第28話 イベリア歴623年 国難
「改めまして、では始めます。……出ました。鍛冶・家事・巫女?レベル4。え~……次……なし……表示無し……ヴァー……三百年の時間とお金と努力が……お父様……。」
残念でした。(勇者でなく安心)
『なんか、魔道具、大雑把だったね』
『そうですね、ただ、鍛冶・家事・巫女と職業は出てましたね。レベル?は不明です。興味深いです』
『そうだね……』
「あのー……私達はこれから……どうしたら……」
女がこちらに向かって鋭い目をし、沈黙の後に話を始めた。
「この召喚は、わが国に受け継がれ、三百年に一度だけ行える魔法だ。前回の召喚から五代にわたり継承してきた。初代勇者覇王から四度、いずれも勇者を召喚し、この大地を救ってくれた。初代は大陸の魔王を下し、世界を統一した。二代・三代勇者も多大な功績を残した。いずれも素晴らしいスキル三つ持ち、国難を救ってくれた。しかし、私達が召喚した勇者は……」
「あのー……私もスキル三つ持ちなんですね!……それと、四代目の方は?」
「それは……戦いの前に敵の女王(魔女)に魅了され……勇者が大陸統一前に五十歳で死んでから、各地で反乱が起き、帝国が衰退し、やがて帝国が崩壊して平和が訪れた……」
段々と劣化して、今度は私か!納得……いや、バレリアは勇者クラスかも!
「それと、この国の国難とは……一応、知っている方が……今後の……」
「それに関しては、摂政の方から説明がある。私の口からは話せない。」
「私達はこれから……どんな処遇に……」……沈黙。
「国王との協議会を経て、今後の判断が示される。それまで部屋で待機となる。」
私達は勇者が泊まる豪華な部屋ではなく、普通の待遇の部屋に案内され、そこでやっと座ることができた。受け身のまま興味のない話を聞く苦痛から解放され、その後の不安を抱えつつバレリアと会話をしていた。会話の合間に、外の警備兵の人数や、間もなくメイドがお茶とお菓子を持ってくることなどを無音で報告された。
「失礼します。お茶をお持ちしました……一時間ほどで夕食になります。その後はお休みになって結構です。本日の予定は終了しました。明日の朝未明にお迎えに伺います。」
「まるで古いアンドロイドのように機械的なメイドだ。この国が私達に対して抱く気持ちの表れだね。」バレリアは言った。
「そのようです。明日の対応次第ですね。イザベルはどう考えていますか?」
「理想は、この国から解放され自由を得ること。次に、国に関わりながら自由を得ること。最悪は積極的に国に貢献して使い潰されること。」
「分かりました。自由か奴隷ですね。」……沈黙。
私達は食事(味は不味くはないが、美味しくもない)をして、就寝した。横になり、念話モードで会話をした。
『城の内部がだいぶ分かりました。逃走可能です。』
『分かった。ただもう少し情報収集したいね!お尋ね者は面倒だし。』
『たしかに、未知のテクノロジーには興味あります。あと信号は弱いのですが、要塞の信号らしきものを感知しました。こちらに向かっているのではと思われます。』
『この星の位置予測できるの?』
『絞り込んで八百箇所になります。』
『(落胆)……寝るよ』
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「王様。以上が報告になります……」
「……ハズレか。私の代になり国難続きだ。嘆かわしい……摂政、各大臣、そして皇太子の意見を聞きたい。」
「役に立たない者は外に放ちましょう。鍛冶、家事、巫女?そして妊婦のレベル4、子供レベルでは話にならない。そして無能冒険者、やめてくれ。」
「皇太子様、お怒りは分かりますが、三百年前の国難を勇者無しに乗り切りました。三番目の勇者ゼノンの子孫である国王が必ず乗り切ります。」
「摂政、すまぬ。我らはゼノンの子孫だ。必ず乗り切る。」
「軍務大臣として発言する。第一に、あの害獣は速度が遅い。予測進路の住民の避難を優先させる。第二に、今の武器では役に立たないが、攻撃に対して嫌がるそぶりはある。最悪、海岸へ誘導して逃がす最後の作戦です。」
「約五十年周期で現れる巨大な芋虫の害獣(全長約二百メートル)が、隣国の海岸からここに向かっている。コース予測は王都を横断して海を目指している。厄介ものだ……財務大臣、予想被害額は?」
「はい、おおよそ国家予算の六割の被害額が想定されます。」
「あー……聞かなかったことにする。あの二人は外へ放て、経費の無駄だ。」
「「「そのように……」」」




