表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Western-Monsters  作者: keiTO
1/2

第一怪 モンスターの来日

*妖怪*

妖怪は民間伝承や神話に登場する超自然的な存在や生物の総称。形や性格はさまざまで、善良なものから恐ろしい。妖怪の特徴として、動物、人間、自然現象などをモチーフにした姿を持ち、多くの妖怪は人間に悪戯をしたり、災いをもたらしたりすると言われている“


『この世に“妖怪“が実在するかは分からない、ただこれだけは確かな事がある、“映っている者が全てではない”』



【重要登場人物】


フランクルン・ガルトン 年齢22歳 性別:男性 オランダ系の白人・半妖

スノームン 年齢10〜12歳 性別:男の子 西洋の妖怪

エリア・ファイブ・ワン 年齢25歳 性別:女性 フランス系の白人

薙木皐月 年齢18歳 性別:女性 日本の半妖怪

大沼康平 年齢15歳 性別:男の子 日本人



【第一怪の登場人物】


*薙木家

薙木秀一 父

薙木佳菜子 母

薙木三月 娘








<モンスターの来日>


【人面瘡】

人間の顔がついた瘡(皮膚の病変)で、瘡が顔のような表情を持ち、時には話しかけたり、笑ったりすることもあると言われている。

この妖怪は、病気や不幸の象徴として描かれることが多く、その姿が不気味であるため、恐怖の対象となる。人面瘡は、通常は人間に対して害を及ぼすことが多く、またその存在が現れることで、その地域や人々に災いが起こるとされるという伝承がある。




西の地からやってきた“二匹“のモンスターが、クリスマスが終わったばかり三重県に降りたった。


三重県の田舎では、昼間にパラパラと粉雪が降っている。

肌寒い季節にはコンビニに売っている肉まんなどが人気で、すぐに品切れになってしまう程。

中年の男性がコンビニに入店し、ホットの缶コーヒーを手に取りレジに向かい、ホカホカな肉まんを店員に頼んで買おうとするが、


男性「肉まん一つ」


店員「申し訳ございません、本日は売り切れとなりました」


男性「じゃあ、あんまんで」


店員「・・・肉まんもあんまんも、ピザまんも・・・まんじゅう類は全て売り切れです」


男性「えっ! じゃあファミチキでいいです」


店員「申し訳ございません・・・ファミチキなどの肉類も全て売り切れです」


男性「・・・マジ?」


まだ昼間なのにコンビニのレジ横に置いてある、まんじゅう類やホットスナック類が売り切れになった事に、男性や店員は呆然。

男性は諦めて、他のコンビニに向かう為に外に出るが、外に出た瞬間に異様な光景が目に映る。


コンビニの外に置いてあるベンチに、灰色のトレンチコートを羽織り・黒いサングラスをかけずに首にぶら下げ・髪を含めた全身の毛が銀色・身長180cmもある白人男性は、骨付き肉を“ムシャ、ムシャ”と咀嚼音を鳴らせ、獲物を仕留めた獣如く頬張る。

白人男の側には小袋が大量にあり、ゴミ箱に入れず食い散らかしている。

中年男性は一瞬だけ白人男が噛む瞬間、人間の歯に見えず、狼の歯に見えた。

中年男性方から視線を感じた白人男は睨む様に、中年男性に目を向ける、男性は恐怖を感じ、視界を逸らして去る。

白人男の目は右目は人間の様だったが、左目は黄褐色で、まるでオオカミを連想させる。

その白人男の隣に座っている、小学生ぐらいの可愛らしい男の子は、ロシア人以上に白い肌で瞳の色はガラスのビー玉みたいで、瞳の中心には小さな六角形が見える・髪色は水色でマフラーを首に掛け冬用の茶色いコーデを羽織っているが、真冬なのに何故か棒アイスを“ペロ、ペロ”と舐めている。


日本生まれどころか、地球生まれかも怪しい彼らだが、二匹とも正真正銘の地球生まれ。


彼らは“妖怪“・“半妖怪”なのだ。


【半妖怪】

人間と妖怪の両方の特徴を持つ存在。半妖は、人間の姿を持ちながらも、妖怪の能力や特性を持っているのが特徴。

これにより、普通の人間とは異なる力や特技を持ち、時には妖怪としての特性が自分や他人に影響を与えることもある。



白人の男の名は、“フランクルン・ガルトン“ =オランダの新米モンスターキラー。

雪男の子みたいなのは、“スノームン” =オランダの雪属性の妖精、ガルトンの助手を務める。



フランクルン・ガルトンは西洋専門のモンスターキラーだが、日本からの要望により来日。

日本は妖怪現象大国なのだが、少子化の影響なのか、西洋ほどモンスターキラーの素質を持つものは少なく、人手不足状態。

今回二人の依頼内容は、三重県の片田舎に住む一家の娘が邪悪な妖怪に取り憑かれ、それを祓うのが今回の依頼内容。


二人は三重県の“波田須駅“に降り、依頼人の家に向かう。

目的地は山奥の一軒家、徒歩では時間が掛かりすぎるので、途中で農家を営んでいる高齢の爺さんに軽トラで乗せて貰った。

陽気に話しかける爺さんは、興味津々に二人が何者かを聞く。



爺さん「お二人ともー、わざわざこんな何も無い田舎に海外旅行に来たのかい?」


スノ「あっ・・・ハイ!」


ガルトン「・・・」


爺さん「物好きだねー、この村もどんどん若い子が減ってねー、廃村も遠い話じゃないよ」


スノ「やっぱり日本でも若い人は都会好きが多いですか?」


爺さん「それもあるけどー・・・実はこの三重県は“いわくつき“でね」


スノ「いわくつき?」


ガルトン「・・・」



*近年の日本では失踪事件が多発、その中でも三重県はトップレベルの多さ。

特に失踪者で一定しているのは、田舎や子供などの共通点、まるで神隠しの様に人が消えていく。



爺さん「兄さんも一瞬でも子供から目を離さない方がいい、どこに変態野郎が潜んでいるかは分からないからな」


ガルトン「・・・(人間の仕業じゃない、“モンスター”だ)」


爺さん「最近もこの村でも、ある家の娘さんが・・・まだ若いのに」


爺さんは表情が曇り、活気さが消え、運転中なのにまるで我が子を失ったかの様に下を向く。


スノ「?」


爺さん「そういえば、外人さん方々はどうしてこんな山奥に? 何の用があるんだい?」


スノ「あっ、僕達は“薙木”さんという方々に会わなければならないんです、お爺さん、何か知りませんか?」


爺さんは突如、急ブレーキを掛け、体を“ガタガタ”と震わせて、恐怖が募る表情で二人を見て忠告する。


爺さん「あの家に用があるのか?」


スノ・ガルトン「?」


爺さん「悪い事は言わない、あの家には近づかない方がいい、もし近づくならここで降りてくれ、この道を真っ直ぐ歩いていけば15分ぐらいで着く!」


スノ「えっ・・・」困惑。


ガルトン「・・・行くぞ」


二人は車から降りて、徒歩で目的地に向かおうとするが、軽トラの窓から爺さんが顔を出して、再び忠告する。


爺さん「それとだ、もしあの家に入ったなら、俺達の村に近づかず、すぐにでもここから出ていってくれ!いいな!」



*15分後


二人は山奥を歩き続け、“薙木家”に到着。

薙木家の住宅は、そこそこ豪邸に住んでおり、家族構成は父と母、双子の娘の四人家族・・・だった。

母の佳菜子は専業主婦、父の秀一は中小企業の社長だったが、半年前に依願退職。


スノが家のインターホンを押し、専業主婦の佳菜子が顔を出す。

佳菜子は生気を感じれば、成熟した美人になれるが、ボサボサの髪に頬が痩せこけている、明らかにストレスによる栄養不調。

スノは依頼により来訪したモンスターキラーである事は伝え、佳菜子はリビングに2人を招く。



秀一「お待ちしておりました、“怪決屋“さん」


父・秀一はガルトンとスノをリビングのソファーに座らせて、温かい紅茶をおもてなしする。

秀一はさっそく本題に入ろうとするが、佳菜子が妙にスノに関心する。

スノは密着してくる佳菜子に照れて、“モジ、モジ”する。


佳菜子「アナタ・・・体調でも悪いの?」


スノ「えっ! 大丈夫です」


佳菜子「嘘よ! こんなにも冷たいじゃない!」


佳菜子は両手でスノの両手を強く握り締め、体温を確かめる。

彼女はまるで我が子を心配する母性本能が発動したかのように、スノに触れる。


スノ「違うんです、これ平温なんですよ、それとあのー出来たら、温かいお茶じゃなく、氷が入った“キン、キン”の冷えたジュース頂けませんか?」


佳菜子「駄目! アナタまるで氷みたく冷たいじゃない、外がとてつもなく寒かったのね、すぐにでも暖炉で一緒に体を温めましょ!」


スノ「暖炉! ダメ! 僕を火に近づけないで、“溶けて“死ぬから!」


佳菜子は駄々をこねるスノを抱えて火が付いた暖炉に近づけるが、スノはまるで死刑執行される死刑囚の様に必死に抵抗する。


ガルトン「・・・」


スノ「ガルトン兄さん、見てないで助けてよ!」


秀一「佳菜子! いい加減にしないか!」怒声。


佳菜子「でも・・・」


秀一「いいからお前は自分の部屋に居ろ!」


佳菜子はスノを離して、秀一に言われた通り、自分の部屋に向かう。


秀一「すいません、どうか気を悪くしないで下さい、子供好きの良い妻なんですが、実の子が2人もああなってから、心配性になりすぎてまして」


ガルトン「娘さんは今どこに?」


秀一「・・・2階の自分の部屋に居ます」


ガルトン「家に飾ってある家族写真からして・・・取り憑かれたのは2人の娘さんですか?」


秀一「・・・いいえ・・・1人だけです」



*薙木家には双子の娘、皐月・三月がいるが、“皐月“は8年前に学校帰りの途中で行方不明になる。

必死に捜索をしたが、手がかり一つも見つからず、皐月は神隠しにあったかの様に消えたのだ。

現在も皐月は行方が分かっていない、生きているのか、はたまた死んでいるのか、一体誰が何の為に、それとも妖怪の仕業なのか?

8年前に愛する娘を失ったショックから立ち直るのは至難だったが、残された双子の片割れ“三月”を両親は命を懸けて守る事を誓った。

しかし、その三月も“失い“かけている。


秀一によると、三月は18歳の誕生日を迎える前は何も以上が無く、平穏な生活を過ごしていたが、18歳になってから体に異変を感じ始めた。

最初の異変は右肩に緑色の小さな“アザ“みたいなのが出来ていて、三月に聞いたら見覚えのない“アザ“だった。

特に痛みはなかったので、気にもせず3人ともほっといたが、そのアザは一ヶ月後に皐月の右腕全体にまで肥大化。

両親は娘を病院に連れて行き、医者に見せたが原因は不明、各地の病院を転々としたが、原因が分からなければ治療法も当然見つからない。

謎のアザが発現してから半年が経過した、三月は今は立つことすらままならない状態で自分の部屋に居る。



ガルトン「立つ事が出来ない?」


秀一「・・・アザは最初は緑色で小さな物でした、でも今は茶色い粘土の様な固形物に変化しています。

しかも娘の体のどこからか“声”が聞こえるんです・・・“アイツ“は娘を支配しているんですよ!」



病気ではなく、妖怪の仕業である事を完全に理解したガルトンとスノは、三月がいる2階の部屋に上がる。

双子の姉・皐月の遺留品と共に写った写真が飾られているなど、三月の部屋は普通の女の子の部屋だが、鼻栓を塞ぎたくなる程の異臭を放つ。

ベットの上には誰かが掛け布団を頭からかぶせられている、醜い体を晒したくない三月なのは明白だったが、父・秀一が掛け布団を脱がすと、目に余る三月の姿だった。


三月は写真に写っている可愛らいらしい美少女とは違い、父・秀一が言った通り、三月の体の9割は茶色い粘土の様な固形物で、しかも筋肉質みたく膨れ上がっている。

もはや人間の原型を留めていない、残っているのは左足の膝から下の部分・左顔半分のみ・髪、かろうじて人間部分は残っているが、今の彼女を見て人間と思う人間はいないだろう。

皐月の顔は別物へと成り変わろうとしている、ブサカワイイ仏頂面のブルドックに近いが、人型のブルドックなど可愛げはない。



秀一「昨日までは辛うじてですが、喋れていました、今はもう喋ることもままならない・・・でも娘の表情を見れば分かる、悲痛を感じる、苦しいと。

どうか、どうか娘を助けてください! お金はいくらでも出します、私達にはもう三月しかいないいんです!」


秀一は体を震わせて、涙を流しながらガルトンに懇願する。


西洋生まれのガルトンは、日本の妖怪を初めて見るため、何の妖怪かは分からないが、世界各国の妖怪に精通しているスノは、三月に取り憑いている妖怪の正体がすぐに分かった。



スノ「旦那さん、恐らくこれは“人面瘡”と思われます」


ガルトン「何でもいい、どうせ助からないんだろ?」


スノ「・・・」


スノはYESとは口で答えなかったが、無言は否定をしない意味を持つ。


ガルトン「ならさっさと済ませるぞ」



ガルトンは懐からリボルバー銃を取り出し、皐月に近づく。

焦った秀一はガルトンを静止する。


秀一「ちょっと、何する気ですか!」


ガルトン「お嬢さんの病を治す方法は一つ、息の根を止める事だ」


秀一「止めるって・・・娘を殺すつもりですか! 

娘を死なせる為に呼んだんじゃないんですよ、生かして欲しいから呼んでんだ!」


スノ「秀一さん落ち着いて」


秀一「落ちつていられるか、娘に死んで欲しいと思う親がどこにいる!」


ガルトン「それはアンタのエゴだろ」


秀一「!!」図星の表情。


ガルトン「もしかしたら娘さんが助かる手段があるのかもしれない、でも俺の経験上だが、“コイツ“はあと数時間で娘さんの体を乗っ取り、人を襲い始める。

コイツの目的はな完全体になる事、そうなる前に阻止する、俺達を止めたきゃ好きにしろ・・・無駄だと思うがな」


秀一は絶望の余り、膝崩れ落ち、泣き崩れる。


秀一「なんの因果応報だよ・・・皐月を失い、今度は三月まで・・・仏も神様もいねーじゃねーかよバカヤロー!

・・・俺は期待した・・・医者がダメなら、怪決屋が最後の希望だと思ったのに!」


ガルトン「この国では俺達みたいな存在をそう呼ぶのか、でも西の国ではこう呼ぶ・・・“モンスター・キラー”と」


秀一「・・・だからって・・・苦しんでる娘に最善の手を尽くさずに死なせるなんて」


現実を受け止めきれない秀一に、スノが現実の釘を打ち付ける。


スノ「・・・お父さん、三月さんは昨日まで喋れている状態の時に、なんてセリフを言ってました」


秀一「・・・それは・・・」


ガルトン「“殺してくれだろ“」


秀一「!?」図星。


ガルトン「こんな状況になれば、俺でもそれを願う」



スノとガルトンの想像は当たっていた、三月は昨日までずっと父と母に“殺して”と嘆いていた。

しかし、両親は娘を助けたい一心で耳を貸さずに治療法を探し続けた、8年前に皐月が行方不明になった時から既に両親の心は壊れかけていたのだった。

ある日は苦しむ娘の願い通り、無理心中も考えたが、決心をした時に三月「殺さないで、助けて」と叫んだ事もあったが、それは人面瘡が三月の意識を乗っ取った時に発した言葉で、三月自身が喋った訳ではない。

だが両親はそんな事も知らずに、半年間も娘を生かし続けていた。



スノ「辛い選択かもしれませんが、ガルトンの旦那さんが言った通り、このモンスターは人を襲うはずです。

はじめに秀一さんや佳菜子さん、そして次に村の人達・・・三月さんの“体“を使ってです」


秀一「・・・・・・・時間だけ下さい」


ガルトン「長居は取れない」


秀一「1時間だけでいいんです、1時間だけ平穏な家庭を過ごしたい」


ガルトン「・・・」


スノ「旦那さん、1時間ぐらいは大丈夫ですよ」



ガルトンは無言に部屋から出て行き、スノは秀一にお辞儀する。

2人が部屋から去った後に、三月の左目から水袋の涙がゆっくりと流れ落ちる。




ガルトンとスノは家の外で、万が一の時の為の作戦を立てる。


ガルトン「スノ、キミはこの家のドア以外、外に抜け出せそうな所を結界で塞げ、外側から窓や裏口とかをな」


スノ「モンスターに逃げられない為にですか?」


ガルトン「・・・あの親子が逃げ出さない為にだ」


スノ「・・・」



〜1時間後〜



ガルトン「・・・遅い」


スノ「1時間以上経過してます」



ガルトンはあの親子に何か問題があった事を、直感する。

スノには外で待機させ、1人で家の中に入る、声を掛けても一階には人がいる気配はない。

恐らく3人は三月の部屋に居ると思い、ガルトンは2階に上がる。


三月の部屋をノックしても、応答はなかったが、そっとドアを開けて入る。

すると部屋の中は想像もしていない、光景が目に映る。


三月は変わらずに、自分のベッドの上で大の字の体勢だが、なんと床は血の海、その血は秀一と佳菜子の血。

秀一と佳菜子は出血多量で死んでいた、いいや死んでいるのは佳菜子だけで、秀一は殺された。

殺した張本人は状況から察するに“佳菜子“。

佳菜子は両手に包丁を握り、首を一突き刺したまま死んでいる、秀一は背中に深く刃物で刺されたかのように死んでいる。


ガルトンは状況を推理した、愛する三月を苦しみから解放する事に決心をした週一だったが、何らかの口論の末に佳菜子が秀一を弾みで殺害、夫を殺してしまった自責で精神崩壊をした佳菜子は手に持っている包丁で自害。

何が理由で口論になったのかは本人達に聞かなければ分からない、佳菜子が娘を死なせる事に反対したのか、それとも自分達の手で娘の息の根を止める事に反対したのか?


ガルトンは推理をやめて、本来の仕事に入ろうとしたが、後ろから邪悪な気配を感じる。


なんと人面瘡が完全体でもないのに関わらず、立ち上がり、ガルトンに強烈なパンチを喰らわせる。

予想外の出来事に防御出来ずに、まともに敵の攻撃を顔面にヒットし、ガルトンは吹っ飛ぶ。

壁と共に衝撃で廊下まで吹っ飛ぶ、ガルトンは軽い脳震盪を起こし、人面瘡は佳菜子の首に刺さっていた包丁を武器代わりにする。


ガルトンはリボルバー拳銃で応答、刃物で勝ち目が無いと感じた人面瘡は一回に降りる階段に向かう。

ガルトンは脳震盪により、狙いが定めず弾切れになるまで銃を乱射。


弾丸は結局一発も当たらずに、人面瘡はリビングの窓を破って逃げようとしたが、窓はあまりの硬さに突き破れず頭を打つ。



人面瘡「どうなってんだ!」


ガルトン「無駄だ、お前はもう死ぬ以外、この家からは出られない」


人面瘡「どう言う事だ!」


ガルトン「俺の助手に頼んだのさ、この家を結界するようにと」



スノは雪の妖精、能力で窓などを冷えきった貫目氷(純氷)の様に硬く頑丈にする事が出来る。



人面瘡「そうかい、完全体になるまでにはまだ時間が必要だが仕方ない、お前達さえ来なければ五体満足に戦えたのい、“コイツ(三月)“の親が余計な事をしてくれた」


ガルトン「・・・親なら当然の事だ」


人面瘡「ほー、西洋の妖怪は下等生物に情を持つのか・・・そうそう、コイツの親達の最後は傑作だったぜ、メス豚に刺されたオスは、豚みたく断末魔を上げやがった、貴様にも聞かせてやりたかったぜ」


ガルトン「・・・」


三月は目の前で両親の最後の悲痛を聞き、今まで以上に絶望した表情が、人面瘡の左顔面から読み取れる。

その表情は“怒り“・“悲しみ“・“孤独”の全てが涙と共に詰まっていた。


人面瘡「分かっていると思うが、ワイを殺せばこの娘も死ぬ、それとワイが望めば、この娘の体を自ら引き剥がす事も出来る、つまり無駄な戦いは避けられるぞ?」


ガルトン「気にするな・・・その体はもうお前自身の物だ、つまり俺が殺すのはお前だ!」


人面瘡「・・・交渉は不要って訳かい、いいだろ!」


人面瘡は包丁を左手に持ち、完全体じゃないまま全身全霊でガルトンと勝負するが・・・



人面瘡「さあ来い! 大和妖怪の意地を見せてくれ・・・・!?」


人面瘡が左手に持っていた包丁は、人面瘡の腹部に刺さっていた。


人面瘡「ガァ!!・・・なん・・・だと!?」


ガルトン「・・・キミ?」


人面瘡に致命傷を与えたのは“三月”だった。

薄れていく意識の中、わずかに残っている力で自分の体に包丁を突き刺した。



人面瘡「・・・クソ!!・・・小娘ッ・・・ガッ・・・」



完全なる支配を自ら防いだ三月は、肉体と心は自分の元に帰ってきた、あとは最後の仕上げに入るだけとなる。

三月の瞳は、怒りも悲しみも孤独も消え去り、家族写真の様に優しい少女の瞳と戻っていた。


三月は目の前にいるガルトンに、言葉は発せないが、苦しみの解放を表情で訴える。

ガルトンは、まだ大人になりきれていない少女の勇気ある姿に敬意を表し、三月の訴えに応える。



三月「・・・・・・・・・・・・・“(ありがとう)“・・・・・・・・・・・・・」






〜午後23時〜


全てを終えた薙木家の家に火をつけ、2人は急いで波田須駅に向かう。



スノ「・・・旦那さん、あの家族は悪い妖怪にさえ取り憑かれさえしなければ、今でも普通の家庭を過ごしていたはず」


ガルトン「・・・何が言いたいんだ?」


スノ「・・・僕たち妖怪は、本当に必要なんでしょうか?」


ガルトンは冷たい表情で、受け答えする。


ガルトン「スノ、キミが仕事でどう思おうと勝手だが、俺は仕事中、感情は捨てている・・・キミにもそれを勧めるよ」


スノ「・・・」怯える。



ガルトンとスノは波田須駅に到着したが、既に終電は過ぎていた。

しかし、2人は西洋の文化育ち、駅員もいない無人の駅で日本語も読めず困惑するが、スノが一つだけ朝とは違う不可解な部分を見つける。



スノ「旦那さん・・・これって朝と文字が違いますよね?」


ガルトン「あん?・・・知らん、そうなのか?」


スノ「ハイ、絶対に違います」


ガルトン「なんて書いてあるんだ?」


スノ「すいません、読めないんですが、絶対に違います、こんな文字じゃなかったです」



ガルトン達が最初にこの駅に降りたった時は、“波田須駅”と駅名標に書かれてあったが、何故か今はこう書かれている。


“きささぎ駅”



ガルトンは覚えていないが、スノは駅名標に変わっている事に不可解に思う。

ガルトンは他の駅に間違って辿り着いたのではないかと指摘するが、ここら周辺で駅は一つしかない、迷うわけがない。


2人は思考が混乱したが、遠くから暗闇の中から“光“が、こちらに向かってきた。

スピードからして自動車、車輪の上を走っている事からして“電車”、そしてその電車は“きささぎ駅”に停車、駅に停まるなら乗らない訳にはいかない。

車両には、子供を2人連れた母親の親子3人と爆睡をこいた部活帰りの女子中学生らしき人物が乗っていた。

乗車していた人間に便乗して、ガルトンは乗り込むが、スノは乗る気になれない。



スノ「旦那さん、絶対に何かおかしいですよ!」


ガルトン「キミの勘違いだ、見てみろ、他にも客が乗ってるじゃないか」


スノ「・・・そうだけど」


ガルトン「急ぐぞ、俺は早く家に帰って寝たいんだよ」



スノは渋々乗るが、スノは勘違いしてなどしなかった。

数十分後、二匹は思いがけない場所に足を踏み入れる。


そこは日本の妖怪達の住処 “夢望町ゆめもちょう





“西洋妖怪VS日本妖怪の壮絶な戦いが幕を開ける“

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ