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惑星ムンド管理官、転生者を監視する。  作者: 山田村
第三章 進展

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第22話 イベリア歴623年 モレノ男爵




私はみんなと今後の話をしていた。当然、あの男の話だ。イバンには隠し事をしたくないので、参加してもらった。アントニオが管理官から聞いた話を、イバンにも伝えると、彼は怒りで震えていた。私は言った。


「我ら神の使徒たるここに集いし者よ――いや、ちょっと格好つけすぎか!……使徒のみんな、私はあの貴族に罰を与えたい。バレリア!」


「ハイ。アントニオの話から対象が場所を変更しなければ、一連の行動を分析するのに一週間、その後の行動は一日で可能です。全ての対象者確保が可能です。」


 その発言に二人は驚いていた。


「関係者をすべて把握するのに、どのくらいかかる。」


「三年の時間経過がありますから、位置情報で異なりますが、生存確認も含めてプラス一週間です。」淡々としたバレリアの説明に、また驚かされる。


「今回の作戦はバレリアの仲間が行動する。……知らない土地で関係者が消えるだけだ。」


その言葉を聞いたイバンは、震える拳を膝の上で強く握りしめた。


「俺の手で殺したい……と言いたいところだけど、相手は貴族だ。…」


 絞り出すような彼の声に、私は深く頷いた。


「次に第二段階で、カスティーリャ王国内部にいる対象貴族の反勢力へ情報を流し、スキャンダルをネタに家を消滅へ追い込みます。」


 黙って聞いていたアントニオが口を開いた。


「あの国は大国だから内部腐敗が酷く、権力闘争と二大派閥が常にしのぎを削っている。北の辺境伯の寄子であるモレノ男爵と思しき悪い噂がよく流れてくるし、商人として近寄るのは遠慮したい人物だ。」


 聞いていて思った。そんな家はなくなっても、全然罪悪感は湧かない。地元の領民は喜び、悲しむ者もなく、むしろ感謝されるかもしれない。まあ、名乗りはしないけど。……別働隊の規模はわからないが、要塞から派遣される軍事ロイドの中隊だと思う。


 あんな軍事ロイドと、この惑星レベルの軍事力で戦ったら国が滅ぶレベルだ。だが今回はステルス行動をとり、忽然と姿を消すシナリオだ。


 そういえば昔、アバターのアトラクションゲームがあって、よく遊んだ。主に格闘ゲームがメインだったけど、あのシステムがあれば家で安全に作戦を見学できる。しかし素人の私が参加して、作戦を台無しにするわけにはいかないから……。


「じゃあ、心おきなく悪者を退治しよう。では、解散しよう。」


「イザベル、ちょっと!これを。」――ああ、忘れていた。


「アントニオ。ついでにもう一つ頼みがあるの。みんなも聞いて」


私はテーブルの上に地図を広げた。


「これは正確な地図ですね。東部方面の山岳地帯ですか?この点を中心に線がありますね。これは?」


「この土地を買ってほしいの!最低この線の内側、直径五キロくらいかな。山と平地、木材と畑開墾のためという理由で。実はこの点の地下に調査したい鉱物があるらしく、そのためなんだけどお願いできる?お金は金貨、それとも宝石。」


「この地域はアルトゥーロ様の家が所有している土地ですね。わりと簡単かもしれません。前に褒美で頂いた何も生まない土地だと嘆いていましたから、購入して毎年税金を払えば問題なしでしょう。金額交渉と税金額は任せてください。金貨でも宝石でも……宝石でお願いします。」


バレリアがジャララ、と無造作に革袋から中身が広げられた瞬間、薄暗い部屋が七色の光で満たされた。


「なっ……!?」

 アントニオが息を呑む。小指ほどの大きさがあるルビー、深海のようなサファイア、そして歪みない丸い真珠。これほどの純度のものが無造作に置かれることはないだろう。

 


「これは……これはすごい。ダイヤにルビー、エメラルド、サファイア、それに真珠。しかもこの大きさと数……参りました。商人をやっていて、このレベルの宝石を扱う日が来るとは。」


「足りなければ言ってください。いつでも用意できます。手数料は金貨でいいですか?さっき宝石で気づいたけど、アルトゥーロ様、結婚が近いのですか?贈り物ならこちらで加工できますよ。お祝いですから無料でやります。お相手も知っていますから、大体のサイズも把握しています。」


「ああ、そうでしたね。男爵様は騎馬隊を辞め、今は年内の結婚に合わせて王妃付きに移動になっています。では、さっきの条件も付けて交渉します。」


 貴族を拉致して滅ぼす話から、おめでたい話で締めて解散となった。私はバレリアにアバターの話を聞いてみた。


「軍用装置を設置すればいつでもできるし、軍事ロイドへのリンクは戦闘時も安全な状態で出入りできる。誤差は0.001秒。痛覚遮断も可能です。マスターは安全な玉座に座ったまま、愚かな貴族が恐怖に歪む顔を、その目の前で特等席としてご覧になれます」


流石軍用品、と感心した。


「これでアイツの前に立てる」


 私は静かに呟き、拳を握った。ゲームではない。けれど、これは私による、私のための「制裁」の始まりだ。


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