第51話「ヤマトさんはわざと悪役ムーブをしていましたよね。私はちゃんと分かっていました!」
「ふぅ、やれやれ。とりあえず決闘の結果は先延ばしにできたか」
俺は強烈なプレッシャーを伴うアリッサの眼力から解放されたのもあって、ホッと一安心。
胸をなでおろした。
「ヤマトってば、相変わらず損な役回りばっかり率先して引き受けちゃって。このカッコつけがー。そのせいでアリッサ・カガヤ・ローゼンベルクから完全に敵認定されちゃったじゃん。めっちゃ睨んでたよ?」
するとアスナがからかうように笑いながら、俺の隣までやってきて肘打ちをし、
「ヤマトさんはわざと悪役ムーブをしていましたよね。私はちゃんと分かっていました!」
リュカが妙に力強い口調で、私には分かっていますアピールをしてくる。
なんかえらく必死で可愛らしいな。
「ヤマトさん、面倒に巻き込んじゃってごめん。あと、かばってくれてありがと」
マリーベルはゆっくりと立ち上がると、小さな声で感謝の言葉をかけてくれた。
しかし目に見えて覇気がない。
アリッサに完敗したことで、かなりの精神的ダメージを負っているようだ。
「マリーベルのためだけじゃないさ。結局回り回って俺のためでもあるからな。気にするな」
「ヤマトさんの?」
「7戦全勝のマリーベルが抜けたら、ライトニング・ブリッツは一気に苦しくなる。当然デュエル・アナリストの俺も困る。姫騎士がいてこそのデュエル・アナリストだ。ほらな、俺のためでもある」
「マリーベルちゃん、マリーベルちゃん。ヤマトはいつもこういう言い方をするけど、実はマリーベルちゃんのことが心配で心配でたまらずに、アリッサ・カガヤ・ローゼンベルクに突っかかったからね。ヤマトってば昔から変なところでツンデレするから、勘違いしないであげてね」
するとアスナが茶々を入れてきた。
「誰がツンデレだ、誰が。気持ち悪いこと言うなっての」
「あ、照れてるし。顔赤いよ?」
「うっせぇ」
「ふ、ふふっ。ふふふふふふ……」
と、マリーベルが堪えきれないといった様子で笑い始めた。
「なんだよ急に笑い出して?」
「だって2人のやり取りって、お笑いコンビを見ているみたいなんだもの」
「おいアスナ。アスナのせいでお笑いコンビとか言われただろ」
「はぁ? ヤマトのツンデレが原因でしょ? アタシのせいにしないでよね」
「だからツンデレとか言うなっつーの」
「やーいやーい、ツンデレー!」
「こ、こいつ……!」
「ふふっ、あはっ。もうほんと、なにこれ。2人を見ていると、アリッサに負けて悔しかったのがバカらしくなってきちゃうわ」
「その思考の経過にはイマイチ納得できないが、とりあえず元気が出たみたいでよかったよ」
「うんうん。元気が一番だよね」
アスナがしてやったりって感じのウインクをする。
あれか。
場の空気を入れ替えるために、アスナもわざとこういう言い方をしたな。
まったく、人のことをツンデレだのなんだのあれこれ言っといて、アスナも相当なお節介じゃないかよ。
ほんと俺はいい幼馴染を持ったもんだ。
「ってわけでだ。巻き込まれたからには、悪いがここからは協力させてもらう。ライトニング・ブリッツのデュエル・アナリストとしてな」
「そうね。私も今のままじゃダメだと思い知らされたわ」
「よし。どうやらマリーベルも乗り気みたいだな」
「だけどバーニング・ライガーとの対戦まで1週間もないし、今からどうにかなるかな?」
「どうにかするしかないだろ? 一応確認のために聞くが、決闘をなかったことにはできないんだよな?」
なんだかんだで口約束。
正式な立会人がいたわけでもない。
「それは嫌。そんなことしたら、私は自分で自分を許せなくなっちゃうから」
「だよな。分かった。さてと、ここからは込み入った話になるし、俺とマリーベルの2人きりで話をさせてもらえないかな?」
「それがいいね」
「頑張ってくださいね、マリーベルさん」
アスナとリュカが校舎に戻るのを待ってから、
「まずは現状の認識を確認したい」
俺は初めてマリーベルと向き合った。




