第33話 ウェールズ国 1485年 光
バレリアから剣の手入れを頼まれ、勇者の方へ向かった。
勇者オリバーが渋い低音の声で言う。
「この聖剣ドンブレイカーを手入れしてもらいたい。この剣は見た目こそ普通の鉄に見えるが、私が力を込めると聖なる光が発生し、邪悪な者を切り裂くことが出来る聖剣だ。くれぐれも丁重に扱ってくれ。」
そう言って渡された剣は――派手な装飾をしたなまくら剣? 中ほどに大きな亀裂があり、ハンマーで叩けば折れるだろう。振り回しても折れそうだ。
「この聖剣、ここ割れているよ。本格的に直さないと砥ぎも出来ないよ。」
勇者オリバーは重苦しい表情をしながら――
「やはりそうか。修復すると何日かかる? 十日以上かかるか! 当然そうなる。いやー残念、明日の討伐隊参戦が叶わないな。実に残念・・・」
「銀貨五枚、一時間で仕上げるよ。」
勇者オリバーが慌てた様子になり、
「一ヶ月、そんなに待てない。他を当たるとしよう。邪魔したな。剣を・・・」
そう言って剣を鞘に収める動作をし、ゆったりと大きく円を描くように振り回すと――「ドサッ」と地面に剣の先端が落ちた。勇者は一瞬動きを止め、何もなかったように剣先を拾い、振り向かずに立ち去っていった。
「安い金額にしたのに・・・コメディ? ショートコント?」
あー・・・調子狂う・・・。
水を一杯飲んで気持ちを切り替え、続きの作業を始めた。午前でノルマを達成し、休憩に入る。バレリアとあの勇者の話をしながら――
「次はちゃんとお金を払ってくれる人が来るといいね。あと、討伐隊は明日から出かけるのか? 槍の納品最終日まで七日あるからな。冒険者ギルドに聞いてみるか、営業も兼ねて。」
それから隣の冒険者ギルドの受付で簡単な自己紹介と営業をしてきた。討伐の受付は今月初めから募集していて、八日後に冒険者たちはここから出発するらしい。討伐を成功させれば報酬はすごいが、その分危険だと教えてもらった。まぁ、当然だよね。
それと勇者オリバーの話をしたら、有名人らしく彼を知らない人はいないらしい。ただし「口だけ勇者」としてだけど。
ギルドから一番近い鍛冶屋として宣伝し、帰ろうとしたら――微振動でカタカタ音が聞こえ、少し弱い地震が来た。ギルドの職員は壁やテーブルにしがみつき悲鳴を上げていた。私はギルドの建物が不安だったので外へ急いだ。すると目の前に天から一筋の光が地面へ降りているのが見える。空気が震え、耳鳴りもしてくる。
あー、管理官の「数日後、脅威を消す」ってこれか。すかさず爆風が怖いから丈夫な石垣の陰に隠れ、数分やり過ごした。爆風は来なかったので立ち上がると、目の前を通るおばさんに「何やっているの?」みたいな目で見られ、変人扱いされた。
ギルドから鍛冶場に戻り、チャールズから仕入れた鋼を使って包丁数本と剣の上物を数品作り、見本とした。鉄では鍋やフライパンなどを作り、全てチャールズに売り込むつもりで仕上げた。午後の仕事も終わり、食事をして休んだ。
朝になって、いつものチャールズが来ない。何かあったのか不明だが、昨日害獣が討伐されたら槍の需要がなくなる。それ絡みだろうと予想する。買取が不要になれば支払い条件が変わる可能性が高いなーと悩んでいたら、噂のチャールズが現れた。
案の定、槍は終わりで昨日までの分は買い取るとのこと。取引条件は差額支払いと、鉄は買い取りか回収かを聞かれたので、買取希望で支払い。お金の余裕がないので昨日の包丁や鍋、フライパン、剣などを買い取ってもらえるか聞いてみた。数点買い取ってもらえた。剣の評価が高かったので差し引きプラスとなり、赤字を免れてほっとした。
例の害獣のことだが、光の線が対象に当たり、数分後に頭から消えていったそうだ。地元の多数の目撃者からの聞き取りなので間違いないらしい。それから、国王の宣言を教えてもらった。
「この不思議な現象は神の裁きである。害獣は消え、我が国は神の力で守られた。」
ちゃっかり政治利用しているよね。たくましいね~。
改めて、これからが鍛冶屋としての勝負になる。気を引き締めてやっていこう。キリッ! と気合を入れていたら、バレリアが、
「イザベル、ちょっといいですか。宇宙要塞から連絡がありました。」
「えっ! それじゃあ物資の確保、期待できるね。」
「はい、その通りです。確認済みです。」
「じゃ~! 楽できるね~」 ニターと微笑んで、緊張感から解放された。




