第20話 イベリア歴623年 告白
私はイバンに、秘密を打ち明けると決めた。……少し怖いけど。
「イバン、ちょっといい?……話があるんだけど。」
「なんだい、イザベル。」ああ……緊張してきた。
「私ね、実は……生まれ変わりなの。前世の記憶があるの。」
「えっ……意味わからん……前世?」
「簡単に言うと、生まれる前のことを覚えているの……わかる?」
「えっ……すごい……道理で今まで見たこともないもの、たくさんあったしね。」
「……嫌いにならない?」
心臓が早鐘のように鳴り、言葉が震えた。
イバンは静かに微笑んだ。
「ばかだねえ……イザベルの気持ちは前からずっと変わらないじゃないか。」
その言葉に、胸の奥の恐怖が溶けていった。
「イバン……ありがとう。私も愛している。」ふう……ほっとした。
イバンが身構えた。(人見知り)
「あと、もう一つ。いい? バレリア、こっち来て。」
「紹介した時に南部から来たと言ったけど、あれは嘘なの。実は前世の私が生まれた国から来た人なの。そしてバレリアは人じゃないの。機械でできているの。」
「えっ……機械? 嘘だろ。どっからどう見ても人間だよ。冗談だよな。やだよ、ハッ、ハッ……イザベルに一杯食わされたよ。」真剣な表情でイバンの目を見て。
「イバン、これ見て。バレリア、ここに座ってスカートを引き上げて股間が見えるようにして。」
「イザベル、可哀そうだよ!……あああ、えっ……(驚き)……無い……何も。」
「わかったでしょ。私と違うでしょ。バレリア、胸開ける?」
「はい、可能です。」上半身を露出すると、機械音と共に胸部のメカの部分が確認できる。
「見て、これが内部構造の一部よ。」イバンは固まって無言になった。
「バレリア、ごめんね。恥ずかしい思いをさせて、もうこんなことしないから。……元に戻して着替えてちょうだい。……イバン、驚かせてごめんね。前の国はこんな機械がある国なの。(沈黙)わかった?」
「イザベル、帰るのか……国に。」
「帰らないよ! 一生ここで暮らすから。……たとえ帰っても千年かかる。着く前に死んでるよ……なぜこんな遠い所に生まれ変わったのかは謎だけど、多分ここで良い人生を送りなさいということだと思う。」
「そう…なんだろ?……そうかもね。」
「それとバレリアは味方だから、敵対しない限り我々の安全を守る守護神よ。彼女たちは千年かけてここに来て、この地の調査を始めたばかりだったらしく、偶然私が見つけて連絡を取り、共に行動することになったの。それと、神様から派遣されたと思ったよ。」
バレリアが急に発言した。
「神様から派遣されました。イザベルを守るように言われています。」
「ええ……神様、それは本当に……分かった。神様が……」
「アントニオも夢で神様に会っているから、アントニオにも報告しなければ。」
「俺も神様に会えるのかな。」バレリアが答えた。
「イバンには直接会えないらしい。ただ、メッセージがある。――信心深い我が子らよ、イザベルが辛い時に支えた心が伝わりました。見守っています、と言われました。」
「おお神よ……私は……私は……イザベルに会えたことを感謝します。」
翌日、アントニオに会いに行った。私は簡単に自分の生い立ちを説明し、バレリアがアントニオに伝えることがあるらしく共に自宅へ帰った。鍛冶場の前で――
「アントニオか! 神からの伝言を伝える。……信心深い我が子らよ、正しい目を持つ者よ、イザベルを引き続き助けなさい。あなたの魂を見守っています……以上だ。」
「おお……女神様……(泣く)」
イザベルは疑問に思ったことをバレリアに聞いた。
「あなたの魂を見守っています……どういうこと?」
「おそらく、清い魂が汚れないように見守っている、と予想します。」なるほど……。
「おお……女神様……(泣く)」それを聞いたアントニオはまた号泣した。絵に描いたようにベタなアントニオだった。
「バレリア様は使徒様ですか?」の問いに私が答えた。
「使徒ではないが、協力者であり守護者だ。」
「守護神ですか。」
「違う! 「神」ではなく「者」だ。冒険者であり傭兵の方が近い。だから“様”付けで呼ばずにバレリアと呼んでくれ。その方が違和感がない。」
「わかりました……」……まだ夢の中にいるみたいだ。




