で一時間ほど移動し、峠の手前で休憩を取った。ここから先は人が少なくなる。エラがあまりにもぶーたれるので、飴を与えて黙らせた。ボディスーツで身体強化できているはずだから疲れないはずなのだが、「エラだから」と諦めるしかない。
峠を越え、開けた場所で少し早いが再び休憩を取る。するとバレリアが言った。
「大型の四足歩行の群れが前方三キロにいます。」
マシューが問いかける。
「こっちに気付いているか?」
「待ち構えています。多分、馬が目当て……それと私たち。」
「迎え撃って撃退しましょう。わたしはここを守ります。マシューは店主に報告と撃退を。エラとイザベルもお願い。」とバレリアが指示を出す。
「私、戦えるの?」・・・戦ったことがない私は不安だった。
「大丈夫です。イザベルの装備は軍仕様です。獣程度では体に触れることはできません。ここでどんなものか体験して下さい。マシューとエラも同じです。」
ここで張り切ったのはエラだった。
「いよいよワンドの出番じゃー。森だから火はダメだな~」
そう言ってワンドを取り出し、振り回していた。




