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第2話 違えた道

「レイヴィス、 今日観劇を観に行かない? チケットが手に入ったの」


「あ〜、ごめんっ 今日はグロリアを街に案内する約束をしているんだ。それに観劇ならリーニッドと…「早く行きましょうよ、レイヴィス!」

 話の途中で割って入って来たグロリア。


「あ、じゃあまた明日っ」

「ごめんなさいね、セルティア」


 私の返事をろくに聞かず、グロリアに引っ張られるように教室を出て行ったレイヴィス。

 レイヴィスの腕に、自然に手を回していたグロリア。


「いいのかよ、あれ」

 リーニッドがその様子を見ていたようだ。


「…っ 級…長として転校生に親切にするのは当たり前よっ それにレイヴィスは観劇が苦手だから…」


 それでも前はつきあってくれたのに。

 『セルティアが好きなら、僕も好きになるよ』って…


 私は極力何でもない風に答えた。 


「……そ…だな」

 リーニッドは何か言いたそうにしていたけど、私は気づかないふりをした。


 グロリアが転校してきて数週間。

 何かにつけてグロリアがレイヴィスを頼っている。


 いいわけないっ 

 街案内?

 それって級長がする事なの?!


 けれど、グロリアと二人で出かけないで…とも言えない。


 そんな事を言えば、レイヴィスを信用していないみたいじゃない? 

 それに…心の狭い女…と思われたくなかった。


「…じゃあ、俺と行こうよっ これ、観たかったんだ。それに俺はレイヴィスみたいに寝たりしないなっ」


「ふふっ そうね」


 リーニッドが冗談めかしながら、チケットを手にする。

 気を遣ってくれているのがわかった。


 

 

 それからレイヴィスはグロリアと一緒に行動する事が多くなり、私が誘っても断られる事の方が増えていった。



「ごめん、今日グロリアに勉強を教える約束をしたんだ」

「ごめん、グロリアが行きたい店の場所がわからないっていうから付き合う約束しているんだ」


 

 一事が万事この調子。

 レイヴィス……ここのとこずっと、私といるよりグロリアといる時間の方が多いって気が付いている?


 私達、卒業したら結婚するのよね…?

 わかっているの?


 言いようのない不安が胸をよぎる。


「一度、きちんと話した方がいいんじゃないのか…?」


「そうなんだけど……」

 私は歯切れの悪い返事しかできなかった。



 ◇



「レイヴィス!?」

「先触れもしないで…ごめん」

「ううん、会えてうれしいわ」


 ある日先触れもなく、突然レイヴィスが我が家に訪ねて来た。

 グロリアが来てから、レイヴィスと2人きりになれたのは久しぶりだ。

 ずっと不安を抱えていた事も相俟あいまって、突然の訪問はとても嬉しかった。


 ただ、なんとなく彼の様子が変だった。

 さっきから何も話さず、座ったまま。


 何かあったのだろうか?


 他の人がいたら話しづらいかと思い、私は侍女に下がってもらった。


 俯きながらソファに座っているレイヴィスの隣に、私は腰を下ろした。


「……何か…あった?」

 

 覗き込むようにレイヴィスの顔を見ると、彼が突然私を抱き締め口付けをしてきた。

 

「んん!!」


 その口付けはいつもの触れるような優しいキスではなく、舌が入り込み口の中でうごめいた。


 初めての感触に驚きレイヴィスを押しのけようとするが、びくともしない。

 私はそのままソファに倒されると、彼の手が私のスカートの中に入って来た!


「や、やめて!!」


 バシ ――― ンッッ!!


 信じられなかった!

 レイヴィスが知らない男性ひとに見え、身体が震えた。


「あ、あなたがこんな事をするなんてっ! 最低よ!!」


 怒りと恐怖から思わず出た言葉。

 彼を傷つけたと気づいた時にはもう遅かった。


 レイヴィスは部屋を飛び出して行った。


「レ、レイヴィス!!」


 追いかけなければ…と思いながらも、身体が動かないっ

 彼があんな事をするなんて信じられなかった!



 この瞬間、私達の道はたがえてしまった事を、後で思い知る事になる……




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