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第4話 婚約破棄

 

 私は屋敷に戻るとすぐに両親の元へ行き、レイヴィスの不貞を事由に婚約を破棄したい旨を伝えた。

 証人としてリーニッドも同席している。


 両親は泣き腫らした私の顔を見て驚き、レイヴィスの不貞を知ると激怒した。


 すぐに顧問弁護士を呼び寄せ、婚約破棄の手続きを進めた。

 その日の夜に弁護士がアンヘルム家へ赴き、レイヴィスの有責で婚約は破棄される事となった。



 あっけないものだ ――――

 レイヴィスと出会ってから3年。婚約した期間は1年ほど。

 なのにグロリアが転入してきて、たった数か月で彼は心変わりした。

 今までの私達の時間は何だったのだろう…



「ふふ…」

 情けなさ過ぎて笑うしかない。

 レイヴィスとの想い出が、全て灰色になっていった……



 ◇



「ま、待ってくれ…頼む、セルティア! 話しを聞いてくれ!」


 翌朝学院に付くと、門でレイヴィスが待ち伏せしていた。


「やめろ! おまえらの婚約は、もうなくなったんだよ!」

 私の前にリーニッドが立ち、庇ってくれている。


「……頼む、話をさせて欲しい…」

 レイヴィスが、懇願するように私を見る。


「リーニッドがいるなら聞くわ」


「…わかっ…た…」


 不承不承という感じで、レイヴィスは承諾した。

 私達は場所を変え、人気のない裏庭のガゼボに来た。


「それで話って何?」


「……す、すまなかった……君を裏切って僕はグロリアと関係を持った…」

 レイヴィスは深々と頭を下げた。

 今更だわ。


「そんな事、分かっているわよ。この目で見たのだから」


「……も、もう彼女とは会わないっ 二度と君を裏切るようなマネはしない! だから…ゆ、許してほしい…っ」


「おまえ! どの口が!!」

 あまりにも都合のよすぎる言葉に怒りの声を上げたのは、リーニッドだった。


「やめて、リーニッド」

 私は、立ち上がって声を荒げるリーニッドを制止した。


「……っ」

 渋々席に着くリーニッド。


「あなたが愛しているはグロリアでしょ?  そう言っていたわ、あの温室で。そして私は最悪な女なのよね?」


 そう…舌を絡ませ、グロリアの身体に唇を()わせながらそう言っていたのはあなただ。


「そ、それは…ち、違うんだ! 僕はグロリアを愛してなんかいない! 僕が本当に愛しているのはセルティアだけだ!」


 「……グロリアを抱いたけど、愛していないから許してくれと? そんな言い訳で、私が許すとでも思ったの!?」


「セ…セルティア……」

 彼は目を開き、私の言葉にショックを受けているように見えた。

 

「……ほ、本当に愛しているのは君なんだ…!」


 “愛している”

 さっきからその言葉を何度も口にしているけれど、もう何の意味もないのだとなぜ分からないのかしら。


「…あの温室はあなたが私の為に作ってくれたものよね? そんな場所であなたはグロリアを抱いていた。きっとあの日が初めてではないのでしょ? あなたの態度が変わったのはもっと前からだもの。なのに、私の事を愛している? 誰がそんな言葉を信じられると思うの!」


「ち、ちが…っ そうじゃな…っ ぼ、僕は…っ」


「もうやめて! それにすでに私達の婚約は破棄されているわ! あなたの話を聞いたのはけじめをつけたかったから。やり直す気など、始めからあるわけがないでしょ!」


「セルティア!」


「いい加減にしろ、レイヴィス! もう終わったんだよ、おまえたちは!」


「リ、リーニッド…!」


「ついでに俺たちの友情も終わりだ」



 …リーニッド、あなたはいつも私の味方になってくれるのね。

 レイヴィスがグロリアといた時も、あなたがいなければ私は耐えられなかった。



「行きましょう、リーニッド」


「ああ」


 (うつむ)いて座っているレイヴィスを残して、私とリーニッドは席を立った。


「…っ セルティア!」


 レイヴィスが私の名を呼んだけれど、私は振り向くことなく歩き続けた。


 さようなら、レイヴィス。

 もう私達の時間が戻る事はない――――…



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― 新着の感想 ―
グロリアを抱こうが抱くまいが関係なく、セルティアを強姦しようとした時点でアウトでは? そんな被害に遭った翌朝からセルティアがレイヴィスを責めるどころかご機嫌を取ろうとしていて ん〜昭和の香り〜〜って…
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