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惑星ムンド管理官、転生者を監視する。  作者: 山田村
第四章 転移

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第32話 ウェールズ国 1485年 灯火魔法




 長剣の女は、普通の剣をじっくりと見て納得していた。アンタの長剣は普通より劣る剣だから当然だろう。次に上級を見た。……なんか汗かいてないか。少し素振りをしていた。


「どうですか。納得しました」


 ……沈黙。バレリアが口を開いた。


「長剣のあなた、その剣の方が体に合っていますよ」


「自分も感じているが、伯父から頂いたものなんで……」


「命を守る武器は、自分に合ったものを選ぶべきです」


 その通りなのだが……。


「分かった。この剣を、いくらだ」


「金貨二枚です」


「分かった、では……」


「初のお客様なので、こちらを。今回だけですよ、宣伝してください」


 そう言って上級を渡した。


「いいのか、それは見ただけで分かる上物だ」


 私はニコニコしながら頷いた。


「イザベルです。隣はバレリア」


「冒険者のオリヴィアだ。よろしく」


 三人は帰っていき、私とバレリアは戸締りをして、その日を終えた。



翌朝も慌ただしく始まった。チャールズが材料を追加で届けてくれた。明日も材料を届けるから、出来上がりを朝に持っていく。その本数を指定して、預かり証を渡す方向でお願いされ、了承した。


 使用した鉄の代金を払い、鉄に代わる他の金属があるのか聞いてみたら、ミスリルがあるという。ただしここでは鉱山がなく高価らしく、人気はない。主に魔法使いが使うらしいが用途は不明だ。鉄より少し硬い鋼があるらしく、次回持ってきてもらうことにした。


 午前に十五本作りノルマ達成。午後からエラの店に行くことにした。



「エラ、魔法を買いに来た」


 バレリアはテンションが高い。私は一歩下がっている。


「あら、いらっしゃい。久しぶりにお金を払ってくれる人が来たわ。イザベル、今日もステキ」


「洗濯魔法をお願いします。その前に妊婦には影響はないですか」


 エラが怪訝な顔をした。


「イザベル、あなたなの?それで分かった、あーそれで納得。私ね、妊婦の香りに弱いのよ。なんか興奮して思考が乱れるの。原因が分かれば軌道修正できるから、普通に戻るわ。ふぇーふぇふぇふぇ」


 やっぱり危ないじゃん。


「洗濯魔法は子供から老人、家具や寝具も問題ないよ。今からやる……」


淡い青白い光がふわりと浮かび、壁に柔らかな影を落とした。

 

私は緊張しつつ覚悟をきめ、軽くうなずいた。バレリアはまばたきをせず集中していた。エラが小さな声でもごもごと唱え、その時はきた。なんかすっきりしたような気分になり、汚れがなくなった気持ちになった。何の痛みも負担もなくて安心し、だた不思議だった。


「はい、銀貨一枚」


 ガメババァ……感動の余韻が覚めた。


 バレリアは状況を説明してエラに質問していた。私も気持ちを切り替えてミスリルの質問をした。


「ミスリルな……使うよ、魔力を増幅したいときにな!原理はわからん。……これだ」


 木の棒の先がミスリルで、ミスリルの針金が持ち手まで伸びている。


「これはワンドだ。他に短剣タイプもある。要はミスリルに手を触れ、増幅できれば何でもよい。まぁ、私はこれで十分だ。安いし……アイルランドに鉱山があって、そこでしか取れない。あいつらガメツイから安くならないよ」


 すかさずバレリアが、


「それを使って魔法をかけるところが見たいが……」


「洗濯か?やめとけ。弱い魔法はそう違いが見えないぞ。灯火魔法で使うと明るさと時間が延びるな。銀貨一枚だ。どうする?」


 バレリアが私を見て、目で「見たい」と訴えるので、私はコクリと頭を下げた。


 ――約三分。空中に少し明るい照明が浮かんでいる。バレリアが触ろうとしたら「消えるからやめろ」と言われ、手を引いた。その後雑談をして、エラの店を後にした。


 自宅でバレリアがエラの店での分析結果を報告した。結果は分析不明。魔法の流れやミスリルとの親和性、人体が魔法らしきエネルギーを移動するまでは分かるが、肝心の魔法の正体が不明でデータ不足という結論になった。今後は私が魔法を覚え、それを観察すると言われた。


「人体解剖はダメだから」


 そう言ったら、外から十分分かるらしい。


 朝になって、チャールズが材料を追加で届けてくれた。槍十五本を渡し、預かり書をもらい今日のノルマを始める。槍十五本分の形成を終え、次の段階に始めているところに、少し身なりの派手な男が声を掛けてきた。バレリアが応対しているようだ。


「私は、この国に向かっている害獣の討伐に参加する勇者オリバーだ。どこの鍛冶屋も忙しく剣の手入れの時間が取れないと言われる。ここも忙しいのか?」


 ……随分と弱そうな。昨日のオリヴィアより弱そうな勇者だな。この国は弱そうな勇者が、多いのか?



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