第23話 イベリア歴623年 自白
私は、モレノ男爵の次男の前で仁王立ちし、威嚇していた。全身がメタルのため怒りの表情は作れないが、言葉で圧をかける。名前は把握しているが、あえて「次男」と呼んでいる。
「お前が、私の姉を拉致して殺した本人だな。」
次男は沈黙したまま震えていた。
「五分前の威勢のいい言動はどうした? 恐怖で震える子犬のようではないか!」
「……頼む、……許してくれ……悪かった……頼む……」
「何が悪かったのだ。お前の犯した人でなしの行為は姉だけではなく、自分でも把握できないほど殺したんだろう。」
私は次男の―頭頂部の毛を鷲掴みにした。
「ギャアアアアア!!」
「おお、今の情けない姿に合った美男子になったぞ! 次男、お前の原動力は股間にぶら下げているやつが原因だと思う。次はこの髪の毛のように……」
次男は抵抗してメタルの体を叩くが、自分の手が痛くなるだけだ。私は左手で体を押さえ、服の上から掴み少し引っ張ると、彼は失禁して気絶した。
権力で弱者をいじめる奴の典型だ。私も同じようなものだが、今回は自分の気持ちに従った。
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作戦は解散直後から要塞を拠点に三班に分かれて行動した。王都班、男爵班、待機班で構成され、王都は八日間で現状を把握し、男爵家は一日で把握した。次男の手下は三日で死亡二名を含む全員を拘束し、特にリーダー格の男は尋問して証言を取った。今の技術では嘘はつけない。素直に一から十まで話してくれる。拷問など過去の遺物だ。
男爵家の次男は今も娘を拉致して暴行していた。昨日亡くなった女の処理を手下に手配していたが、連絡が取れず苛立っていた。そんな状態の次男を軍事ロイドの部隊が拉致し拘束した。屋敷内の次男関係者二名も確保された。待機班はバックアップに入り、監視と証言事項の確認作業を進めている。特に物的証拠の遺棄現場など、細々とした作業に就いていた。
拉致された者は要塞の白い個室で仮死状態のままおとなしくしている。犠牲者が何人いるのか見当もつかない。こんなサイコパスには特別の舞台を用意している。王都の準備が整い次第、決行だ。
王都の皇太子の主流派と第一王女の第二派閥の勢力は拮抗していたが、有力公爵の死亡により勢力は衰退していた。モレノ男爵の寄親である辺境伯は皇太子派に属し、支持者の中でナンバー2の中心人物である。カスティーリャ王国の国内情勢には興味はないが、第一王女の有力公爵当主に有力情報を提供する。
王都班は精神がボロボロの次男を公爵当主の執務室に放り投げ、外から監視した。
「ヴォー……イテー……ここはどこだ、ダニー、ダニー、私を助けろ、早く助け……」
公爵当主は予期せぬ事態に一瞬たじろいだが、
「貴様、どこから入ってきた。不届き者!」
執務室から大声が上がり、人が走って向かってくる音がした。
「失礼します! エンリケ様!……貴様、どこから侵入した。ここはヒメネス公爵家の執務だぞ!」
次男は身分差に委縮し、へなへなと崩れ座り込んで泣き出した。
「は・たく・しは、ホッホウのモレノだん・ちゃくけの次男……」
警備兵が怒りを込めて言った。
「何を話しているのかわからん。しっかりと話せ……ゆっくりだ。」
警備兵の言葉に、次男はガタガタと震えながらも、口だけが勝手に動くように話し始めた。
「は、はい……私は……自分デモ止まラナイ……北方のモレノ男爵の次男で……ラチ監禁、殺害、ソレニ父の脱税、辺境伯トノ裏取引モ……」
(な、なんだ? なんでこんなことまで喋っちまうんだ!? 口が止まらねぇ!)
泣きながら話す内容を公爵が聞き、担当警備兵はメモを取りながら要点をまとめていった。
「一点は北方のモレノ男爵の次男。二点目は拉致され気が付いたらここにいた。三点目は自分の性癖と殺害。四点目はモレノ男爵の税金の不正。五点目は辺境伯の指示で動いた国賊行為。以上になります。」
なんだこれは。真実なら宝物を掘り当てたようなものだ――と公爵は思いを巡らせた。
次男は服を着替え、頭頂部の毛がない自分の姿を鏡で見て「……嘘だろ」と呟き、警備兵が廊下で待機する部屋で軟禁された。
翌日、公爵は軍務卿と第一王女に面会を求め、一連の報告をした。王女の一声で軍務卿の部隊は王都別邸と北部モレノ男爵の元へ派遣され、証拠を押さえる行動に出た。
王都班はモレノ男爵別邸の証拠を部隊到着に合わせ、金庫を少し開いた状態にし、隠し扉を半開きにして重要書類を机に並べ、軍務卿の部隊が「ウェルカム状態」で入れるようにして撤退した。別邸の執事は部屋の状態を見た瞬間、逃走しようとしたが、それを察知した隊員が即座に拘束し、証拠品と共に連行した。




