表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

肝一の遺伝子達



……


 伝説のプロレスラー、ブロック・レスナーは言った。


「正直今でも、アイツを殺したドライバーの事を思うと複雑になる。

 でもそいつの文句は人前では言わないようにはしてるんだ。

 天国からアイツに笑われちまう気がして」



 伝説のボディービルダー、フィル・ヒースは言った。


「カンイチの遺伝子は、世界で受け継がれている。その遺伝子が言うんだ。

 『人間にはまだまだ伸びしろがある』ってな……」



……


 東が肝一の弟子になってから、一年と経たないうちに、

神田肝一は死んだ。


 後厄を乗り切った後だった。


 当時彼は24時間密着取材を受けている途中で、深夜0時10分。

 ドライバーが飲酒運転をしていた車が歩道に乗り上げ、それに轢かれたのだ。


 0.10、奇しくもそれは、肝一の内臓脂肪の数値だった。

 そしてこの出来事は、「肝臓を世界一鍛えた男が、別の肝臓に殺された」として世界中に広まる事になる。

 彼は救急車が駆けつける前に息を引き取ったが、死の間際、こんなことを言っていた。





「何も恨まないでくれ。俺が死ぬのは、俺が弱いからだ」


 この言葉は世界中でさまざまな解釈をされて人々に広まったが、

世界に広まったことには変わりは無かった。


 


 この言葉を皮切りに、内活、肝一の言葉で言う「リアル インナーマッスル」を鍛える運動が日本で盛んになり、

内活を極め、「日本一『肝一に近づいたもの』」を競う催しが、日本武道館で開かれた。すなわち……

肝一N01選手権、

後のK-1グランプリである……。



 リアルインナーマッスルの概念は、世界中に響き渡り、

ついにボディービルダーの最高峰、ミスターオリンピア協議会は、種目を大きく二つに分ける事になる。




 すなわち、マッスル部門。後のM-1グランプリである。

 そして、リアルインナーマッスル部門。後のR-1グランプリである。






 そして今、リアルインナーマッスル部門の初代グランプリが決まろうとしている。

どうやら日本人選手二人による接戦になりそうである。


 肝一の息子、小太郎と、

 肝一の弟子にして、今年度マッスル部門ミスターオリンピア・グランプリに輝いた東である。

 東が勝てば、前人未到のオリンピア二冠達成になる。






 ステージに同時に上がった二人は、まず自分の左拳を右胸に当てた。

 そして人差し指にキスをして、天を仰ぎ、指差した。









                       沈黙を破った男 了。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ