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第70話「マリーベル!! 大変だ!! 背中に虫が付いているぞ!! それもすごくでかいのが!!」

「マリーベル!! 大変だ!! 背中に虫が付いているぞ!! それもすごくでかいのが!!」


 俺はこっそり持ち込んでいた折りたたみメガホンを懐から取り出すと、マリーベルに向かって全力の大声で叫んだ。


「!?!?」

 その瞬間、片膝をついていたマリーベルの背筋がピンと伸びた。


「ほ、ほんとですぅ! す、すごい大きな虫がついていますよぉ! こ、これは大変だなぁ~! ひあぁぁっ!」


 間髪入れず、同じく俺から手渡された折りたたみメガホンを使って、リュカが大声で叫ぶ。

 声量は俺よりも大きかったが、演技力は若干微妙だ。


 ……アスナに頼んだ方が良かったかな?

 初っ端から人選ミスに思い至るが、しかし作戦の効果自体は抜群だった。


「ギィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!」


 俺とリュカの言葉の意味を理解したマリーベルが、この世の終わりみたいな盛大な悲鳴を上げた。


(よしっ! いいぞ!)


「む、むむむむむ虫イヤァぁぁぉぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」


 マリーベルは片膝を着いていたところからぴょんと飛び上がるように立ち上がるが──魔法の詠唱中ということもあるのか──そこで動きを止めると、その場でクルクルとコマのように回りはじめた。


(あの動き、なるほど)

(どうした? ナルホドー・フリージア)

(え?)

(いや、なんでもない。続けてくれ)


(多分ですけどこの魔法の詠唱中は、あの場所からは動けないんです)

(そうなのか?)


(座標軸を固定することで、高難度の魔法式を少しでも安定させているんだと思います。動きながら魔法を使うと、どうしても魔力の流れがぶれますから)


 姫騎士としての習性か、妙に冷静に分析をするリュカ。

 この状況でここまで冷静になれるとは、実に頼もしいな。

 ライトニング・ブリッツの未来は明るいよ。


 それはそれとして。


「と、ととととと取って取って、早く! 虫を取って!」


 マリーベルがデュエルそっちのけで俺を見た。

 普通なら敗北必死の致命的な隙だが、アリッサはそれを突いたりはしないからそこだけは安心だ。


「デュエル中だから無理だ! だからまずは勝て! 話はそれからだ!」

「そんなこと言ったって! 見たら分かるでしょ! 暴走しているのよ!?」


「暴走? なんの話だ?」

「なんのって、見たら分かるでしょ! カラミティ・インフェルノに決まっているじゃない!」


「今発動中の魔法のことなら、俺には完全に制御されているようにみえるがな?」

「だからさっきからなに言って──、えっ、あれ、ほんとだ」


 マリーベルがハッとしたように天を見上げた。

 視線の先、マリーベルの掲げる両手の上には漆黒の炎で形作られた巨大な鳥──例えるなら『黒炎の不死鳥』がいた。


 先ほどまでとは打って変わって、黒き炎は一片の乱れもなく安定している。


(そっか! さっきマリーベルさんが大絶叫した時に、膨大な魔力が魔法式へと流れ込みました。おそらくそれで魔力が充足したんですね!)


 リュカがナルホドーと頷いた。


(どうやら俺の目論見は上手くいったようだな。マリーベルはあの瞬間に、己に課していた偽りの限界を突破したんだ)


 俺たちが見守る前で、マリーベルは安定した魔力を維持させながら、


「烈火を解き放ち、絶えなき災厄となりて、我が敵を焼き尽くすがいい!」

 カラミティ・インフェルノの最後の詠唱を終える。


 するとどうだと言わんばかりに、漆黒の不死鳥が大きく翼を広げた。


 ローゼンベルクの誇る最強の炎魔法カラミティ・インフェルノが、ついに完成した――!



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