第91話「マリアお姉ちゃんのあほんだらぁ! アリッサがこないに一生懸命お願いしてんのに、なんで言うこと聞いてくれへんのや!」
「はい、話は終わり。さっさと帰りなさい。私、いい加減そろそろ朝ごはんを食べたいの」
「いいえ。いいえいいえいいえ! それはお姉さまの本心ではありません。お姉さまは本心ではわたしと一緒に居たいと思っているはずです。妹であるわたしにはそれが分かります!」
「そんなこと思っていないし、ぜんぜんちっとも分かってないから」
「いいえ、思っているし、分かっています。なぜならわたしたちは、たった2人だけの血を分けた姉妹なんですから」
「思ってないし分かってないって言ってるでしょ。毎日一緒にいた小さな子供の頃じゃあるまいし、私とあなたは別の人間。それにローゼンベルクと和解したって言っても、長年の軋轢だもの。すぐに全部なかったことにはできないわ。時間が必要なの」
「そもそもお姉さまは実家とは揉めましたが、わたしとは直接揉めてはいません」
「あなたがローゼンベルクの人間である以上、その理屈は通らないわ。私はローゼンベルクと揉めたんだから。他ならぬアリッサにかかりっきりになったせいでね」
「それは……そうですが」
すごい。
ここまで論戦を圧倒してきたアリッサを、マリーベルが完膚なきまでにやりこめようとしているぞ!
がんばれマリーベル!
勝利は目前だ!
ふぁいおー!
ふぁいおー!
「どうしても嫌ですか?」
「どうしても嫌ね」
「どうしてもどうしても嫌ですか?」
「どうしてもどうしても嫌ね」
「どうしてもどうしてもどうしても嫌ですか?」
「どうしてもどうしてもどうしてもどうしても嫌ね」
「……」
「分かってくれた?」
「…………」
「どうなのよ? 黙ってちゃ分からないでしょ?」
「――の――ぁ」
「え? なんて? 声が小さくてよく聞こえなかったんだけど?」
「マリアお姉ちゃんのあほんだらぁ! アリッサがこないに一生懸命お願いしてんのに、なんで言うこと聞いてくれへんのや!」
アリッサが――誰もが憧れる最強王者アリッサ・カガヤ・ローゼンベルクが壊れた。
「……はい?」
「えっと……?」
「あ、アリッサさん?」
突然のキレッキレの逆ギレシャウトに、俺とアスナとリュカは思わず顔を見あわせた。
ちなみに今のアリッサのシャウトは、ブレイビア標準語ではなく主にカンサイ地方で使われている言葉使い――いわゆるカンサイ弁だ。
そういやローゼンベルクって、大昔はカンサイに本家があったんだっけ?
知らんけど。
「ちょ、ちょっとアリッサ。落ち着きなさいってば。なに急にキレているのよ」
「それもこれも全部マリアお姉ちゃんが悪いんやんか!」
「はぁ? 私のなにが悪いって言うのよ?」
怒涛の剣幕でキレるアリッサにカチンときたのか、マリーベルがムッとしたように言い返す。
「そんなん、アリッサはマリアお姉ちゃんと一緒におりたいだけやのに、マリアお姉ちゃんがこないにいけずしてくるからに決まっとうやろ!」
「いけずって、さっきからなに言っているのよ。あとマリアお姉ちゃんはやめてって言ったでしょ」
ちなみに「いけず」とは「意地が悪い」といった意味を持つ、これまたカンサイの言葉だ。
マリーベルも特に気にしていないところを見ると、ローゼンベルクは身内だけの時はカンサイ弁を使っているのだろうか?
「そんな知らんし! マリアお姉ちゃんはマリアお姉ちゃんやもん! それにいけずにいけず言うたら悪いんか? アリッサばっかりはみごにしよって! なんでそないなことするん! アリッサもよせてーや!」
「別にはみごにしてるわけじゃないでしょ」
ちなみに「はみご」とは「仲間外れ」って意味だ。
「しとうやんか! めっちゃしとうやんか! アリッサだけ除けもんにしとうやんか!」
「チームが違うんだから仕方ないでしょ。別にはみごにしてるわけじゃないから」
「でも家族やんか! チームはちゃうけど、マリアお姉ちゃんとアリッサは姉妹やんか! やのに、なんで一緒におったらあかんのや! マリアお姉ちゃんのアホ! うわーん!!!!!」
シャウトを続けていたアリッサは感情が昂りすぎて感極まってしまったのか、ついには盛大に泣き出してしまった。




