第24話 イベリア歴623年 決着
次男の自白は国の二大派閥に関わる事案であったため、秘密裏に国王立ち合いのもとで行われることになった。次男の自供が始まると、国王は途中で気分を害し怒り始め、中断して休憩を挟み、再開するという長丁場となった。結果、王令が発布され、直ちに捜査に取り掛かることとなった。
取り調べの中で次男が国王を怒らせたのは、
「国王の統治が甘いから私の残酷な趣味が許された。税金や国賊行為も、すべて暗君がいるから起きた結果だ。」
という処刑ものの発言が、玉座の間の空気が一瞬凍りついた。しかし摂政が、
「すべてが決着してからでも遅くはない。」
と諭したことで、国王は矛を収めた。
軍務卿は皇太子派に気づかれぬよう、東のアラゴン王国へ向かう道をあえて進み、迂回して北部へ部隊を向かわせた。屋敷に到着すると国王命令を読み上げ、家宅捜索を開始した。王都と同じく書類、金庫、隠し扉のすべてが開かれた状態を目にしたモレノ男爵は、顔面蒼白となり、その場でふらつき、テーブルに手をつくと同時に倒れ、痙攣して意識を失った。
部隊は意識の戻った男爵を拘束し、証拠品を回収した。そして遺棄現場へ移動する。現場では次男の手下が整列し、自分たちの行為を自白して拘束されたが、率先して捜査に協力していた。犯罪者は逃走が基本であり、自ら名乗り出るなどあり得ぬ行動に違和感があったが、自供通りの結果となり、なんとも歯切れの悪い結末にただ頭を抱えて「あり得ない」と言うしかなかった。
王都の男爵邸の捜査から判断し、王都の辺境伯邸と北部の辺境伯領に軍を派遣した。王都の辺境伯は国軍に抗うことができず、無抵抗で捕縛され、証拠はすべて押さえられ回収された。
軍は辺境伯領に進軍した。数万の軍隊に辺境伯の軍は籠城の構えを見せたが、王国旗の力は絶大で、投降者が列をなし、武器を地面に置く音が響き、次々と投降者が出た。最後には厚い扉が開き、辺境伯の息子たちが投降し、最悪の武力行使には至らなかった。
北部男爵邸の部隊も辺境伯領で合流した。幸い息子たちは宝物庫の鍵や重要書類の在りかを知らず、手つかずのまま証拠品を回収できた。今回も怪しい場所の鍵は掛けられておらず、難なく回収が完了した。宝物庫の中には王家から紛失した宝物が数点発見され、それもすべて回収された。
次男や手下は監禁され、刑を待つだけの日々を過ごしている。テクノロジーの進化により、強制自白と性欲の減退、筋力の低下の状態は解除しない限り死ぬまで継続する。人間として厳しい状態を与えている。もともと筋力低下は暴力的な者を対象に考案されたもので、治安維持を目的とした古い技術だ。自白・性欲も同じで、昔、警察があった時代の古いテクノロジーである。今、この惑星ではそれが使える技術となっている。
▼△▼△▼△▼△
事件は一段落し、私の関心は次第に生活の基盤へと移っていった。
アントニオがやってきた。例の土地の件だろう。
「決まりました。あの地点の売買は無理でした。その代わり借りることは可能です。広さはこの地図に書き入れています。」
ちょっと広すぎない?
「これってもしかして、国王から頂いた土地すべてじゃないよね?」
「よく分かりましたね。そうです。それとここは婿に入るアルトゥーロ様の所有になるようで、手つかずの場合は年間金貨二十五枚、収益があるときは利益の一割です。売上ではなく利益の一割です。従って、収支がマイナスの場合は年間金貨二十五枚と言われました。宝石を前払い頂くと、約二百年間の使用許可を出すそうです。」
「分かった……それで頼む……」なんかなぁ……考えつかない。
「加工に関しても任せるそうです。近いうちに男爵様が伺うと思われます。」
「分かった。……例の件、解決したよ。次男は今、牢屋で刑待ちだ。」
「なんと、この前話してから数週間ですよね……国境の貴族が変わるか……」
「多分、変わる。寄親の辺境伯も捕まり、次期辺境伯は王女派の有力者か弟か、王家直轄か。間もなく答えが出るよ。それより南から来る商品が安くなると助かるよね。それから、あの土地、畑とかできるの?」
素朴な疑問を投げかけた。
「荒れた平原だからね。王都に近ければ可能性もあるけど、川がないから水の問題もある。荒地で水なしなんて作物……知らないなぁ。一番は風かな。あの辺は風が強くて有名で、砂埃がすごいんだ。水源を確保するため井戸掘りが必須だ。水がないから家畜も無理だ。」
根本的に土地改良しないと無理か……。
「バレリア、聞いたとおりだ。許可は下りたも同然だ。早速始めてくれ。」
「農地のために土地改良区を作りますか。動物対策から水管理、風対策、周辺の緑化まで計画は簡単です。テラフォーミングする訳ではないので、局地的には容易です。村人を募集して、経営するシミュレーションゲームのように緑化して家畜を飼い育てる。いいですね! 実際ナマでやるのは夢があります。」
……あぁ、おいおい、AI進み過ぎている。




