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惑星ムンド管理官、転生者を監視する。  作者: 山田村
第五章 歴史

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第41話 ウェールズ国 1485年 つながる




 ラシーヤはマシューへの聞き取りを再開した。主に母親の研究や本人の魔力のこと、そして初代勇者覇王ミラーの末裔であるかどうか――もろもろの調査を進めていた。


「では、現地で活動するメンバーを紹介します」

 そう言って、私たちはマシューの前に姿を現した。順番に自己紹介をしていく。


「左からイザベル、バレリア、そして私がラシーヤ。よろしく。それと、これ着てちょうだい。裸だと不便でしょ」


 ラシーヤはそう言って、腰から下へ視線を送った。


 私は、まずバレリアがマシューを発見し、ここで治療したことを伝えた。そして、これからの予定を説明し、その前提となる話をした。私たちが別の世界から拉致され、帰還のために転移や召喚、魔法といった一連の謎解きの最中であることを告げた。


 マシューは問いかける。

「それでは、あなたたちは勇者なのですか?」


 私は答えた。

「そうかもしれない。しかし、私には物を作る力しかない。バレリアは無敵のアンドロイドだ」


「アンドロイド?」


「人の心を持つ人形だ」


 マシューは沈黙した。


「害獣退治のために呼ばれたが、その害獣はマシューの言う神が退治した。我々は神のことを管理官と呼んでいるが、マシューの初代勇者覇王ミラーは管理官と面識があると思う。そこで質問だ。ラシーヤに話した以外で、転移や神に関して見落としていることはないか?」


「……わからない。母なら何か知っているかもしれない」


 私はマシューの協力を得て、母を訪ねることにした。向かう前に、保護した時の装備品――ボロボロの服と甲冑の一部、剣と靴を返した。王から頂いた短剣がなかったかと聞かれたが、身につけていないと答えた。剣以外は役に立たないため破棄し、剣も刃こぼれしていたが「母からの頂き物なので捨てられない」と言うのだった。


 私はマシューの気を引きたくて、剣の修復を申し出た。鍛冶屋に戻り、魔力を込めて修復を施す。グレードが上がった剣を渡すと、剣豪だけあって出来栄えを一目で見抜いた。ベテランの鍛冶屋には見えない私が目の前で仕上げた剣を見て、私の価値を示せたことに満足した。まるで鉄の斧が金の斧に変わったような感覚だ。マシューも蘇った剣に満足げだった。


 その日は鍛冶屋で食事を作り、夕食をご馳走した。普段のお城の食事より食材のランクは下がるが、味には自信がある。酒は要塞から仕入れたワインを開けた。マシューも満足し、「王宮の料理より美味い」と褒めてくれたので気をよくした。


 酒で血行が良くなり、気分が盛り上がる。自制していた理性のブレーキがふっと外れ、その夜は久々に人肌を感じながら眠りについた。



 次の日、裸のマシューを見て、少し罪悪感が頭の中をスーッと通り過ぎたが、気にしないことにした。マシューも同じだろう。政略結婚でも妻は妻だ。しかも、皇太子派の伯爵の娘で、スパイのような女である。子供がいないだけ、まだましかもしれない。


 私たちは、マシューを発見した地点に死体を確認する者が来ることを予想して、監視を継続していた。翌朝、軍の調査隊がヘルメットと甲冑の一部、それに短剣を回収して軍へ戻ったと報告があった。それをマシューに伝えると、


「短剣その他は自分の遺品として回収されたと思う。死体は獣が持ち帰ったと普通思うだろう。死人確定だな」


 マシューの話は王宮にはまだ流れていない。それは遠征から軍が帰っていないからだ。あと一週間はかかるだろう。


 迷彩モードで中庭に入り込み、母親が研究室にいる時間を狙って訪ねていった。部屋に一人でいたマシューが声を掛ける。


「マシューです。母上」


 一人でいた母ソフィアは驚いて声を出そうとしたが、指を口にあて「静かに」のポーズを取ったので、声を上げずに落ち着いた。その後、自己紹介を簡単に済ませ、今生きてここにいる経緯を話し、これからの対応について考えを伝えた。


「ソフィア様、万が一を考えてここに身代わりを置きます。いかがですか?」


「身代わり?すぐにばれると思いますが……そんなに危険なのですか?」


「危険は一割ほどです。それと、私たちは魔法の専門家の協力者を求めています」


「分かりました。息子マシューの命の恩人に協力します。ただ、私の研究は魔法の流れや放出、害獣と魔力の関係についてです。召喚や転移は専門外です。ただ、私の友人で専門家がウエールズにいます。魔法使いエラを紹介しましょう」


 つながった――ガメババァを思い出した。ソフィアの魔法に関する資料を拝見し、すべてコピーした。そしてソフィアはここに残ると伝えてきた。マシューは心配したが、彼女はかたくなだった。危険な場合は救出するから従ってほしいと念を押して退散した。


 私たちは書状を受け取り、未回収の魔石鉱山に向かった。少し奥まった、何の変哲もない場所だったが、地点を掘ると二メートルほどで当たりが出た。必要な分量を採取して偽装し、撤退した。鍛冶場で魔石を分析すると、魔力の地場を形成し、ミスリルのような増幅の補助役を果たすなど、多機能の働きをするようだった。


 エラへの贈り物に選んだのは、高性能タイプのワンドだ。魔石の地場増幅を利用し、ミスリルの機能を後押しする物を作ることにした。ミスリル加工は魔力を利用して行い、完成まで二時間ほどで仕上がった。地下で灯火のテストをしてみると、明るくてまぶしいほどにパワーアップしていた。バレリアの計測では普段の灯火より約十倍と測定され、多分驚くだろう。


 緊張が解けた安堵の中で、次の贈り物を思い描いた。「明日は新作の柔らかいケーキもお土産にしよう」そう思い描きながら、マシューに抱きついておやすみした。


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